交渉力入門<第四版>

交渉力入門<第4版> (日経文庫)

交渉力入門<第4版> (日経文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

相手も自分も満足する最高の成果に導く!ビジネスに必須のスキルを身に付ける。状況に応じた戦略の選択、事前準備、プレゼン、調整、説得の実際を、豊富な事例や訓練法も交えてわかりやすく解説。

 こういう能力はさっぱりないから、どういうものセオリーのようなものがあるのかちょっと知りたくなって読了。こうした本を読むことはあまりないけど、なんか読み飛ばしていないかと不安になるほど、やたら早く読めるなあ。まあ、基本的なところをわかりやすくという類の本みたいだから、それで当然か。あるいは、単によく知らないから重要なものにも引っかかったりせず、頭の中をすり抜けているから速いということもあるかもしれない。
 限られた資源、伝統的には「人・物・金」の3つだが、現在は「情報・時間・経営スキル」の3つが加わる。
 『戦略には、四つの条件があります。?戦略は考え方の組み合わせですから、その整合性が必要であること、?内容がわかりやすいこと、?だれが(who)、なに(what)を、いつまでに(when)、どのようにして(how)実行するのかと言う具体的な手順があること、?「もしも、うまくいかないときには、どうするか」という備え(コンティンジェンシー)が必要です。』(P16-7)
 『複雑な交渉も「売り手Xと買い手Y」という関係に分けて考えることにより、そのビジネスの基本的な関係が明らかになります。もし、「売り手と買い手」というシンプルな関係に分けられない場合には、その交渉は成功しない可能性があります。』(P34)シンプルに分けて考える。そしてそれに分けられない場合の交渉の成功率は下がる。
 Yが係争/交渉している取り分y1を譲歩することで、将来y1よりも大きな利益が得られるy2を獲得できる見通しがある場合は交渉相手Xの要求に応じて譲歩できる。そのように『ゼロ・サム交渉をウィン・ウィン交渉に転換することは、y2という補完条件を不満足側(Y)が獲得できるよう、XとYが協力して「つくり出す」ことによって可能となります。その補完条件がバトナ(BATNA)です。』(P41)バトナとは「最善の代替案」という意味だそうだ。
 『交渉の成果については、二つの場合が考えられます。一つ目は、交渉者XとYがその成果について、一方が満足、他方が不満足、つまりウィン・ルーズの関係です。二つ目は、一方が満足、他方も満足、つまりウィン・ウィンの関係です。交渉の成果としてウィン・ルーズの関係が存在することは、一見矛盾するように想われます。しかしこのような事例は、実務の世界には存在します。たとえば、上司と部下との間の問題解決において、上司が職権を使って「君の意見を聞いているのではない。指示されたように実行しなさい」と命じるような場合です。』(P67)そうした関係においても交渉とか、そういう範囲に含めるのかとちょっと意外で、目新しくうつった。
 しかし交渉が駆け引きと理解され、ネガティブイメージ持つのをやめさせようと交渉は駆け引きではないと何回か言っている。駆け引き的要素だけではないにしても、そうしたものも含まれているけど、ビジネスにも普通の生活にも交渉やそれに含まれる駆け引き的要素は当然あるものなのだから、それを嫌だと頭ごなしに否定するのは良くないことで、選択や可能性を自ら狭めることだし、ビジネスとしては悪手も悪手というようなことか。
 交渉でリスク折半とするのは、日本だけでなくほかのどんな地域でも同様のことが行われる。外国ではもっときっぱりどちらかに決めるイメージがあるのでちょっと意外だった。
 『(2)相手の攻撃をかわす方法「AFI」/ 相手に私たちの弱点を突かれた場合、谷から山に脱出しなければなりません。その武器の一つにAFI(Ask for Information)』があります。これは、相手から提案を受けたら、すぐにそれに反応しないで、まず、相手に「その提案の意図」についてあえて質問紙、十分時間をかけて相手の説明を聞いてみる方法です。そして、その説明を受けている間に次の対応策を考えるのです。』(P134)
 速いリアクションで相手に反応することで相手に良い印象と信頼を与える。『国際交渉では、この「速いリアクション」が、交渉をまとめるための基本条件の一つである』(P136)。
 説得は情報を理路整然と説明することからはじまる。『それが問題解決型の説得スキルであり、具体的には、次の四つの段階を踏んで行われます。/?解決すべき問題点を明確にする。/?その問題点を解決するための代替案を、可能なかぎり用意する。/その代替案について、長所と短所を分けて説明する。/?結論として、代替案の中から問題を解決するための最良の案を選び、その理由を説明する。』(P151)この手法が異なる意見・価値観を持つ相手として効果的で欧米はノーマティブ手法と呼ばれるこの手法が一般的な手法。ビジネススクールでこの訓練がなされる。『この説明の過程でで、当事者双方が基本的には同じ考えであるのに、実は「代替案の長所と短所の見方」の相違が原因で反対していたということが判明する場合が良くあります。』(P152)
 問題を的確に解決するためには、ノーマティブ手法を習得することが必要。その手法のステップを踏むことが交渉力の基本となる。そして『仮に、このような方法によって決めた結果が、実際には直感で決めた結論と同じであったとしても、両者の質は根本的に異なります。なぜなら、直感によって導き出された結果は一回かぎりのものであり、そのノウハウは個人や組織に残りません。しかし前述の方法で決めた場合には、それが問題を解決する情報(経験)として残り、もっと困難で複雑な問題にも適用できます。』(P199)
 交渉力シュミレーションで学べる交渉力の基礎の五項目『?交渉ではホスト側とゲスト側に分かれて行われますが、ホスト側から挨拶とともに問題解決を行いたいという強い意欲を説明すること、?交渉の現場では、相手の提案を否定するような表現ではなく、とうてい納得できないような提案でも、「承諾できない」という回答の代わりに、こちらから代替案を提案する方法を習得すること、?最初に結論を話、次にその理由を説明する方法を習得すること、?万が一「対立点」に到達した場合には、ブレイクを取り、その対立を解決する方法を見つけること、?忍耐によって合意点を見つける方法を学ぶこと』(P193)。