共和政の樹立 小説フランス革命12

内容(「BOOK」データベースより)

1792年8月の蜂起で王権が停止され、国王一家はタンプル塔に幽閉された。パリの民衆は反革命の容疑者たちを次々に虐殺。街に暴力の嵐が吹き荒れ、立法議会に代わって国民公会が開幕すると、新人議員サン・ジュストの演説をきっかけに国王裁判が開かれることに。議員たちのさまざまな思惑が交錯する中、ついにルイ16世の死刑が確定し―。フランス王政の最期を描く、血塗られた第12巻。



 今回は国王の処遇、死刑か否かをめぐる論争・政争が主に描かれ、クライマックスでフランス革命の頂点ともいえる王の処刑が書かれ、この巻閉じる。
 王、以前の逃亡したヴァレンヌ事件や、暴徒に踏み込まれるも何とか切り抜けた6月20日なら幽閉という事態に陥るのはわからなくもないが、今度の出来事は落ち度ない。しかし血が流れたから、このような状況になったと理解。しかし8月10日で蜂起した者らが宮殿取れたのも王が退くように命じたからだが、そうして政治的存在感を増したものが声高に王への厳刑を求めて声を上げているというのはなんという皮肉か。
 パリで人民裁判と称して、宣誓拒否僧などへの虐殺行為が繰り広げられる。8月10日に多くの血が流れたこと、そして政府がやっている裁判では「慎重な判断」しかださない(強い疑いでも疑いだけでは処罰市内と言う通常時では妥当な判断だがそう見られる)ため、不満つのりパリの民衆過激になっている。それを法務大臣のダントンも黙認している。
 デムーランはその動きはおかしいと、それを何とか辞めさせようと動くも、ロベスピエールはその動きを積極的に推奨しようとし、ダントンは殺されそうな人物を積極的に何かの仕事という名目をつけてやるなどして海外に出してやることで逃がそうとするも取締りには動かず(支持層で、それを否定して支持を減らしたくないからか?)。
 デムーラン、ロベスピエールがパリの民衆の暴走を利用(同調)して、政敵ジロンド派を排除しようとすらしていることをみて驚く。ただ、そのことを知って、ダントンにそれすら黙認するのかといったことでジロンドは指導者の処刑を何とか取りやめさせる。
 新たに選挙がなされ、国民公会(新議会)がはじまった。その議会では初日から王政廃止と言う大きな決定がなされた。改憲にも絡むので慎重な議論が求められるからと王政廃止についての判断は新議会が召集されるまで棚上げになっていたが、王政の廃止が初日で決まり、翌日共和制共和制宣言がなされた。流石にそれにはロラン夫人の言のように、ちょっとあきれる。
 対オーストリアプロイセン戦争、ついに逆襲始まる。それもジロンド派を入れて内閣を作り、自身も大臣だったデュムーリエ将軍の指揮で。ただ、それも実はダントンと将軍が工廠・密約でプロイセンを退かせてオーストリアだけを相手にすれば良いという状況になったからというのが真相みたいだけれど。
 また、パリ民衆の私刑である9月虐殺の報を聞き、地方はパリに不信感を抱き、その事件でパリの民衆が支持の基盤でその動きに共鳴したジャコバン派でなく、ジロンド派に合流した。それでも圧倒的に一番多いのはジロンド・ジャコバンなどの党派に属さない、中間的な平原派あるいは沼派と呼ばれる者たちであるが。
 戦争の勝利によって聞き遠のいたことで、パリ・蜂起の自治委員会などが解散したことでジャコバン派の影響力弱まり、一層ジロンド派に順風吹く。
 パリ民衆の圧力から守ろうとフランス全土から議会を守るための部隊を集める提案、可決される。
 ジロンド派ジャコバン派が敵対。先の虐殺熱の最中でロベスピエールジロンド派を処刑しようとしたから当然ともいえるが、彼に対する攻撃激しい。ジロンド派ロベスピエールに対して、県民衛兵隊を拒もうとするのはパリを特別視して、議会に近いパリの民衆(ジャコバン派が動かせる)を使って圧力をかけようとするもので、その圧力を使った独裁の意図ありと攻撃。そうしてなんとか彼らの勢力落として、磐石の政権にしようと画策するも。反撃受けてその意図は達成されない。
 そんなことをもあり互いの議員の失策などに対する攻撃とそれに対する弁明・反撃などの論戦が繰り返される政争が続く。そうした中で、廃位された王の処遇後回しにしている。それこそがジロンド派の狙いなのだが、国政の停滞生む。彼らは国内の動揺、諸外国も引っ込みつかなくなるだろうという見通しもあって、王を処刑させないように動いていた。そしてダントンもそれと同じ認識を持ち、再び共闘あるかと言う話になりかけたのだが。
 しかしジロンド派内務大臣ロランの致命的ともいえるミスによって国王の書簡が見つかり、色々と画策していたことを知り、非難の声高まり一気に処刑ムードに。
 そこでジロンド派国民投票で王の処遇を決めるように提案。それに対しロベスピエール、内心パリの直接民主主義は信じられても、地方の直接民主主義は信じられないと思いなんとか議会で決めさせようとする。ロベスピエール、結局独裁者であるなあ、自分に都合のいいもの、自分の理想に沿ってくれるものしか信じないなんて。
 ジロンド派が断固として王の処刑に反対するのではなく、投票でも国民向けのポーズもあってか死刑だが執行猶予をつけるとしたこともあって(そしてその派の中から切り崩され執行猶予をつけるとはいわなかったものがいたせいで)王の死刑が決まってしまう。なにしろ死刑に投じられた票は過半数をわずかに6票上回るだけだったのだから、ジロンド派が死刑反対の姿勢を明確に示せていれば結果はまた違ったものとなったであろう。
 今回最後の3章王視点で進み、穏やかに取り乱さず、怒りも絶望もせず処刑へと臨む王の姿が書かれる。
 王の哀れな姿を見ればパリの民衆も心が動くかもしれないということで、通りに面した窓を全て閉めさせるという達しがでていた。もっとフェスタというように、多くの民衆が見たというものだと思ったが、見たのは大勢いるけど単なる民衆でなく兵隊とかだというのはへえ。