ソードアート・オンライン 16

内容(「BOOK」データベースより)

黒神ベクタことガブリエル・ミラー率いる侵略軍50,000に対するは、整合騎士ベルクーリ率いる人界守備軍5,000。“天穿剣”ファナティオをはじめとする整合騎士は、数的劣勢を跳ね返すべく奮闘を続けるが、敵軍・山ゴブリン族は奸計を用いて防衛線をすり抜け、彼方の補給部隊を狙う。心神喪失状態のキリトを守る少女練士ロニエとティーゼに危機が迫る。更に、侵略軍一の奸智を誇る暗黒術師ギルド総長ディー・アイ・エルもまた、恐るべき大規模術式によって守備軍の殱滅を図っていた…。そしてアンダーワールドへログインしたアスナの行方は―!


 ちょっと久しぶりと思って前巻出たのはいつだったかを見たら、1年ぶりの新刊ということにちょっと驚き。
 今回ついに扉の天命が完全損耗し、整合騎士ら人界陣営と暗黒神ベクタ(ガブリエル)率いるダークテリトリー側との決戦がはじまる。まだキリトが復活しないこともあり、戦闘の様々な局面が描かれている。色んな整合騎士やダークテリトリー側の将を視点キャラとしていて、群像劇的に書いている。
 ジャイアントもゴブリンもオークも搭載されているフラクトライト(魂)は、本物の人間と変わらない存在であるアリスや故ユージオと同じだというのに、さまざまな苦難を背負わされて下の存在として扱われているのをみると、ラースはずいぶんと残酷な実験をしているものだなと改めて思う。
 戦闘シーンでは少数精鋭で鍛え上げられた存在である整合騎士が活躍している。
 それまで書かれていなかったダークテリトリー側の各種族の長の思惑というか、色々な考えが見られるのは面白いな。
 ベルクーリは巨大な剣気の消滅で、暗黒将軍シャスターが死んだことを察していた。そういうのを見るに、彼は想像以上に図抜けた能力を持っているようだな。
 オーガに『狼の頭を持つ戦士』(P149)という表現がされているが、この世界では狼がそういう外見をしているのか、それとも狼の頭が付いた被り物を戦装束にしているのかどっちだろう。冒頭のオーガ族隊に部隊の長のイラストが載っていないからちょっとよくわからん。
 ベクタに勝ってほしいわけではないけど、ダークテリトリー側の将の描写を見た後、ダークテリトリー側がここまで多大な損害を受けていると、もうちょっと彼らにも見せ場が欲しかったなという気持ちになる。まあ、ベクタがさっさと光の巫女(アリス)を獲得するために単純に数で責めていて、そうしたことに頓着していないというのもこうして損害が多くなっている理由だろうけど。
 しかし、それだけでなく攻勢を仕掛けているダークテリトリーが押し切れていない大きな要因ともなっているものには、暗黒術士たちのふがいなさがある。そして暗黒術士ギルドは戦力的にはかなり強力だと思うのけど活躍できていないのは、ギルド長ディーが功に焦りすぎているのもあるかもしれないけど偶然相手の対応策にピタリとは待ってしまったという側面も大きいので、ベクタどうこうの話ではないかもしれない。
 アスナはスーパーアカウントを使って、アンダーワールドに光臨。現在のアンダーワールドの状況はよくわからないまでも、その力を用いて、とりあえず両軍の間に大きな谷を作る。そしてそれによって作れた時間で現実世界のことなどの状況を、アリスなど人界の軍の人々に説明することができた。そしてそこで逆に暗黒神ベクタとして敵さんに現実世界の人間が既に来ていることを知り、またラース内に内通者がいることも発覚する。しかし現実世界に直ちに連絡手段現在なし。
 欧米の軍隊などで規定されている抗命権を行使できるように、間違っていると思ったならばそうした規則を破れるような人工フラクトライトを目標としていたということか。軍事利用にそんなところまで必要かと思っていたらそういうことだったのね。
 そしてアスナとアリス、そしてロニエさらには学院の先輩としてキリトと交流のあったソルティーナ・セルルトが、動けないキリトをはさんで彼との話を色々と語る。アリスやロニエがキリトを好いていることはわかっていたが、ソルティーナが来たのは当時から惹かれていたからなのか、面白そうだから混じったのかどちらだろう。キリトのテントの近くまで来ていたということは前者なのかなあ。
 敵方、一旦死に戻りしたヴァサゴはネットでリアルな戦闘ができるVRMMOのベータテストと称して、アメリカのVRMMOプレイヤーを集めて(下位サーバーレベルでは、ザ・シード規格に適合しているVRMMOであるため、そうしたことができる)ダークテリトリー側の戦力にしようとする。
 その思惑はラースは気づかなかったが、ユイが気づいてキリトやアスナの仲間たちにそのことを知らせて、彼らの協力を乞う。そしてユイから知らせを受けた直葉とシノンがそのことをラース六本木支部経由で菊岡に伝える。
 ユイ、ヴァサゴがとった方法と同じ方法では人数の差が生まれる。そのためVRMMOの仲間たちに自身が育てたキャラでコンバートしてほしいと述べてこの巻終わり。
 次回は敵・味方問わず、多数のVRMMOプレイヤーがアンダーワールドになだれ込むことになりそうだ。