9の扉

内容(「BOOK」データベースより)

執筆者が、次に書いて欲しいお題と共にバトンを渡す相手をリクエスト。猫→コウモリ→芸人→スコッチ→蜻蛉→飛び石→一千万円→サクラ…。一見バラバラなお題と、それぞれが独立したストーリー。けれど、そこには想像もつかないような繋がりが生まれて―!?凄腕ミステリ作家たちの個性と想像力が炸裂する!不思議あり、黒い笑いあり、どんでん返しあり、ほっこりあり。予測不能で心躍る化学反応を、どうぞご堪能あれ。


 前の執筆者からテーマを渡されて、そのテーマを組み入れて書く、リレー小説。かなり評判が良かったので以前から気になっていたがようやく読了。ブラックなショートショートみたいな、人の悪意を見せるような短編が多くて、そういう話は苦手なので、ちょっと小説自体は個人的にはいまいちだったかな。
 まあ、リレー小説と言う企画ものなのに、小説に過度な期待をかけすぎたか。わいのわいの作家さんたちが、お祭りのノリで楽しそうにしているのを、バトン(テーマ)を渡すときの言葉だったりあとがきを同じように楽しめばいいのだろうし、そうした面では楽しめた。そういった意味では作家さんたちのファン向け的な感じなのかな。
 収録作の中で好きな短編は竹本健治「依存のお茶会」と辻本深月の「さくら日和」かな。
 執筆者の面子からミステリー的な短編が多いのかなと思ってちょっと期待していたのだが、流石に一人当たり30ページ弱というページ数の縛りもあってかミステリーは流石になかったな。
 殊能さんの短編「キラキラコウモリ」が収録されているということなので、それ目当てで読んだのだが、うーん、これもまたブラックな話でどうにもなあ。でも、これで殊能さんが発表されたすべての作品を読み終えたということになり、ちょっとした達成感と寂寥感を覚える。
 鳥飼否宇「ブラックジョーク」前の「キラキラコウモリ」の些細な描写や登場人物を盛り込んでつなげるのは上手いし面白いな。
 これ以降の短編ではそうして何かしら前作の登場人物などが出てくることが結構あって、そういうのはなんか面白いな。
 竹本健治「依存のお茶会」この作者さんの作品は以前に「キララ、探偵す。」を読んだだけだが、「匣の中の失楽」というミステリーの四大奇書の一つを書いた人とは知っているので、「キララ」のノリが特別なものかと思っていたが、この短編でも漫画的なキャラの立てやノリだったので、そうしたノリがこの作家のスタイルなのかな。
 この短編は主人公が傍観者的な、何らかの被害にあっていない立場ということもあるし、キャラクターも良いし、話の締めもいい感じだし、話も収録作の中ではということでなく普通に面白かった。他の話が後味が悪い感じのオチばかりだからこそ、より一層良く見えるというのもあるが。
 辻村深月「さくら日和」これも最後の話に相応しく、ちょっと切ない系だけど、後味はわるくないので良いな。
 あとがきは、小説の逆順(ラストからの)リレーで、題(テーマ)を振られてどう考えて書いたかと言う話だったり、そうしたことが書かれた前の人のあとがきに対して反応しているのが面白い。