新約 とある魔術の禁書目録 13

内容(「BOOK」データベースより)

上条当麻は、疾走していた。ハイテク自転車『アクロバイク』で学園都市を逃げ回る。背中には、彼の腰にしっかりと手を回し、振り落とされないようにしがみつく御坂美琴の姿があった。―二人の背後から、『巨大な闇』が迫る。その『真の魔神』は、次元すら超越するほどの圧倒的な破壊の力で、上条を追う。もはや上条や美琴では太刀打ちできない。しかしそこに意外な人物が救いの手を差し伸べ…!同じ時。背中を預けながら戦う美琴の胸中にはどこか穏やかでない『上条への想い』がくすぶり始めていた…。『グレムリン:魔神襲来』編!科学と魔術が交差するとき、物語は始まる!

 今回は上条が出席数の少なさから、防犯オリエンテーションで暴漢役を務めることになるところから話が始まるが、青髪ピアスがやらかしたせいもあって、なんというか暴漢役が襲われるマンハントのようになっていてちょっと笑った。
 しかし雲川芹亜は普通にヒロイン陣の一人となっているなあ。作者の最近のお気に入りなのだろうか。
 僧正、上条に会いにくる。手紙で屋上に呼び出された上条は「そうじょ」が総女や早女という学校名かなと勘違いしている。しかし僧正はわざわざひらがなで「そうじょ」だか「そうじょう」と書いているということは実は騙す気ありありだったのかなと、感想を書いていてふと思った。僧正は結構悪ふざけもしそうなタイプのように思えるので、騙されてくれるとは思わなくても、面白いと思ってそうした形式で書くということそれもありえなくもないかな。
 世界を構成しなおせる魔人たちは、他の魔神がいるから自分だけの好きにはできないため、力をもてあましている。本当のグレムリンは、魔神たちのすり合わせの協議会のことをいう。
 僧正は魔神は何もしなくてもその力のため、良くも悪くも世界に影響を及ぼす。そのため彼は世界に何か変な影響が及んでいないかという少しのモヤッとした疑念を晴らすために、上条に異常探知役になれという。その代わり好きなように、悲劇がでないように願えばそれを魔「神」である彼が叶えるという条件を提示する。それに対して上条は自分が世界の良し悪しを判断して、改変する独裁者になるつもりはないと拒否する。
 オティヌスのときに決断したように、上条はたとえ現実が暴力・悲劇に満ち溢れていてそれを悲劇のない優しい世界に書き換えられるとしても、だれか一人の気分で壊される、あるいは一人の判断基準で幸・不幸、良し悪しが決定される世界を否定する。
 そして僧正はそれを受諾させようと彼に迫り、上条はそれから逃れるためにアクロバイク(という、アクロバットな動作が容易にできる機能のついた自転車)を使って逃げる。ここから近くにいた美琴を後ろに乗せて、学園都市をアクロバイクであちらこちらと逃げ回る逃走劇が始まる。
 表紙からはもっとデート回に近いような雰囲気なのかなと想像していたが、逃亡だったか。
 前回僧正らはアレイスターに弱体化させられていたということもあってか、オティヌス戦のようなむちゃくちゃさはなく、強力な魔術師とか聖人との戦いに近い雰囲気の戦いとなる。ただ無敵に近くて、美琴のレールガンや右方のフィアンマの攻撃などでも全くダメージを負う様子がないというように度外れの能力は持っているが。
 その逃亡中に右方のフィアンマ接触を受ける。彼に自分のところまでおびき寄せれば対処するといったので、上条はその地点まで行く。オティヌス相手に使われた『妖精化』の技法を使って、フィアンマは僧正と対峙し退治しようとしたが、一瞬で、戦闘シーンも描かれずに敗北して宙を待っていたのはさすがに笑う。上条が目的地について駆け抜けて、後方でで戦闘が始まるかと思ったら、一瞬の爆発音と共にフィアンマが宙を舞っている姿が見えるという、それなりに成算あって主人公の代わりに敵と立ち向かおうとしたかつての強敵がそのようなギャグめいたやられ方をすることになる。
 逃亡劇の際の被害で、ビルが倒壊するなどした。それに巻き込まれた少女秋川未絵は、母の作品である液体ダイヤを収められていた金庫が壊れてしまった。そして近くに火事場泥棒を狙う奴らが現れたこともあって、液体ダイヤが盗まれるのを防ぐために自分がそれを持って街中を逃亡することになる。こちらのもう一つの逃亡劇では、久しぶりの登場のキャラが幾人もチラリチラリではあるが登場していて、それはちょっとうれしいな。
 今回、美琴は上条当麻と過ごしたが、そこで彼の隣に立つためには今の自分では足りないと感じる。
 アレイスター、魔神となることをみずから拒んだ人間。
 ラストで対魔人に特化した能力を持つ少年上里翔流が登場してきた。しかしまた特殊な能力、上条のものと同じように発生した能力を持ったキャラが急に出てきたか。
 そして最後のシーン的に次回はそんな彼から上条はオティヌスを守る、ついでにそのことを警告しにきたネフテュスも守るという話になりそうだ。
 あとがきで『ラストで魔人戦が延々続くと思った人は手を挙げて!』(P338)といっているが、たしかに、これで対魔神の話が一区切りになるとは意外だわ。魔神はこれ以上ないくらいにインフレーションした存在だったからご退場するのはありがたいけど、そんな存在があっさりと消えたことにはちょっと拍子抜け。