新約 とある魔術の禁書目録 14

内容(「BOOK」データベースより)

世界を何万回でも塵にすることができる真性の『魔神』達。そんな無敵の存在らを、一瞬で消し去る少年がいた。少年は『どこにでもいる平凡な高校生』にして、しかし同時に最大最悪の『理想送り』を右手に宿す存在。もう一人の『どこにでもいる平凡な男子高校生』上条当麻の『幻想殺し』と、表裏一体でもあった。少年二人は、学園都市の暗闇で対峙した。この勝負の鍵を握るのは、レイヴィニアとパトリシア、二人のバードウェイ姉妹で…!?極大のイレギュラー同士が、ついに激突する…!

 今回は本格的にバチバチやりあうというよりも、理想送り上里と幻想殺し上条の二人が相似形であることと、しかし「ヒーロー」としてはスタンスの違いがあることが描かれた回だったな。そしてその違いを明確にするためにバードウェイ姉妹のストーリーが組み込まれた感じで。
 細かいところだけど、オティヌスが『北欧の一角ベルギー』(P40)といっているのを見て意外に思ってwikiを開いたら、ベルギーは北欧に含まれていなかった。その後デンマークかどこかと間違えているのかと思ったら、「フライドポテト 世界遺産」でググッたらベルギーがでるのでそうしたことでもなさそう。うーん、作者が勘違いしているのかな。
 理想送り上里と幻想殺し上条が敵対するのかと思いきや、相手は相手でまた別の型のヒーローで全面的な敵対にはならずに終わる。今後も目的しだいで対立はありそうだが、根本的に道を違えるというのはなさそうだな。
 上里も上条と同じようにその腕の力で、多くの女子を救ってきて、彼に協力してくれる仲間の少女たちがいる。
 上里本人はヒーローではないと否定するだろうが、上条は絶対的にハッピーエンドになれる選択以外を否定するのに対して、現実的というかベターな選択を選ぶというところが違う。そうした点では上里が現実主義的なアンチ・ヒーローで、上条が理想主義の(つまり王道の)ヒーロー。
 しかし上条がまがいなりにも人を救ってきている上里を、小馬鹿にするように否定することには違和感を覚える。ヒーローの振る舞いをしないこと、完璧を目指さないことで1から10まで相手を否認するのにはちょっとひいてしまう。
 まあ、今更も今更な話かもしれないけど、個人的に絶対的に「正しい」ものしか許容されない価値観を息苦しく感じるから、完璧な正しさはないが悪くもない行為というか、とりあえず最低限の処置をしようという行為をすることさえを声を大にして否定する調子に、その臭いを強く感じてちょっと辟易してこんな愚にもつかぬ事を書いてしまった。
 「腕の力」によって周囲の人間が好意的になること。それについて両者は人の感情をどうこうしたくないというのは同じだと思うけど、上里は自分に向けられている女性陣の恋愛感情は腕のせいで歪められたものだから、そしてフェアでないからとその歪められたルールの結果を否定する。上条はそうだとしても彼女たちが今抱いている感情は本物で、その感情を自分が勝手に否定できないと現在・今後自分に向けられる恋愛感情を、たとえそれが歪められた結果のものであってもそれを肯定する。
 まあ、もしかしたらこうした考えは学園都市という色々なことが変えられる能力者がいて、そうした自分の運命を良いほうへと歪められるような能力(恩恵)による影響が現れる場所で生活する上条と、普通の世界で生活してそんな特殊な能力がない、あるいは見えない場所で生活していた上里の違いなのかもしれないな。
 漫画の「とある科学の超電磁砲」でも描かれていた上条の右腕を打ち破ったら、そこから竜のような存在が現れるというもの。今回再び言及されたということは、その能力についても近々説明されるのかしら。
 上里がラストでの木原(犬)、なんか大きな事を起こそうとしているアレイスター側のキャラを一人を泥臭い血みどろの戦いで容赦なく再起不能にしたようなのはいいね。
 しかし上里は、パワーインフレの極地というべき魔神たちを物語から排除するお役目も終わったし、オティヌスの件についてもある程度納得したようだが、今後登場することはあるのだろうか。
 それからアレイスターもずっと前から登場していた重要人物だから、彼が起こす騒動でこの物語も終わるのかな。それなら彼もそろそろ動き始めるようだし、終わりが見えてきたのかも。まあ、たとえそうだとしてもそれを延ばして、こっから際限なく続けられそうでもあるし、ローラ・スチュワートとか他の誰かがラスボスでアレイスターは別にラスボスでないかもしれないけどね。
 まあ、アレイスターが起こす事態は最初期から設定されていたであろうイベントだろうし、それを超えればそろそろ終わりが見えてくる……のかなぁ。