絶対ナル孤独者 2

内容(「BOOK」データベースより)

謎の地球外有機生命体に寄生された少年・空木ミノルは、自身の能力“孤独”を武器に、人類の敵“ルビーアイ”にからくも勝利する。その日、ミノルは“加速者”ユミコから、“組織”へ誘われる。組織の役割とは、人間に危害を加える“ルビーアイ”能力者の撲滅。共闘を依頼されたミノルは、加入するかわりに、あることを要求する。それは、自分自身の“存在”消去。彼は、“誰も自分のことを知らない世界”を追い求めていた…。ミノルの次なる敵は、最も危険で狡猾な相手、“酸素”を操る“発火者”。絶対的な“孤独”を抱く少年の行方は―!

 敵の視点からも結構がっつりと書くのは1巻だけかと思いきや、シリーズで続けていく感じなのか。それは面白いのでいいけど、個人的には今回の敵は前回の敵バイターと比べて、いまいち魅力に欠けるな。
 なんとなく思ったけどこのシリーズは、戦隊モノとかの特撮系みたいな(見ないからイメージだけど)正義のヒーローのチームと怪人みたいな構図のお話になっていくのかしら。前回と今回は組織に属していない一匹狼型の犯人だったけど、そうでない組織を結成している敵側(ルビーアイ)の人たちもいることが明らかになったので、ますますそうした王道でシンプルな構図の話になりそうという予感がいまのところ強い。
 まあ、現代舞台で少人数が特殊な能力で、相手もまた特別な能力を持つが悪の心に支配された怪人を倒すというのが、私の狭い知識の中ではそれくらいしか見出せなかったから似ていると思ってしまっただけかもしれないけど。
 あとがきにも『《理系バトルもの》的なお話』(P265)とあるように、能力に科学的な説明がされていて、そうしてはったりをきかして能力の説明をするのは結構好きだな。そしてそうして説明する中で、主人公の特殊能力の説明が今のところできないことがあかされて彼の能力がかなり特殊、特別なものであることを読者に知らせるという書き方も。
 他の味方(サードアイ)陣営の人たちもこれで概ね登場したのかな。オリヴィエ、教授こと伊佐理々。そして主人公と直接顔合わせはしていないが、ちらりとだけ登場した《リフラクター》。
 今回も主人公の見せ場があっていい感じ。直前で敵の能力に気づいたり、ユミコを防御壁の中に入れ(そのぐらい心を許し)、敵の攻撃を防御し彼女を助けたり。そしてユミコとは、互いに意識していない間柄だけど、徐々に関係性が深まり二人の間が狭くなっていていい感じだね。
 しかし犯人(ルビーアイ)は全員殺すというのではなく、無力化してルビーアイを抜き取れる人は抜き取って、日常に返すとは意外だ。完全に自分の意志でなくとも、また記憶がルビーアイを抜き取った後は残っていなくとも(自然とそうなるのか、記憶操作して忘れるさせるようにしているのかどっちだろ)、人を殺しているのにそうするのね。ふうん。
 既に繋がりを恐がる主人公が揺れて、トラウマを超克して変わる兆しを見せているので、王道な設定とあいまって、案外早くシリーズまとめて終わるんじゃないか、アニメ2クール分くらいでまとまって終わる作品となるのではとも思えるけど、どのくらい続くのだろうか。普通に面白い作品だし、嫌いでないのだが、他のシリーズの終わりがいまいち見えない状況だから、一つくらい完結した作品を見たいという気持ちがある。
 なんとなくAWは主人公が欠点含めて承認され導かれることで成長する物語で、SAOは最初からすでにある程度完成されている英雄が悩みながらも歩み続ける話ならば、孤独者は王道な主人公が仲間と共に行動していく中で成長していく物語という感じ。
 主人公が抱く他者との関わりを断ちたい消えてなくなりたいという思いは否定されるが、共に同じものに立ち向かって、そうして仲間と触れ合っていくことで、傷つきトラウマを受けた心を癒す、あるいは傷を克服してそれでも前を向いて生きていこうと思うようになり、その消えてしまいたいという思いが薄れ消えていくという、王道な成長の物語。そういった消えてしまいたいような自己嫌悪と他者への不信がない交ぜになった主人公の、全ての繋がりを断って不安・心配の根本から断って、苦悩から解放されたいという思いは、そういうのは人として生きていくのに必ず付きまとう青臭いものだということもできるだろうが、個人的にはそうした思いは決して否定したくないな。
 それくらい辛く、そのために苦しみ、彼にとって人との関係は、そうした思いを強く抱くほどのとてつもなく大きな苦しみの源であることはかわりないし、彼のこれまでの人生経験から最適だと思ったから生まれた処世術、世界とのかかわり方なのだろうからね。