フランス革命の肖像

フランス革命の肖像 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

フランス革命の肖像 <ヴィジュアル版> (集英社新書)

内容(「BOOK」データベースより)

世界史上、これほど多くの曲者たちが登場した時代はない。マリー・アントワネット、ルイ十六世、ミラボーロベスピエール、ダントン、サン・ジュスト、マラ、ナポレオンといった「主役」だけではなく、一般には知られていない「端役」に至るまで、その人生遍歴は大河小説をも超えるドラマである。そして、居並ぶ肖像画の一つ一つに、巨大な歴史の影が何と色濃く刻印されていることか。本書は、西洋歴史小説の第一人者が、フランス革命史に登場する有名無名の人物たちの肖像画およそ80点を取り上げ、彼ら彼女らの人物評を軽妙な筆致で描いたユニークな一冊である。まさに、人の顔に歴史あり。

 新書だけど全編カラーで、フランス革命期の人物の肖像画を載せている。そうした肖像がを見ながら、その人物やフランス革命について簡単に説明しているが、私は著者の「小説フランス革命」シリーズも2部の半ばほどまで読みすすめているので、そうしたことが書かれている部分のほとんどはある意味復習にもなったかな。しかしその小説でなんとなく人物のイメージをつかんでいたので、それぞれの人物の顔を改めてみて、イメージどおりだと思ったり、意外な印象を与えるなと思ったりして楽しめた。
 ルイ十六世は太っている印象があったので、やせてはいないけど太っているという印象は与えない外見でちょっと意外だった。しかしどうやら王が肥満で間抜けという印象を与える容姿で描かれるようになったのは「ヴァレンヌ事件」で国外逃亡が失敗してからのことのようで、ルイ十六世が愚鈍というイメージはその事件以後に作られた部分が相当あるみたい。
 ミラボー、例の巨人澤村選手似の肖像画しかみたことなかったが、本書に載っている赤い服を着てやや上を向いた肖像画だと目がパッチリと見開かれていることもあって、子供のようでありながら体格的には子供じゃないアンバランスさがあって、例の肖像画とは結構印象異なるな。まあ、そうしたアンバランスさを感じるこちらの方が、親から醜いから嫌われたその醜いと思われたわけがわかるからこちらをチョイスしたのかな。革命の獅子と呼ばれたイメージは、口元を引き締めている巨人澤村選手似の肖像画のほうが出ている気がするけど。
 オレルアン公の『いかにも王族という雅やかな顔の印象にもかかわらず、実は過激な自由主義者』(P40)という説明はまさにそうだなと深く納得できるほど、非常に外見とのギャップがある。しかしこの御仁、中々印象的な風貌をしているな。
 『いかにも温和な知性派という細長い顔をした天文学者バイイは、国民議会の初代議長となる。』(P44)私が西洋人の顔になれていないせいかもしれないけど、顔についての説明されたときなるほどと思える人と、そうかなと思う人がいるけど、オレルアン公とかこの人はいかにもって感じで説明と個人的に受ける印象がぴったりと重なるとなんだか嬉しい。まあ、それほど特徴的というか、いかにもって感じの顔だから。
 デムーランの画面全体が暗く、斜めから顔を描いて顔の右側が影になっている肖像をみると、型につきそうな長さのウェーブした髪とクールな目の印象もあいまってバンドでもしていそうに見える。
 タレイラン、男前。顎がしっかりして、目つきもやわらかいという印象もないので個人的には本文で表現されているように「優男」には見えないが『酷薄な女ではないかと思うくらい』(P62)という表現はなるほどと合点がいく。
 クートン、過激な言葉を吐く車椅子の闘士という印象からもっといかめしい面構えの人間なのかと思えば、穏やかなインテリという印象。それと案外彼って若い人なのね。もっと中年とか老人かと思っていたわ。
 サン・ジュスト、言葉も行動も果断で、議会全権代表として前線に行き自ら軍隊を動かして大きな戦闘で勝利をもたらしたこと幾度かあったり、恐怖政治にあってもロベスピエールの色より彼の色の方が濃い局面も随所にある。彼は『器量の大きさではロベスピエールを優に凌ぐ、あのナポレオンにも匹敵すると、そうまで評する声も贔屓の引き倒しでは片付けられない。』(P132)それほどの大器で、大きなことをした人間だとは知らなかったわ。
 しかし掲載されている彼の肖像、特筆されるほど美男であるという印象ないなあ。文章で完全無欠の美青年とイメージして、期待でかすぎたせいもあるかもしれないけどさ。wikiに載っている肖像画をみれば、少年らしさのあるイケメンだなと思うけど。
 ヴァンデの反乱の指導者カトリノーとか、若きナポレオンの肖像画(こっちは美化されてるんじゃないかとは思わなくもないが)の方がパッと見で格好いいと思う。