ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7

内容(「BOOK」データベースより)

新生“ヘスティア・ファミリア”始動!『戦争遊戯』という激戦を乗り越え新に眷族となったリリ、ヴェルフ、そして命。ベルのもう一つの家族。深まる絆。だが、命を追ってベルが迷い込んでしまったのはオラリオの歓楽街。“イシュタル・ファミリア”が管理する『夜の街』。そこで少年は囚われの身である極東の少女、春姫と出会う。蠢く陰謀に呑み込まれるベルが下す選択は―。


 冒頭でベルのアビリティの「幸運」は、採掘でも仲間が中々見つけられなかった目当ての鉱石をあっさりと一発で当てられるという描写を見て、改めてそのアビリティの強力さと万能さを実感する。
 カサンドラの話、夢といっても未知のことを見通したのではなくて、既知のものについてだから、夢の中で過去の記憶がふっとよみがえった的なものと思って普通信じる気がすると思ったら、予言を信じたくさせなくなる呪力をもっているという設定か、名前のとおり。たしかカッサンドラってトロイの木馬(だったっけ?)のことを予言したが神の呪いかなんかで信じてもらえなかった人でしたっけ。ホメロス、未だ読んだことないからいずれ読まなきゃなぁ。
 アポロンファミリアを倒して、大きな本拠地を手に入れて、今後は人が増えて、それはよいことだが色々と大変でもあるなんて言っていた数ページ後に、莫大な借金(ベルのナイフを作ったときのもの)が明らかにされて入団希望者がみんないなくなるという展開には笑う。順風満帆とは行かないが、読者としてはあまり人数が増えすぎるのも、そしてファミリア内でぎすぎすしたことが起こることも嫌だなとも思っていたので、ある意味よかったといえばよかったか。いや、数人の増加なら別によかったのだけどね(笑)。
 今回は娼館、歓楽街を舞台に、そこを仕切るイシュタル・ファミリアと戦うことになる。しかしイシュタル・ファミリアの面々の顔見せのためのシーンでもあるとはいえ、ベルを無理に連れ込んで、そこからベルは逃げて彼女らに追われて大騒動という展開になるとはな。やはり主人公力というべきか、トラブルの星の下にあるなあベル君。
 そして逃げ回っているうちに、命の故郷の友人であり、彼女が探していた、売られた狐人の姫君春姫と邂逅し、言葉を交わす。
 怪しげであり、そのため訴えられたが、証拠が見つからなかったため、罰をうけて弱体化した訴えたファミリアをつぶし、秘匿情報を多く知られたとしてギルドから多くの金銭をむしりとった。そのため胡乱な存在ではあるが、ギルドは強く出られず、歓楽街での行為に目を瞑っている。しかし、ここで権力の助力が得られないし、無謀な戦いだからといって春姫を助けるのを諦めない。しかしリリが正確な見通しを話して太い釘を刺すまで、春姫と会ってどうにかするつもりだったというのは無思慮でうかつといえなくもないけど、その行動派っぷりが主人公らしさではある。
 春姫、娼婦としての仕事をしていたのかと思いきや、後半で実際に床入りとなるとひっくり返ってしまうため、身体を売っていないとわかってなんじゃそらとちょっと脱力。春姫自身はそうしてひっくり返っている中で見た、悪夢で男に身体を預けていた(それほど精神的に追い詰められていた)ということではあるようだが。
 イシュタルはフレイヤに対抗心強く、フレイヤが興味を抱いているベルを食べてしまおうとして、ファミリアのメンバーに命じてベルをさらわせる。そしてベルは囚われの身となる。そして命も身軽さで彼のもとに助けに行こうとして、誘拐が露見するのを防ぐために同じく囚われることになる。
 そんなところを春姫に助けられる。
 そして殺生石の儀式、狐人の精神を犠牲にしてそのものの能力を石に宿しそれを破片にすることで、その破片を持つものはその狐人が持っていた能力を使えることができる。そのことをしったヘスティア・ファミリアの面々、そしてベルと命はそれぞれに春姫を助けるための行動を開始する。
 そうしてベルは囮となって、イシュタルファミリアの本拠地で暴れる。そんな中ひそかに行動していた命は、屋上で儀式に赴いていた春姫との間でシリアスを繰り広げていた。しかしそのころのベルは、イシュタル神が彼のもとにやってきて彼をいただこうとするが、魅了が効かないので服を剥いでアビリティを見て「憧憬一途」の効果で魅了できないことがわかって、イシュタルは取り乱す。建物の中のベルとイシュタルの反応と、上とのギャップで笑う。
 そしてベルは春姫に何が何でも助けると決意を表明して、春姫はそんな彼に自身の能力(一時的にレベルアップさせる)を使い、ベルと他の戦闘娼婦たちとの間で戦いが始まる。それと同時にヘスティアファミリア、タケミカヅチファミリアの面々が彼を助けに戦闘に入り、そしてベルを誘拐したことをしったフレイヤファミリアもイシュタルファミリアに襲撃を開始する。
 結局ヘルメスが色んなところに火種をつけ(少しずつの情報を渡し)て、ベルへの試練としようとしたというのがこの事件の真相かい(笑)。もちろんこんなに大きな事件となるまでは想像が付かなかったようだけど。
 しかしイシュタルファミリアはフレイヤと対抗するために春姫の能力を殺生石で多くのものに使えるようにしようとしたというが、フレイヤファミリアにはレベル6が複数人いて、オッタルはレベル7で、イシュタルファミリアの一番がフリュネのレベル5ではそもそも相手にならなかったのではと思わざるを得ないな。その能力が重ねがけできるのならまた話は別かもしれないけど、たいていこういう能力は重ねがけできないからな。
 しかしアイシャ相手の最後の戦い、いくら挑発されても、事態が正確にわからないのだからわざわざ春姫の能力切れるのをまって同じ土俵で勝負しなくとも、すぐに倒してさっさと彼女を担いで逃げるのが本当に助けることを第一と考えるならばそれがベターな選択だったんじゃないかだったんじゃないかと思ってしまい、ベルの行動にはちょっと疑問符が浮かぶ。
 まあ、そうやって戦わないと今回ベルの見せ場があまりないことにもなるし、あるいはアイシャが春姫を害そうと思えば害せる場所に居たから彼女を傷つけかねないリスクは万一でも犯せないと思って土俵にのったというのも理由にあるかもしれない。
 今回ベルはフレイヤを見て、今まで誰かに見られているように感じていた視線の主がだれだったのかを知る。
 あとがきに、プロットを見せたときに担当さんに「劇場版みたい」と言われたということが書かれているが、それを見てなるほどと納得。最後に春姫がファミリアに参入することとなったものの、それ以外のヘスティア・ファミリアとそのメンバーの大きな変化はなく、中核メンバーのバックボーンと密接に結びつくようなエピソードでもない(春姫というキャラがなくとも、命というキャラは成り立つし、それに対する伏線が今まで張られていたわけでもない(よね?)ので)、しかし歓楽街が崩壊するという派手な展開(絵的にも)もあるから、「劇場版」という表現にたしかにそうだと首肯する。
 次回は日常編ということで楽しみだ。こうした短い期間でしょっちゅう大きな騒動に巻き込まれるようなシリーズは、そうした話が続くにつれてやはりたまには日常話が読みたいと思うから、たまにでも日常編がはさまれて、それを読むことができるのはうれしいわ。