花散らしの雨 みをつくし料理帖 2

花散らしの雨 みをつくし料理帖

花散らしの雨 みをつくし料理帖

元飯田町に新しく暖簾を揚げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!

(株式会社 角川春樹事務所HP 書籍情報 花散らしの雨 みをつくし料理帖 より)


 1巻読了からしばらく間が空いてしまったがようやく読了。
 冒頭に地図があり、その中につる家だったりが記されているのは想像がはかどっていいね。
 「俎橋から」つる家、新たにふきを雇う。その子はいい子であったのだが、その後、因縁の登竜楼に料理が真似られていることを新たに馴染みとなった客の戯作者・清右衛門に逆に真似っこしていると思われて怒られたことで知り、その次の新作料理もまた客に出す前段階で情報が流され登竜楼で出されていたことを再び清右衛門によって知らされる。
 そして店に隠密がいるであろうと言われ、新たに雇った彼女しか該当者いない。彼女は元登竜楼の人間で、今も登竜楼にいる弟を人質のような形にとられて仕方なしにやったことであった。
 今回の問題は以前と異なり登竜楼の店のトップ采女宗馬が指示したものでなく、板長が勝手にやったこと。直談判をしたら、今回は采女は素直に彼女に謝し、その板長を馘首にした。そして、ふきはそのままつる家に残ることになる。しかし仮にも隠密だったものをそのまま雇うとは警戒心がないというかなんというか。まあ、情にほだされやすいのは澪らしいけど。
 「花散らしの雨」馴染みのない白味醂、その良質なものを売り込もうとして失敗していた留吉に出会い、その商品の良さから芳が上方の料理人へ紹介。ひどく感謝される。野江=あさひ太夫が怪我を負った。そのことを知った澪、留吉が届けてくれた二人にとって懐かしい味であるこぼれ梅(味醂粕)を届けようとする。そうして入った吉原で病気で異形になった女とであい、花街の闇を見て、野江のことを思って恐ろしくなる。
 「一粒符」おりょうの子、太一が麻疹にかかる。この時代の麻疹は大病で、命の危険があるからおりょうさんは懸命に看病するも、実は彼女自身麻疹にかかった経験がなかったので、彼女も麻疹に倒れてしまう。そんなおりょうさんを看病する芳。そのため人手不足だったが、以前隠密目的とは知らず、ふきを押し込んだ口入屋の主人、自分の母りうをおわびがわりに紹介し、彼女がピンチヒッターとして働くことになる。りうは歯がなく、腰も曲がっているがかくしゃくしているおばあさん。江戸っ子らしい歯切れのいい舌鋒と、老いても働きぶりといいキャラしているなあ。また、そのりうが清右衛門を「あんな有名な戯作者がこの店の常連だったんですか」と驚いているが、そんな有名な人だったのか。澪たちはあまり本を読まないみたいだから知らなかったようだ。
 下馬評、登城の際に待っている侍たちが交わす噂話が語源なのか、それはちょっと面白いな。
 太一、火事の記憶を連想させる澪を怖がっていたが、最後に快癒した後、澪が彼に葛饅頭を作ってあげたことでそうした連想で恐ろしくなる気持ちもちょっと薄れたかな。
 「銀菊」きゅうり料理が人気に。しかしそのせいで何故か武士の客足減る。その理由は、きゅうりと三つ葉葵が似ているということできゅうりを食べない武士たちに敬遠されるからだと知る。その後、きゅうりを少し茹でるとシャキッとして美味しいことを発見した澪は、茹でたきゅうりを叩いてつぶすことで、三つ葉葵に見えないようにして、更に美味しく食べるための工夫をして、「忍び瓜」と忍んでも食べたいという名前にして売り出し、再び武士の客を取り戻す。
 店近くにあらわれた謎の少女。どうも敵意があるようだ。それを見て、すわまた厄介ごとかと思ったが、どうやら彼女=美緒(澪と同名の美しい少女)は源斉先生を愛していて、源斉が澪が好きなのではと疑って、宣戦布告しにきたようだ。
 源斉と美緒をお似合いですねといった澪に対して、店主種市が返事代わりに吐息をついたという描写を見て、前回から間を空けているから良くわからなかったけど、実は源斉って澪に惚れているのかな。それに美緒だって根拠なしに、澪を敵視しているわけでもないだろうから、そうなのか。
 まあ、澪は小松原に首ったけだからか、もし源斉に好意を寄せられているとしてもぜんぜん気がついてなさそうだが。
 しかし今回は前回のように大っぴらな妨害があまりなくてよかった。平穏で。澪、「雲外蒼天」という子供の頃占われたときに言われた言葉から、毎度毎度大きな苦難(1巻ラストの火事のような)に見舞われるのではないかと思って、1巻読了後に次の巻を読むのに躊躇していたという側面があったが、それは余計な心配だったみたいだな。