マージナル・オペレーション [F2]

内容(「BOOK」データベースより)

銃火が止み、子供たちは惑う―。本篇以降の時間軸に位置する書き下ろし4篇を収録した、待望の短編集第2弾!

 本編完結後の短編集第二弾。各話の間の幕間では、主に短編に関連する別の人視点の閑話が書かれる。
 1話と2話の後に書かれている短編(AFTER)で、不穏な様相の一続きのお話がある。今後この話の続きはどこかで書かれるのだと思うが、それは一巻完結の物語になるか、それとも新章突入に繋がるかどっちかな。まあ、どちらでもなくて本編後の話はほのめかされるけど、全体像は書かずにこうして断片的に本編終了後の話を見せていくのかもしれないけどさ。でも、構想があるのならば、どういう経緯や変化があったかというのを未来の一部(日常?)を切り取って見せる短編だけでなく、本編の続き・新しい本編として見ることができればいいな。
 「第一話 私のトリさん」本編終了から数年後の子供たちの一人、サキ視点の話。彼女は傭兵業を辞めて日本で高校生をやっているみたいだ。こうしたその後の物語、本編終了後のいい変化みたいなものが書かれている話が読みたかったので、そういうものがあってくれて嬉しい。
 『抜き身のナイフのような目に、暗い憎しみを湛えた女の人だった。皆この人のことを怖がっていた。私も怖い。トニーも可能な限り避けて通っていた。怖がってないのはトリさんだけだ。』(P29)サキは本編時代のジブリールのことをこのように評しているが、古参の子供たち以外にはジブリールがそのように見られていたのか、アラタ視点で語られる本編だけだと嫉妬する可愛い少女(ヒロイン)としか見えないので、そういう視点による見え方の違いがかかれると面白い。ただ、そういうのを読むとジブリールのことがなんだか心配になるわ。まあ、この短編時点では過去のことだから今更に過ぎる心配だけど。
 そして、この話の時点で『トリさんには三〇〇〇も四〇〇〇も子供がいる。今は学校に行っている子供だって一〇〇〇人はいるはずだ。』(P33)ということのようなので、アラタは目的を果たせているようでなによりだ。
 ラストは、サキは取り残されたように感じてちょっと悲しくなるという、ちょっと寂しさがある終わりだけど、些細なプレゼントを大事にしていることから、トリさん(アラタ)を本当に親のように慕っていることが感じられるので、いいね。
 そして「AFTER 02」一話直後の話、アラタ視点。目的である子供の国の形成を成功しているから今更自分を殺しても意味がないと思っているようだが、相変わらず自己評価低いな。たぶん内も外も、彼への求心力と信頼で持っている面が大きいから、早々に崩れそう。だから子供たちの安全もかかっていることを心得てくれよと思ってしまう。
 「第2話 新しい首輪」ホリー視点で、アラタとの関係について書かれた恋愛要素の強い短編。
 「第3話 若きイヌワシの悩み」古参であるイブンの話。細かいところは覚えていないけど、今回の1話よりは前で、本編よりもちょっと後くらいの話かな。一話の語り手であるサキとの会話のシーンもある。
 ハサンはロシアに飛行機のパイロットになるための勉強しに行く。
 イブンは「兄弟」が大人数になったこと、そして父(アラタ)に学校へ行くように勧められたことで距離が離れていくように感じていた。しかしアラタの前で泣き、そのことを吐露し、彼の思いを聞かされたことで落ち着いた。
 「特別編 子供使いの失踪」現代日本、徳島が舞台の短編。これが本編後何年経っているかはわからないが、ソフィが復帰しているのをみれたのはよかった。まあ、回復したのは純粋によかっただけど、戦場に再び立っていることはよかったといえるかは微妙だけどね(笑)。
 そして各短編の幕間にあるAFTERでもナミとイクオという新しい子供たちが登場しているが、彼ら加入の短編もいずれ書かれるのだろうけど、今はどういう経緯で加入したのかわからないから少しばかりもやもや。
 あとがきによれば、全部の短編が本編(5巻)よりも後の時間軸の話とのこと。