僕と彼女のゲーム戦争 8

内容(「BOOK」データベースより)

秋葉原のゲーセンで遊んでいたことが父にバレ、部活禁止を言い渡されてしまった天道。天道の部活復帰のために自宅を訪れた岸嶺たちは、世界レベルで商業的に成功したゲームの例を出し、どうにか理解を得ることに成功する。しかし、天道が部活に復帰するためには、そのゲームの大会で結果を残すという、厳しい交換条件を出されてしまう。優勝を目指し特訓する岸嶺たち。一方天道の父は、優勝を阻止するため岸嶺たちの因縁のライバルに声を掛けていた!電撃キャラクター大集合の「電撃文庫FIGHTING CLIMAX」も登場!シャナや美琴など、電撃ヒロインたちが熱い対戦を繰り広げるぞ!

 前半は電撃文庫のキャラクターによる格闘ゲーム電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」、そして中盤以降は、月間アクティブユーザー(1月に1回以上プレイする人)が6700万人以上もいるという世界で最も人気のあるゲーム「League of Legends」を扱う。
 岸峰が「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」を、それほどやりこんでいもいなくて、それを練習しなければいけない事情があるわけでもないのにプロゲーマーに安易に頼みに行く流れは、非常に違和感を覚えた。それに電撃のゲーム雑誌の編集長とゲームメディア統括の人が登場させて、対戦させて色々と発言させているのは、うーん、相手の人のキャラがわかる人向けのメタネタなのだろうけど、知らないから、ふうんとしか思えない。なんだかキャラクターによるレポマンガ的なものに感じて、そうしたものにシフトするつもりなのかな。と思っていたが、どうやら巻末を見ると、その「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」を扱ったEP1、EP2はそもそもが雑誌に載った短編のようだ。
 雑多なものが入った短編集にあればそんなものかと思えるが、冒頭部分として本編に組み込まれると違和感がある。具体的にいえば、プロゲーマーに簡単に教授を願うところとか、電撃のゲーム雑誌を読んでいても部室にあるのを読むだけだから今度から購読しようかと検討するところとか、岸峰はそんな金のあるキャラではなかったはずだから、ちょっとキャラがぶれているように見える。
 と、前半は個人的には微妙だったが、中盤以降の「League of Legends」というゲームを扱ったパートは、そのゲームについて知らなかったこともあって面白く読めた。
 「League of Legends」プレイヤーが介入しなければ互角の戦いとなるモブ兵たちの戦闘を両チーム各5人のプレイヤーがチャンピオンといわれるキャラクターを使って、プレイヤーが介入することで勝利を目指すというもの。どうやらフィールドの盤面は固定みたい。モブの敵を倒したり、フィールド上のモンスターを倒してレベルを上げて、敵のチャンピオンを倒して、戦局を勝利に導け、というようなゲーム。
 盤面は同じみたいだが、100以上のチャンピオンのキャラクターが選択できるようだ。そのそれぞれ特徴や特技も違うチャンピオンがいることによって、戦略も変わってさまざまな戦いが見られるし、盤面が同じことで戦略の違いを楽しみやすいというのもあるのかな。
 キャラクターの多さに加えて、ゴールドで色々なアイテムを購入してそれを使うので戦略もさらに多彩に。元はRTSのMODが原型とされているということもあって、一人のキャラを動かす簡易RTSみたいな感じであるようだ。
 月間アクティブユーザー6700万人もすごいが、ネットでの世界大会の配信が1100万人が同時視聴したというのもまたすごい。そんな非常に大きいタイトルみたいだけど、ゲーム、あまり詳しくないのではじめて知ったわ。
 今回、瀬名先生が活躍しているのはいいねえ。かなりのゲーマーであるけどいつもあまり目立たないし、際立って優れているところが見えにくいから。
 今回岸峰たちは「League of Legends」の大会に参加するが、その司会をやっている人たちだったり、あとがきを見ると優勝者の名前が『ゲームクラブeスポーツMaX』というTOKYO MXでやっているeスポーツを扱う番組とのコラボだったみたい。これだけなら気にならなかったのだけど、冒頭で露骨にコラボ的なお話があって、(そして読み終わってから冒頭部が雑誌に掲載されていた短編だということを知ったので)ちょっとコラボ多すぎないかとちょっと微妙な気分になってしまった。しかし今後もいろんなところとコラボしていくスタイルになるのかなあ……。
 今回の「League of Legends」での戦いは全く知らなかったゲームだけど、戦略的だけど、細かいところはわからずとも大きな展開はわかりやすく書かれていて、見ごたえあって面白かった。