マージナル・オペレーション F

内容(「BOOK」データベースより)

ソフィアのために、タイに渡った梶田。彼は、ソフィアのために何か為すことはできたのか…。うまくいかない人生の一コマを切り取ったハードボイルド「マフィアの日」。“最初の二四人”の一人であるハサン。父・アラタとの出会いや、彼の目から見た父の姿が語られる独白録「父について」。ライトノベル作家と編集者が、総武線の車内で見かけた赤毛の少女。彼女に話しかけたことから、事態は思わぬ展開に…。『マージナル・オペレーション』誕生秘話「赤毛の君」。アメリカ人記者、イーヴァ・クロダ。“子供使い”新田良太にはじめて接触した西側ジャーナリストによる、貴重な取材記録「ミャンマー取材私記」。そして、安定したミャンマー戦線を離れ、バングラデシュに向かったアラタとジブリールの束の間の休息を描いた「チッタゴンにて」。あの大ヒットシリーズの未収録エピソードや、その後の物語を収めた待望の短編集が登場!


 短編集。本編主人公のアラタではなく、他のさまざまな脇役たちの視点で色々と語られているのが新鮮だし面白い。200ページ足らずで5話なので、さくさくと読み終えられた。
 「第一話 マフィアの日」冒頭でタイで生活するということは、暑さで消費カロリーも多いということもあって食べるのが大変とあったり、仏教に対する深い帰依などが色々タイについて語っているが、こうしたその国での生活や空気が伝わってくる描写はいいね。
 「第二話 父について」初めからアラタの下で戦っている子供たちの一人であるハサン視点での本編主人公アラタの話。アラタが来る前にアメリカに使われて戦っていた時の話が語られていたのも、ちょっと興味があったからよかった。アラタの見事な指揮に顔を合わせる前から慕われていた。実物を見たら、その姿がイメージと違って彼らは少しがっかりしたが、ジブリールとジニは違ったようだった。
 しかしジブリールはアラタに年齢2つ分、逆サバをよんだいたのか。
 「第三話 赤毛の君」第一章のマフィアさんもそうだけど、この章でも実在のライトノベル作家や編集者を登場させている。短編とはいえ語り手に据える(それも1冊に2編も)というのは、何か内輪ノリみたいで何か冷める。
 個人的に実在の人物が作品中にでてくると、あくまで物語でフィクションだと主張されているようで物語が純粋に楽しみづらくなるし、なんだか色々と物語のifとかこぼれ話とかを想像するのに制限がかけられるような感じを覚えるから苦手かな。
 「第四話 ミャンマー取材私記」ソフィの友人であるジャーナリストが子供使いへ取材のために会いに来る。あとがきを見ると、どうやら彼女は著者の別の作品のキャラクターのようだ。
 「第五話 チッタゴンにて」アラタとジブリールは、子供たちが戦場以外につける仕事を作るために、船の解体業を営もうかと二人で下調べに来る。これはアラタ視点、この短編が本編のどれくらい後なのかわからないが、ジブリールの誘惑に1、2年は自制心が持つだろうがと言っているのをみると、二人の中は進展(?)しているようだな。
 もっとずっと未来の話と言うか何年もたった後の話が見れたりするかなと、ちょっと期待していたけど、今巻はそうした話しはなし。あとがきで、『そのうち、アメリカと戦うアラタの話とかも書きたいと思ってるんですが、ものすごくアメリカが変化をしていて、ちょっと今はかけない状況です。』(P192)と書かれているのを見るに、そうした未来の話を見ることができたとしてもずっと後のことになりそうだ。