大航海時代


大航海時代 (新紀元文庫)

大航海時代 (新紀元文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

15世紀の「大航海時代」は、地理上の発見、交易や異文化との接触により、世界に大きな変革をもたらしました。本書は「コロンブス」「マゼラン」など幾多の冒険者たちの人生を追いながら、大航海時代の全容を明らかにしていきます。



 簡単に大航海時代の歴史(探索史、探検史)を書いた、手軽に読める読み物。
 大航海時代のエピソードは負の側面も大きいけど、ロマンもある時代だから、この時代についてちょっと前から少し興味でてきたけど、創作含めていまいちそうした時代を舞台にしたものを読んだことがなかった(少なくともそれと意識して)。そのため読みやすく、扱われていることへの全体的な知識が得られるこのシリーズを読む。本格的な歴史の本だと、細かいところについて書かれるから、何の知識もなくそうしたものを読むのは厳しいので、こうしたある一定程度の範囲でまとめられた歴史読み物というのは個人的には凄くありがたい。また、この本(シリーズ)は多くのトピックで形成され、トピックごとに、さまざまなエピソードや人物、歴史的事情が短く書かれている。
 十字軍、めぼしい戦果は第一回のもの以外にあがらず。200年のイスラム勢力との戦いの末、キリスト勢力(ヨーロッパ)は封じ込められたという現実を直視することになる。そうして抱かれた閉塞感には経済的要因も大きい。ヨーロッパは元から北の貧しい土地柄である、東方の豊かな産物を手に入れたい。しかし入手時にイスラム勢力が介在して利益を上げているから、それを廃して何とか安く東方の産物を手に入れたいとの目論見も十字軍にあったが失敗したことで、そうした閉塞感を覚えたのだろう。
 ヨーロッパがいかに自身の地理的知識の範囲、交易の範囲(そして領土)を広げていったのかという歴史的推移を書く。ヨーロッパ人の南北アメリカ大陸の探索や新航路の開拓など道の場所への冒険がメインで描かれる。海賊のことは小コラムで1階さらっと触れられたっきりで、そうした話はきわめて少ない。
 マルコ・ポーロ、叔父や父が一回、帰国ルートを探って東へ東へと行くうちに、元皇帝フビライと会って教皇への手紙をもって帰国して、再度その返答を携えて元皇帝フビライのもとへ赴く、その再度の道行の際にマルコも連れて行ったということなのね。そこらへんの詳しい経緯知らなかった(か忘れていた)よ、しかし父・叔父タフだね。
 マルコは帰国後、持ち帰った財宝と商売で豊かだったが、大ハンの偉大さ、彼の国の壮大さを語るスケールの大きさが、当時の欧州人の想像の埒外だったため『百万のマルコ殿』とあたかも誇張癖あるようなニックネームがつけられた。
 ボジャドール岬が世界の果てで、それ以降は煮えたぎった海があったり、急流になっている、世界の果てと信じられていた。そのためエンリケ航海王子が命じても、それより先の探索が長年進まなかった、従士から探検航海の指揮官に抜擢されたエアネス、一度目は船乗りにここから先は危険といったのでと言い訳をしたが、エンリケに叱責され、恥じ入り、二度目のチャレンジでそこを超える。それがブレイクスルーとなって、それ以後自分はもっと南へいけると主張するものが出始める。しかし少し後にアフリカ西海岸の住民を捕虜として連れ帰られ、奴隷貿易が実質的に開始されはじめてからポルトガルの関心はそちらに向けられた。エンリケは純粋に探検航海のみを求めたので、金銭的には莫大な負債を負って障害を閉じることに。
 ヨーロッパ人をはじめてみた、西アフリカ沿岸部の人の反応が記されている小コラム、面白い。笛の音やロウソクの明かりの美しさに驚嘆し、銃器などには拒否反応を示した。
 プレスター・ジョン、未知の強大なキリスト教徒の王と否定されたエチオピア皇帝。機欧州世界に接触することになって(1493年にコヴィリャン、「プレスター・ジョンの国」エチオピアに入る)から、初期の1497年には、彼の国が近くにあると知った乗組員が感激で号泣したりしていたが、半世紀も経たないうちにそうした航海の当初の目的だった「プレスター・ジョンと接触し、共にイスラム勢力を討つ」との幻想は消滅していき、植民地獲得、奴隷貿易、東方交易の独占という目的が残った。
 ポルトガルがプレスター・ジョンとの接触を試み始める。そうすればキリスト教世界へのポルトガルの影響力が非常な高まりを見せる。コロンブスの西回りでのアジアに行く(実際には未知のアメリカへ到着した)という探検計画を援助したのは、成功時の経済的利益が当然あるけど、ポルトガルの成果と対抗するためにアジアという新たな布教地を手に入れたいという思いもあっただろうというのは、へえ。
 コロンブスの探検成功、一代トピックとして欧州世界に伝わる。5年後にイングランド北米大陸に到達、8年後にポルトガルグリーンランドに到達(再発見)と大西洋へ探索へ繰り出す動きが一増加した。
 ヴァスコ・ダ・ガマを司令官とするインド派遣船隊、モザンビークやインドでもめごと起こす。他の船に先導してもらう安全策で武器の入らないだけの間を空けたり、寄港しているのに船の人間を全員陸にやらなかったりと警戒しているのをみて、海賊船ではないかと思われて現地の人たちと武力衝突起きる。安全策をとったつもりで慣習と異なる行動を取って、人々の不信をかって武力衝突起きているんだから世話ないな。それに結果としてなんだか知らないが、海賊のようなことをしているのだから、こいつらポルトガルの船隊が悪いとしか言いようがないわ。
 当時の船の特徴が非常に簡単にでもまとめられているのはちょっと嬉しいかな。まあ、覚えない、覚えられないだろうけど(苦笑)。
 海戦前、砂をまくがその理由は地や汗で足元滑らないようにというだけでなく、大砲が反動で下がるときに生じる摩擦熱で発火しないためでもある。
 速度を測ったり、場所を測定する正確な計器のない大航海時代には船の速さを測るのに、船首付近から木片を投げ入れて、船尾を流れ去るまでの時間を計って速度を測定した。
 嵐の時にマストの先端部が松明のように光り輝くセント・エラルモの灯と呼ばれる自然現象(放電現象)があるというのは知らなかった。そうした不思議に見えること実際に起こるんだとちょっと意外だった。
 214ページにある挿絵の「カラベル船 船乗りの暮らし 船隊輪切り図」はすごくいいんだけど、もっと詳細他にも間取り図的なものなどがあったらなお嬉しかったのだが。
 当初コロンブスアメリカ大陸は、コロンブス自身からもインディアスの東海岸への到着だと思われていたが、1503年アメリゴ・ヴェスチが新発見の陸地とインドが別物と主張(そのため彼の名をとって今日「アメリカ」大陸と呼ばれている)。旧大陸と独立した別大陸との認識が一般的になるのに200年かかった。
 アメリカ大陸にさまざまな幻想的な国があるとの噂飛び交う。自らの幻想に興奮し、現地の人の話にその欲望を投影したことや、ヨーロッパ人のいわれのない暴虐から逃れるため作り話をして満足させた(ここから何日行った場所に黄金郷があるといえばそうした行いから逃れられた))ということが、そうした国が実在するようにヨーロッパ人たちが自らを信じさせた理由にある。