魔法科高校の劣等生 19

内容(「BOOK」データベースより)

死体を操る魔法で自爆テロを敢行させるという残酷な計画を企てた魔法師・顧傑は、気配を消して日本に潜伏していた。この自爆テロ事件によって、世論が魔法師を糾弾しはじめ、人間主義の勢力が勢いづく中、十師族は黒幕の捜査を決める。十文字克人七草真由美一条将輝と協力して司波達也は顧傑の行方を探す。しかし、手掛かりを掴んだ達也の前に思わぬ敵が立ち塞がる。USNA軍。米軍最強の魔法師部隊スターズのナンバーツー、ベンジャミン・カノープス少佐も参戦するこの『顧傑』争奪戦は、思わぬかたちで達也を『激怒』させ…!


 今回で師族会議、対顧傑編も終わり。本編は250ページ程度で終わり、その後に「一条将輝転校日記」が80ページ程度ある。次回はついに本編ではスキップされていて、二年次の九校戦の短編集がでるということで楽しみ。そしてその次、『次章では達也たちも最終学年に進級します。『魔法科高校の劣等生』もいよいよクライマックスに突入です。』(P336)とのことなのでそれも楽しみだ。
 前回深雪たちが暴徒に囲まれていたところで終わっていたが、今回達也が深雪を助けにきた。そしてその事件の後処理で困ることならずに終わってよかった。
 東道青波という『かつての第四研のオーナーであり今は四葉家のスポンサー』(P82)であり、他のスポンサーもしている相当な大物が登場。黒幕にもなっても不思議でない立位置の魔法界の大立者だが、今後どう物語と絡んでくるのか気になる。
 エリカの兄である千葉寿和警部が顧傑にゾンビみたいになって操られて、達也は友人の兄に最終的に手を下すという役回りになってしまう。達也も対処に迷っていたので元に戻す術があるかもしれないと期待したのだけど、最終的にそのような結果となった。今までそうした味方側のネームドキャラが死亡したことは、別シリーズや過去の話としてならあっても現在の話としては(たぶん)なかったから、ちょっと驚いた。
 顧傑の死亡は確認したが、USNAの介入で死体も確保できなかった。そのようにUSNAが単なるやられ役ではなく描写されたことはよかった。
 しかしそのことで魔法師(十師族)で彼を捕らえるか始末することで、巷間の反魔法師の風潮を改めさせるという当初の目的を達成できずに終わる。そのためそうした世間の不安という漠然としたもの、目に見えないゆえに抗しがたい魔法師に対する不信感という強力なデメリットは持ち越される結果となった。
 藤林中尉は千葉警部の死によって、自責の念にかられ、そして自分が彼に好意を抱いていたことを知る。なにごともなければ直ぐ何かあったということはないにせよ、いずれ何かあっただろう二人がこういう形で関係が終わるのは切ないな。
 「一条将輝転校日記」日記形式でこの事件の最中に一高に通っていた一条の内面が綴られる。もっと大人な印象があったので、この日記に書かれている思っていた以上に歳相応な高校生らしい一条にちょっと和む。