三匹のおっさん、ふたたび

三匹のおっさん ふたたび (新潮文庫)

三匹のおっさん ふたたび (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。


 シリーズ2作目。このシリーズ、文春文庫から新潮文庫に出版社変更したのね。そして気づかぬうちにシリーズ1作目も新潮文庫から再度出ていたのね。
 このシリーズは主人公の還暦過ぎの男、おっさん3人組が日常のトラブル、それを作る悪意の人を、現実ではできないほどちょっと荒っぽくとっちめて解決して、それを爽快に感じる。つまり前回あとがきによると時代劇を現代でやる作品、つまり現実にはなかなかそうにはならぬからこそ喜ばれる勧善懲悪的な話。
 しかし第一話のパートしている祐希の母が仕事場の交友関係で与えられた悪意が書かれていて、こうした主要キャラの3家族のメンバーが直接そうしたトラブルに巻き込まれる話は気持ちが沈むから読んでいて気持ち沈むし、好みでなかったのでちょっと読みすすめるのが億劫になってしばらく放置していた。実際トラブルおきてから解決するまでの間は短いけども、彼女が騙されるというのはそれより大分前から見えているからしんどい。
 そうしたトラブルに身内が巻き込まれるというのはこれだけだが、一話でそれがあったせいで、読むのを再開した後はなるべく気持ちいれずに半ば読み終えることだけを考えて読んだという感じとなってしまったから、いまいち楽しめなかったな。今回で苦手意識がついてしまったから、軽い読み物でそういう話は苦手でも我慢してでも読むというものでもないだろうから、たぶん次作はあっても読まないだろうな。
 二話は町の書店の常習犯である万引き少年たちにお灸をすえる話、万引き少年をお縄にしたとき協力した祐希が説教の場にともに行こうとしたが、自分が万引き少年側にみられるかもと思って付いていくのをやめたというシーンにちょっとクスッときた。
 しかし祐希と彼の友人の遠山アキラとの会話で「もうひとつシアター」とリンクする発言がでたのは「おっ」と思ってちょっと嬉しい気分になった。
 三話は則夫の再婚話、タイミングさえあえば良い縁ではあったものの、娘の早苗が受験生でふってわいた話に動揺していることも合ってその話はお流れになる。相手の人、悪い人ではないから、本当にタイミングがね。早苗が既に大学に入っていれば、1年違えば違った結果となったかもね。
 四話は不法なゴミ捨てをする人々相手の話。
 五話では、居酒屋経営していた立花重雄の息子で三匹がたまり場としている居酒屋「鯨」の当代店主の康生視点で、長らくやられていない祭りを復活させるために動いているところが書かれる。そして祐希の父健児、幼馴染の康生からの頼みといっても会社から寄進という形で足りない金を何とか引き出させるとはやるぅ! 彼、今まで影薄かったから、こうした活躍見れたのがちょっと嬉しい。
 六話、偽三匹、三匹とおなじように夜回りしている同年輩の人々が登場。祐希が急に難癖付けられるところで初登場で、普通はこんなことやったら、こんな横暴なものとなりかねないし、無用なトラブルを生みますよと、(いないだろうが)このシリーズに感化されてそうした夜回りで活躍しようなんて思った人を戒めているような話。
 オチの付け所も、偽三匹が居丈高に注意したら不良たちの怒りをかって彼らが危ない目にあって、そこを三匹に助けられ、結局三匹の勧めもあって火の用心とか犯人が寄り付かないようにする予防手段という現実的なところに落着させているのもそれっぽい。
 巻末のボーナストラック(短編)の「好きだよと言えずに初恋は、」はメインキャラは登場せず(ラストで名前は出てこないが祐希と早苗のことが引越しの見送りに着てくれた友人としてちらりと登場するが)、主人公は前回登場して祐希と早苗の間を少し引っ掻き回した早苗の同級生の少女富永潤子(すいません、wiki見るまで誰か忘れてました)。彼女の初恋が描かれるが、wiki見るとどうやら相手は「植物図鑑」のイツキのようだ。まあ、「植物図鑑」の人っぽいとは思ったが、なんでこの本にその短編が? とも思ったので、違うかなと考えていたけど、あってたのか。しかしこの作中時空どうなってんの。そこを年代あわせたら、時代的にへんなことにならない? 実はこの作品は現代よりちょっと前か、あっちが現代よりも未来の話のどちらかになりそう。