本好きの下剋上 第二部 神殿の巫女見習い 3

内容(「BOOK」データベースより)

騎士団の前で強大な魔力を見せつけたことで、マインは貴族の間で注目を集めていた。だが、我関せずとばかりに、本を作る情熱は高まるばかり。より多くの人々に安価で本を届けられるよう、印刷技術を向上させていく。その結果、マインの利用価値を狙う者が出現。危険を察知した神官長は、彼女を神殿に匿うことにする。家族と離れた、マインの長い冬篭り生活が始まるのだった。誰もが本を読める世界へ―その始まりを告げる「金属活字」の完成。厳しい寒さを乗り越え生まれる、マイン一家の新しい「命」。春の訪れと共に、今後の未来を予見するビブリア・ファンタジー転換の章!書き下ろし番外編×2本収録!

 巻頭にあるエーレンフェストの地図は嬉しい。国境だけではなく、各領地の間にも門があるということはそれぞれの領地は壁かなにかで囲まれているのね。
 webではもっと先の話が書かれているので、ダームエルとマインとの関係もかつてそういえばこんな感じだったなあ。それから最近ジルヴェスターも苦労性じみているというか振り回される側のキャラになってしまったから、こうした自由奔放さというか子供っぽい面を見る機会が減っているのでちょっと懐かしさを感じる。そして今回ジルヴェスターのイラストが描かれたが、彼はこうした外見だったか。
 web版で読んでジルヴェスターについてその他にも色々と知っているということと、イラストも相まって、彼の今回の自由奔放な行動に微笑ましさが増す。
 そしてプロローグでの神官長フェルディナンドとカルステッドの会話は、フェルディナンドが昔からの馴染みであるカルステッドを信頼して、頼っているのを見ると、彼の滅多に見せない若者らしさみたいなものを感じてちょっとほっこりする。
 フェルディナンドがそれまでの境遇から大事にしているものを他人に見せないようにする癖がついているが、付き合いの長いカルステッドには彼がマインを気に入っていることを察して『偏屈で面倒なフェルディナンドに珍しく気に入った人間ができたのだ。変に指摘して距離を置かせることもあるまい。』(P15)と思っている。
 弱みを見せないようにこれまでの人生を歩んできた、処世術としてそうせずには生きられなかったフェルディナンドがマインにそれだけ入れ込んでいるのも珍しい。他に気に入っているだけでなく、他人が自分のような思いをさせたくないという気持ちもあるようだけど。
 プロローグはカルステッド視点ということもあって、フェルディナンドがマインについて話している姿がとても微笑ましく写る。
 側仕えのロジーナの成人式に、以前の世界の曲をプレゼントする。しかし楽譜を書くのにちまちまとやっていたら、神官長はその進行速度の遅さを面倒臭くなって、マインに歌わせて、直ぐに楽譜を楽器に合ったアレンジを含めて仕上げた。そのときに神官長がそれを弾いているのをみたいと茶目っ気でアニメソングをいれたら、後日真面目に聞かなければならない場でそれを爪弾く神官長を見るはめになり笑うのを我慢するはめになった。このアニメソングがなにかはわからないけど、アンパンマンとかドラえもんとかの曲を弾く神官長を想像すると確かに笑える、笑ってはいけない場所だと特にね。
 そして今回金属活字も完成する。しかししばらくはそれによって本を広めることについては、神官長のストップがかかる。
 今回は弟の誕生で本編終わる。しかしエピローグでは神官長のおかげでほとんど関わらずに済んでいた神殿長の黒い影が見えて、不穏な空気を残る。
 ダームエルの短編、既にこの時点でダームエルよりもマインの方が収入多かったのか。それは彼が罰で見習いにされたからそうなったのか、見習いに下げられる前のものよりも多かったかで世知辛さがかわるがどっちだろ。まあ、後者のような気がするが。
 次巻は二部の最終巻で、6月発売とのことで楽しみ。