耳刈ネルリと十一人の一年十一組

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

『大ネルリの節句』来る!それによって『大ネルリ未来記』を継承したネルリは、未来記に基づきまわりに起こる出来事を次々に言い当てていく。半ばこじつけで人の未来を決めつけるネルリに辟易のレイチ達十一組の面々だが、そんな中、ネルリは自らの死を予言した…!冬を迎えた極寒の八高で、十一組のメンバーはネルリを守りきれるのか?そしてレイチは妄想の中に描いた本当の未来をつかむことができるのか―。愛と未来と感動の最・終・巻。


 シリーズ3冊目、最終巻。かなり高評価で短いシリーズだから読み始めたけど、ライトのベルは新刊から読んでしまうから、3冊読み終えるまでにかなり時間かかっちゃったな。特に2巻から今回読むまでに、シリーズ読み終えたら読もうと思って同著者の「後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール」を買って、それが続刊出ないという情報を得て、買ったの失敗だったかと思っていたら、なんか「このラノ」でランクインしたと聞いて驚いたということがその間にあったことからも、その期間の長さがわかるだろう。
 冒頭、ネルリの成人からはじまる。といっても時間がそんなに経過したわけではなく、彼女の国の成人の年齢が低いということだが。
 前回の内容そんなに覚えていないけど、冒頭からレイチがネルリに惚れているのがまるわかりに描かれているが、そんなに恋心が表に(地の文に)出していたっけ。そして前の巻から、現在の主人公がいて、過去の回想といった感じだったっけ。そこらへんすっかり忘れてるわ。
 いわれのない風評被害がレイチを襲う。
 誰かの陰謀で、何故かレイチの着替えに仕込まれていたパンツの持ち主を探すべく、それを校内放送で呼びかけている間、パンツの話から派生して、だらだらと男同士で他愛のない会話をしているが、こういう普段の、日常的な些細なところが面白くていいよな。
 6章ラストの、現在はネルリがそばにいないという発言、こういう発言があるけど実は一時的だったみたいなケースも考えられるから、どちらともとれるけど、こんな風にかかれると、ちょっと胸が痛むし、ハッピーエンドを望む気持ちが強くなるし、二人の話はどうなるのだろうという関心も強くなるな。
 レイチはイ=ウ(◇)の告白を断り、彼女にネルリへの慕情を明かす。心が揺らいでないということからも、ネルリへの気持ちは確固とした強いものだということが伺える。
 恋したがために、ネルリとの身分差、立場の違いを強く意識するようになる。
 ベイン教国が本地よりの共和国に変わり、○△◇は故郷へと帰れなくなり、活動委員会の次なる目標が極東諸国、その中でも強大なシャーリック王国(ネルリ)など、学生生活だけどシビアな国際情勢のきな臭さが感じられる。それは旧ソ連をモデルにした世界観のエリート学校だから、そうしたこともなんとなく全くの絵空事ではなく、それなりにリアリティのあるものと感じられるのがいいね。
 ネルリ、自身への災厄の予言。それから彼女を守るためにクラスの仲間たちが結束して事に当たる。
 その前日に犯人が事前に準備しているかもと警戒して、当日こもる場所を調べにいったら、何物かが襲い掛かってきたので、振り払い、雪の中に埋めるわりとえぐい攻撃をしたら、思いがけぬ小柄さに疑問に思って掘り返したらネルリだったという一連の流れは笑った。
 ネルリとレイチが一晩を共にするシーン、あとがきで致したかを編集者に尋ねられたときは想像に任せると誤魔化したといっていたが、改めて読み返したらそうとしか読めないと自ら思うように。しかし、あれでどっちつかずのシーンと誤魔化せると何故思ったのか、だってそうとしか読めないもの(笑)。
 犯人発覚、どうやら逆恨みだったようで、危険性認識していなかったというが危うく全員を一酸化中毒で殺されるところだったので、怒りのボルテージがたまる。ネルリも、その護衛軍が危害を加えようとしたその犯人を殺そうとするなど、そこで改めて二人の考え方の根本的な差異について認識させられる。
 しかしそれでもレイチもネルリも、それでもこれからも一緒に居たいと考える。
 エピローグは、7年後、それぞれの道を歩んでいる一年十一組のメンバー全員集合するところで終わり。彼らのその7年間の話が語られる。
 ネルリとレイチはまだ互いに重いあっているようだが、互いに初恋をこじらせているような感じで、たとえ一度くっついてもその後も幸せに続くとは想像しにくいなあ。ネルリみたいに王・政治家として重大な決断をしてきたような人間と、学究の道に進んでいる(特段優秀でもない)普通のエリートといった感じのレイチでは、前よりも一層考え方などが開いているだろうからなあ。まあ、そこらへんはレイチの愛と適応力に期待して、いつか二人がくっついて、幸せに暮らしましたとなるように願っておくとしようか。