ジロンド派の興亡 小説フランス革命 10

内容(「BOOK」データベースより)

1792年。憲法が制定され立法議会も開かれたフランスだったが、さらなる凶作と物価の高騰に民衆はいまだ飢え、苦しんでいた。そんな中、失墜した王家の威信を取り戻したいルイ16世は、国民の不満を国外に向けるため他国との戦争を望むジロンド派の面々を起用し、開戦内閣を組織する。反戦を主張するロベスピエールの抵抗もむなしく、フランスはついに戦争を開始し―。歴史巨編、新章突入!

 第二部の文庫が既に刊行され始めていたことに気づかず3ヶ月くらい遅れで読み始める。しかし思ったよりも早い文庫版の発売は嬉しいわ。そのおかげで、一部をのろのろと読み終えてから半年くらいあけただけで二部を読み始められることになったわ。ただ、それでも半年あいているから結構忘れていることも多いので、読み進めながら徐々にどういう状況になっていたのかを思い出していったという感じだが。
 今回はタイトルの通りに、ジロンド派の動きを中心に描かれている。そしてこの巻から登場するジロンド派が集うサロンの女主人ロラン夫人の暗躍っぷりが書かれる。表舞台には登場しないまでも、夫を大臣に押し上げて従順な夫を通して、政治の舞台で動きをみせる。
 ジロンド派はこの時点ではまだジャコバンクラブの中の派閥であって、そのジロンド派が内閣を作り、開戦に導く。この小説の中ではフランス王ルイ16世主戦論を唱える彼らを上手く戦争に負けたときのスケープゴートとして利用していて、また彼は敗戦によって、時計の針を巻き戻し以前の絶対君主政にしようと企んでいると書かれる。
 ただルイ16世は、アイディアはいいのかもしれないけど、いまいち失敗したときのことをあまり考えて胃なそうなので、どうにも危うい感じがするので、なんだか彼のパートになると妙にハラハラしてしまうなあ。もしかしたら、それは死刑されるという結末を知っているからかもしれないけど。
 ロラン夫人、他の女性活動家と違い、権利より権力を志向し、結婚して当時の道徳に叶ったレールに乗りながら自身の才覚で権力を持ち、振るおうとする人。貴族趣味。自分の頭脳・容姿が優れていることを自覚し、また誰からも非難されない道を歩んできたという重いもあってか、ある種の高慢さがある人。
 再びの物価高に市民の不満高まり、革命が始まった1789年と似たようなぴりぴりした空気が漂い始める。
 欧の気に入りであるデュムーリエにジロンド派の人間を大臣にと提案されて、気乗りしないが有能ならば構わないという風を外見では装いつつも、実は王の思惑通り、主戦論を主張しているジロンド派内閣が成立する。
 そうしてジロンド派オーストリア相手に戦争を仕掛けて、即効で勝利するつもりが、思わぬ緒戦のつまずきで、彼らは『オーストリア委員会』という架空の存在をでっち上げ、その陰謀で負けているとすることで、国民の不満や非難の声を自分たちからそらそうとした。
 反戦論をとなえていたロベスピエールは一時勢いがなくなっていたが、そうしたつまずきによって彼の株が上昇し、また彼の主張の説得力が増していた。
 その戦争の最中にジロンド派の閣僚を一掃し、新たにフイヤン派の内閣を組織する。
 ジロンド派、コルドリエクラブを使って市民を動員して王に圧力をかけて、拒否権取り消しとジロンドは大臣の復職させようと画策。デムーラン、友人で世話になっているダントンにその運動に先頭に立つように依頼されるも、ブルジョワが主のジロンド派がパリの受動市民を支持基盤とするコルドリエクラブを利用していることを理由に、そしてもう直ぐ子供が生まれるということもあり、その要請を拒否。ダントン、都合よく利用されていることはわかっているが、「シャン・ドゥ・マルス」で同士たちを殺傷したフイヤン派憎しの感情が強くあるので、協力しているのだというものの、子供のことを言われてデムーランにその役割を負わせることをあきらめる。
 王への圧力をかけるも、王はその要求を認めず耐え切って、目論見と違いあまりにも長時間耐え切ったので、それほど長くパリ市政庁が動かないということもできないため(気づかなかったという名目通用しなくならないため)か当初黙認しいていたパリ市政庁の介入がきて、王の粘り勝ちに終わる。2時間も多くの市民相手に要求を認めるという言質を与えず、粘り勝ち、いやあルイ16世イメージよりもずっと粘り強いなあ。