日本人の給与明細

内容(「BOOK」データベースより)

貧窮問答歌」を詠んだ万葉歌人山上憶良の年収は1400万円だった―!?古代から近世まで、米や土地などの値段を手がかりに、先人たちの給料を現代のお金に換算。ノンキャリア菅原道真、王朝のOL・紫式部、脱サラの兼好法師、戦国武将・岡左内財テク大田南畝の出張旅費など、いにしえのひとびとの生活を浮き彫りにする。古典資料を丁寧にひもとき、現代の私たちに通じる悲喜こもごもを、物価を軸に読み解く。


 米価換算で色々な時代のさまざまな物の値段が紹介されたエッセイ的な本。当然現代とは物の価値の相対的関係が異なるから参考程度だけど、やっぱり現在の円で換算してくれるのはわかりやすいからいいね。
 そしてこの種の値段の話は江戸時代の値段の話ならばそれなりにあるのだけど、それ以外の時代奈良時代平安時代みたいな時代の値段の話を書いてくれているのは珍しいし、そうした時代の色々なものの値段の話はほとんど知らないので面白かった。他にも鎌倉時代、室町・戦国時代と江戸時代の話もある。
 また、巻末に奈良時代平安時代、中世、江戸時代のそれぞれの物価表が置かれているのはありがたい。そして巻末だけでなく諸所で図(例えば「万葉家人の官位別給与一覧」や「遣唐使の出張旅費」など)が挿入されていたりするのも嬉しい。しかし安かったからkindleで買ったが、こうした物価表などがついてくるならば紙の本で買ったほうが、気軽に手繰れるから、そのほうが便利だったかもなとちょっと後悔。
 そして各時代ごとに数編にわかれていて、一編ごとに実際の人物や物語の人物などをピックアップしてその人の話をして、その人を例にとってある事柄にまつわる金の話がなされる。その話を通じて、さまざまなものの金額などが書かれている。そうしたある人物に焦点を当てて、その人と金についての話がされているが、そうした金の話は生活感もでるから、扱われている話が身近なものに感じられる。おかげで読みやすくて面白かった。
 『平安時代の強盗窃盗は、盗品の価格を布に換算して刑量を決定する。』調書で盗品の値段を銭・布に換算してくれていることで当時の物価がわかるというのは面白い。
 位(くらい)を買う。地方豪族などがひとまずの目標とした従五以下より低い外従五位下を買うとすると、一文=六十円とすると、約六千万から一億二千万の値段となる。官位を買うとなると裏の役得があるため、さらに高くなる。
 三条西実隆の1526年の収入の内訳の図を見ると荘園からの収入、座・渡り場よりの収入、アルバイト(古典の講義や、色んなものに字を書くこと)が三本柱の収入だったようだ。1537年に正二位内大臣で亡くなった彼でも相当アルバイトの比率が高いな。そして座・渡り場よりの収入というのが、かなりあったということは知らなかったのでちょっとそれについて興味がわく。あと、もっと低い位階の貴族たちは荘園もっと遠慮なく取られていただろうから、もっとアルバイト頼りだったろうなと感じる。
 同じ戦国時代の貴族山科時継はかつて十数カ国に五十箇所以上の荘園があったが、応仁の乱以後の侵略が激しく、荘園八箇所銭二十九貫文(約140万)の収入に。そのため調薬で収入を得ることになる。