本好きの下剋上 第四部貴族院の自称図書委員 1

 ネタバレあり。
 襲撃後の2年間の眠りから目覚めたローゼマイン。序盤では二年の月日での変化が書かれる。また色々と事情もあってその期間で弱った体を治す暇もなく貴族院に行くことになるので、その準備について書かれる。その後は貴族院でのことが書かれる。以前から神官長フェルディナンドに詰め込まれていたこともあって貴族院の勉強で困ることはなかったものの、眠っていた二年間で貴族の常識学習が進まなかったこともあり、また2年の眠りでもともと弱い身体が更に虚弱になっていた。そうした特異性もあってローゼマインは、貴族院で良くも悪くも目立ってしまう。今回は貴族院に入学ということで、多くの新しいローゼマイン付の側近キャラや貴族院の先生たちが登場する。
 プロローグで、ローゼマインは眠っていた間にブリギッテとダームエルの結婚の話が流れたことを伝えられる。そのことを彼女に伝えた神官長フェルディナンドは内心で『仮に、ダームエルがイルクナーへ行くことを決めていたら、彼には不慮の死が訪れただろう。情報漏れを確実に防ぐことが、下級貴族の命よりもえーレンフェストにとっては大事なのだ。』(P21)と思う。結局どうしようもならなかったということか。
 ローゼマインは貴族院に行くにあたって学生たちの成績を上げるようにと言われるが、その時フェルディナンドに子供部屋の話を聞く限り学生たちにやる気をださせるの得意であろうと言われるが、本を親しむ人が増えれば本も書く人も増えるかもと思ってやっただけと答える。その言葉はフェルディナンドにも予想外だったようで『……君の本にかける情熱を、私はまだ甘く見ていたようだ』(P56)と述べる。
 ヴィルフリートの教師役だったモーリッツ先生。子供部屋については覚書しか残していなかったから大変だったでしょうと労わると、最初は大変だったがそれで試行錯誤したことで自信がついたという返事をもらう。彼に限らず、結果としてローゼマインの二年間の不在は周囲のメンバーを成長させ、周囲の人々がローゼマインを理解し、またローゼマインがもたらした新しい物事を考えて消化することで土台ができた期間ともなったようだ。
 エーレンフェストの寮監のヒルシュール先生はエーレンフェスト出身のフェルディナンドの師匠で研究者。そしてローゼマインの魔力圧縮に興味を持った彼女に対して、ローゼマインが教えるのに色んな人の許可が必要と言うと『エーレンフェストの領主夫妻に許可をいただくのは簡単です。カルステッド様とエルヴィーラ様も色々と貸しがございますから、手ごわくても攻略はできるでしょう。後はどなたかしら?』(P243)と言っているので、そんなに貸しがあるということは優秀さでも弟子フェルナンドと似ているようだ。
 多くの側近を新しく増やしたが、有能だが熱烈なローゼマイン信者のハルトムートも側近となる。
 ヴィルフリートがローゼマインの本への執着を甘く見て、フェルディナンドのローゼマインは全ての試験を合格するまで図書館立ち入り禁止という言葉に、自分だけでなく一年生全員の合格と条件を付け加えたことで、一年生全員でローゼマインが図書館に入るために必死に勉強をしなくてはならなくなる。
 ローゼマインは貴族院で色々な意味で常識外れなことをしてしまい注目を集める。
 ヒルシュールから初日に全部合格というのはフェルディナンド以来流石愛弟子と呆れたように言われると、他領の生徒たちからフェルディナンドの色んな伝説が語られる。フェルディナンドが他領にも語り継がれるほど優秀で目立つ人物だったということがわかる。
 エピローグでエーレンフェストの領主ジルヴェスターでは寮監のヒルシュールから毎週来る報告で、ローゼマインが色々と目立ったことをしていることに頭を抱える。また起こす内容が突飛なのに報告が短すぎるため意味不明となっているので余計に困惑していた。フェルディナンドを呼んで何が起こっているのか解釈してもらおうとしていたら、彼はヴィルフリートからより細かな報告を貰っていたことがわかる。そのヴィルフリートの報告から詳細を知ってまた驚き、ジルヴェスターは貴族院が『まさか領地で待つ親にとってこれほどもどかしい気分になる場所だとは思わなかった。』(P375)と思う。
 「有意義な土の日」ローゼマインの騎士アンゲリカの妹で、自身もローゼマインの側近となったリーゼレータ視点の短編。側近同士で交わされている会話を見ることができる。
 勉強嫌いなアンゲリカではあるが、『座学が終わるまで護衛任務を禁じられたせいでしょうが、去年は多目的ホールコルネリウスに監視されている時しか勉強をしなかったお姉様が、今年は自室で自習する気になっているのです。』(P383)そのようになんだかんだでローゼマインを慕っていることがわかってほっこりする。
 「マインの目覚め」ローゼマイン(マイン)が目覚めたことを知った下町のマインの家族たちの短編。『今日は父さんの好きな鳥の酒蒸し?』(P402)とカミルが母に尋ねているが、父がその料理を好きな理由は今は家族として会えないマインが作ってくれた料理だからなんだろうなと思うと、父のマインへの思いが見えるようで心が温まる。