ログ・ホライズン 10

内容(「BOOK」データベースより)

元の世界への帰還か?大地人の救命か?シロエが苦悩の果てに出した答えは!!

 リーゼはトップのクラスティが不慮の事故で不在となって、代理として組織を動かしていく中で、彼が作った組織の完成度の高さに驚嘆する。まあ、リーゼはまだ高校生なのだから、それがわかるだけでも優秀なのだが、現時点の自らの力不足を嘆く。色々見えているけど力が付いていかないということで、カラシンが彼女をシロエタイプ(五割凡人、四割秀才、一割やけくそ)と評するのもわかる。
 この世界になじめない望郷の思いが募る冒険者たち。彼らの不満、何が何でも帰りたい、帰れないとしてもという思いが、やけな行動をとらせるかもしれない。現在のままだと時間の経過と共にそうした暴発の危険性は高くなるという問題が、新たに眼前の問題として立ち現れてくる。
 生きていくには苦にならない能力があり、そして死なない。サバイバルに力を食わないことで、適応するものは帰れればいいな程度の思いにさせて、適用できなかったものは元の世界の友人・家族のもとへなんとしてでも帰りたいという強い思いを抱かせる。そうした意識の差が冒険者間の不和を生む種となりかけている。それによって時間制限が生まれる。その爆弾が爆発したら多くの人の心が、あるいはこの世界が大きく傷つけられる結果になるやも知れぬ。
 シロエの策でゾーンを誰にも所有できなくして、ゾーンの維持費がいらなくなったことで円卓会議の財政状況が良好になる。アインスはその策の成功で、それまでは円卓会議のギルドが金銭を持ち出していたが、それがなくなることで成功している冒険者とそれ以外の格差が広がって一層の不公平感がでることを懸念。
 90レベルでこの世界に来たものとそれ以外の格差、それはただの運みたいなものなのに、文字通り格の違いとして扱われる現実。90レベルが一番人が多く、それ以外のレベルだと、入れるパーティの数が少なくそうした点でも不自由で、不満なパーティでも我慢することになる。
そうした諸々の精神的負担が、この世界で成功している他の円卓会議のメンバーには見えていない。
 それに低レベルの人は高レベルの人よりも、プレイ時間少ないんだからこのゲーム上の友人も少ないだろうし、知識もない。それがこの世界、もう一つの現実、への早い適応を促す場合もあった(ミノリやトウヤなど)が、同時に知人の少なくそうしたしんどさのあるこの世界から一刻も早く抜け出て元の世界に戻りたいと考える人もまた多いだろうな。
 シロエはアインスの指摘を受けて、円卓会議を自治組織に留めて、統治機関に発展させなかったのは、そうしたのは冒険者の気質に合わないからだと思っていたが、責任を負いたくないという思いから生まれた自己欺瞞だったのではないかと煩悶する。
 ロエ2からのメッセージで、航界種には彼女らのような<監察者>と、典災という特殊なモンスターの身体を使ってあらわれる<採集者>がいて、両者とも共感子という資源を求めて送られている。共感子は人の感情の動きで生まれるから、典災はそれを得るために騒動を起こす。両者はこの世界に決めうちで来たとか、全くの偶然で巻き込まれたとかではなく、ある程度計算して資源がありそうな宇宙を目指して、期待して巻き込まれた。
 ミノリとの邂逅で冒険者たちがランク3以上の知性体であることを認めた。そして採集者(典災)はロエ2と同じように送り出されたが、ランク2の知性体で憑依したモンスターに引っ張られている。
 ここで彼女の筆によってSF的な話が語られるとともに、典災というモンスターがどこからきたかが明かされる。
 マイハマで大地人の騎士を鍛えたり、領主一家と付き合ったりしているアイザックのパートも面白い。全く違うタイプのカラシンとの掛け合いもいいし、マイハマの領主一家に彼らしい流儀で素のままで接して好感がもたれているという姿が見れるのもいい。
 シブヤの遺跡に陣取る典災を相手にレイド戦。当初は今後どうするかの迷いもあって、制裁を欠いた指揮になってしまい苦戦する。しかしヘンリエッタに活を入れられて、本領を発揮する。その本領発揮したシロエを見たリーゼは、同じタイプのシロエがはるかに先を行っていて、自分ができることがまだまだあると思い知らされる。だからこそ、まだまだ成長できるし、クラスティのようなタイプにはなれなくとも、そこまでいければという希望が生まれて気が軽くなる。
 シブヤの通信装置で、大陸にいるカナミのパーティーと通話が通じる。そこでの彼女との会話で過去に残してきたものをようやく吹っ切れた。そして彼女の夢、この世界と元の世界を行き来できるようにするという途方もない夢を語られて、その大きな目標の魅力に目を奪われる。そしてシロエもそれを目標として定めて、こうしてシロエは自分の納得できるゴールが定まる。
 web版を見ると次回はカナミらパーティーと、そこに転移させられた&クラスティの話なので、そして今回のラストあたりまでを書いてくれるかなと期待。
 巻末では、8名の登場人物(五十鈴、ルンデルハウス、カラシンアイザック、イセルス、ヘンリエッタ、リーゼ、櫛八玉)のとある一日のタイムスケジュールが書かれたものが載っているが、こうしたものは日々の暮らしを色々と想像できるからみているだけでなんか楽しい。