2017年に読んだ本のまとめ

2017年の読書メーター
読んだ本の数:70
読んだページ数:21961
ナイス数:1409

昆虫はもっとすごい (光文社新書)昆虫はもっとすごい (光文社新書)感想
鼎談。『最近の研究では、実は多くの昆虫が「声」でコミュニケーションを行っているということがわかってきました。』(N761)昆虫はフェロモンだけではなく、音でもコミュニケーションをとっている。『モスアイや翅の折りたたみ構造のように虫の生態から直接アイデアをもってくると、どうしても寿命が短いようです。基本的に、昆虫は何十年も生きることを前提とした仕組みを持っていません。ですから、昆虫の生態をそのまま実用化したところで、時間スケールが違い過ぎて耐久性がないんです。』(N1073)
読了日:12月31日 著者:丸山 宗利,養老 孟司,中瀬 悠太
理想のヒモ生活 10 (ヒーロー文庫)理想のヒモ生活 10 (ヒーロー文庫)感想
善治郎は再び双王国に向かう。そして前々から取り組んでいたビー玉の作成は、まだ不完全なものだが試作品ができる。フランチェスコ王子に『この一粒はかなり惜しいんですけどね』(P72)といわれたので、実用できるものができるまであと一歩。エピローグで善治郎は正式に公爵になることが決まり、それに伴って王配護衛騎士ナタリオが新設公爵家の騎士のトップとなる。大戦後騎士の出世機会がなかなかないので、ナタリオの家に『騎士達が押し寄せ、てんやわんやの騒ぎとなるのだが、それはまだ先の話である。』(P280)その話は面白そう。
読了日:12月31日 著者:渡辺 恒彦
アクセル・ワールド22 -絶焔の太陽神- (電撃文庫)アクセル・ワールド22 -絶焔の太陽神- (電撃文庫)感想
七王会議で前回ショコラ・パペッターが得た証拠を見せたことで、白の王の代理で来たアイボリー・タワーはその事実を平然と認める。そして会議参加者を無制限中立フィールドに転移させて、そこで白の王・加速研究会陣営の刺客たちとの戦闘になった。今後は白のレギオン・加速研究会対他のレギオンとなって最終決戦ということになりそうで楽しみ。
読了日:12月31日 著者:川原 礫
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」感想
今回から貴族院編ということで、新キャラも多く登場する。そしてローゼマインは貴族院でも良くも悪くも注目を集めることになる。「有意義な土の日」ローゼマインの騎士アンゲリカの妹で、自身もローゼマインの側近となったリーゼレータ視点の短編。あまり見ることのない側近同士の交流が見ることができて良かった。
読了日:12月31日 著者:香月美夜
ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)感想
フランス革命後の激動期に第一共和制でも、第一帝政でも、復古王政でも大臣を務めた政治家ジョセフ・フーシェについて書いた伝記小説。フーシェは大規模な諜報網を作って運用し、そうして得たさまざまな情報や秘密を力とした。『輝かしい栄光も人気というあやしげな幸福も、よろこんで彼は他人にくれてやる。情勢を達観し、人々を左右し、表面上の世界の指導者を実際においてあやつり、自分のからだは賭けないで、あらゆる博打のなかでも最高度の興奮を与えてくれる恐ろしい政治の博打を打つことで、彼は満足なのだ。』(P34)
読了日:11月30日 著者:シュテファン・ツワイク
聖家族(上) (新潮文庫)聖家族(上) (新潮文庫)感想
異界と縁深く、異能を持つ者も多い東北の旧家である狗塚家の物語。上巻の前半では歴代のばば様の物語を通じて狗塚家の歴史が語られる。後半では、天狗に武術を教わった狗塚牛一郎と羊二郎の兄弟はその武術を使って東北各地を暴れまわり、狗塚兄弟妹の両親である狗塚夫妻は東北各地でそれまで安定していた少し特殊な共同体を唆しをするなどして壊している。そのように後半では狗塚家の面々が東北各地を天災のように荒らしまわっているさまが書かれる。
読了日:11月30日 著者:古川 日出男
謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア (集英社文庫)謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア (集英社文庫)感想
現在ソマリアは大きく分けて南部ソマリアプントランドソマリランドに分かれている。南部ソマリアにあるソマリア共和国の首都モガディショは国際社会からの援助などもあり栄えてはいるが、戦乱が続いている。プントランドは氏族の連合体で海賊で世界を騒がせた。ソマリランドは高度な治安を維持し、氏族が大きな意味を持つソマリ人の社会に合った独自の見事な制度を作り運用している。他の地域では護衛の兵士が必要だったが、ソマリランドの首都ハルゲイサは『夜八時過ぎでも、私たち外国人が普通に街を歩くことができる。』(P50)
読了日:11月30日 著者:高野 秀行
雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)感想
高校野球を題材にした3つの短編が収録された短編集。「甲子園への道」スポーツ新聞社で働く新人記者泉が主人公の物語。泉は取材をして書いた記事がキャップに全面的に直されてへこんでいた。しかし記事で扱った選手である月谷からの言葉を聞いて、キャップが直した記事が選手の心に届いたことがわかる。それで自分を見つめ直して余計なものを洗い流して改めて頑張ろうという晴れやかな気持ちになる。月谷のキャラも良いし、そのように主人公が今まで抱え込んでいたものが最後にすっきりする終わりも好き。
読了日:11月26日 著者:須賀しのぶ
ハンザ「同盟」の歴史: 中世ヨーロッパの都市と商業 創元世界史ライブラリーハンザ「同盟」の歴史: 中世ヨーロッパの都市と商業 創元世界史ライブラリー感想
ハンザは共通の政治目的によってではなく、経済的動機から成立した都市連合。ハンザは14世紀後半に最盛期を迎えたが、15世紀には近世的中央集権国家を目指す努力が開始されたことで衰退していく。『経済的利益共通意識のみでむすばれたハンザは、周辺に中央集権国家が存在していなかった中世においてのみ存続しうる体制であった。』(N3598)しかし『ハンザは衰えてもハンブルクダンツィヒ等はかえって興隆期を迎えているのであり、滅亡に向かったのは都市でも貿易でもなく、都市連合勢力としてのハンザそのもの』(N3709)。
読了日:10月31日 著者:高橋 理
カンタベリー物語 (角川文庫)カンタベリー物語 (角川文庫)感想
抄訳。カンタベリー寺院に参詣する身分も職業も違う人々が、カンタベリーに向かう道中でそれぞれ話を披露する。その道中での各人が話す物語とその話を聴いた人々の反応が書かれる。語られる物語は世俗的な話、寝取られ話が多い印象。
読了日:10月29日 著者:チョーサー
オリエント急行の殺人 (クリスティー文庫)オリエント急行の殺人 (クリスティー文庫)感想
雪で停車中の列車の中で殺人事件が起こり、被害者はアームストロング誘拐事件の犯人だったことがわかる。外部犯の可能性はない状況だが、乗客の証言では関係のないような相手との間で不思議とアリバイが成立している。しかしポアロは次々と乗客たちが、アームストロング家の関係者であるということを明らかにしていく。そして全員が共犯だったという真相が明かされる。本当に全員が犯人という結末となった小説を読むのは初めてなので驚いた。
読了日:10月21日 著者:アガサ・クリスティー,山本 やよい
オーバーロード12 聖王国の聖騎士 上オーバーロード12 聖王国の聖騎士 上感想
冒頭で登場した聖王国屈指の戦士オルランドやパベル、そして聖王女など国家最高戦力があっさりと退場するのはこのシリーズらしい。亜人たちを支配するヤルダバオトデミウルゴス)によって聖王国は崩壊。そしてデミウルゴスの計画通りにアインズ魔導王自らが、聖王国救援を求めてきた使節団と共に聖王国に向かうことになる。ただデミウルゴスたちは細かなところはアインズ様が即興でやった方が良い展開になるだろうと指示してくれなかったので、アインズの心労が大きかったようだ。
読了日:10月15日 著者:丸山 くがね
アイデア大全アイデア大全感想
さまざまな発想法とそのやり方が簡潔に紹介されている。そのように一度に色々な発想法を知ることができるのはありがたい。各発想法でアイデアを出した例やレビューでのそれぞれの発想法に関する話を見るのも面白い。色々な試してみたい発想法や困ったときには使えるかもしれないと思う発想法を知ることができて良かった。
読了日:09月24日 著者:読書猿
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女V」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女V」感想
ハッセの新村長が貴族的言い回しを意味を理解せずに使っているので、今後のトラブル防止のために灰色神官を教師として派遣することになる。神殿や孤児院では毎日清められているので、彼ら基準では掃除の行き届いていない部屋に案内されて目を白黒させる。他にも食事の作法の違いなど、そうしたギャップに驚いている様が書かれている場面が好き。「お姉様の変わり」シャルロッテ視点、ローゼマインの代わりを務めてみて改めて色々とやっていたことの多さに気付いて驚く。こうした不在によってローゼマインの重要さや凄さがわかるという描写はいいね。
読了日:09月16日 著者:香月美夜
ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)感想
19世紀前半のアメリカ南部に奴隷として生まれ、長い苦しみの日々の末に北部へ逃れて自由となった女性の自伝。奴隷制度がもたらす歪みと悲劇が克明に描かれる。奴隷所有者が奴隷に子供を産ませるというのは珍しいことではなかった。そのため『奴隷制は、黒人だけでなく、白人にとっても災いなのだ。それは白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻を惨めにする。』(P84)奴隷制は奴隷身分の人々だけでなく、その支配者たちすら歪ませる。
読了日:09月16日 著者:ハリエット・アン ジェイコブズ
魔法科高校の劣等生(23) 孤立編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生(23) 孤立編 (電撃文庫)感想
USNAの宇宙開発計画、トーラス・シルバー(達也)に参加を求める。達也はこの計画は、脅威となる魔法師を宇宙鉱夫にして長年地球に戻って来させなくするための計画ではないかという懸念を抱く。そのため周囲が同盟国の計画に乗るように圧力をかけてくるが断る。それで十文字と対決することになる。そして懲りない情報部は達也襲撃計画を立てている。それに対する風間中佐と四葉家の対応で、達也と独立魔装大隊との蜜月は終わり、深雪は四葉家が達也を助けないならば常に達也が全力を出せるように彼に施されていた封印を解いた。
読了日:09月09日 著者:佐島 勤
シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)感想
中世に権威のある書物だった「太平記」の哲学。世の中を動かす人間の知恵や力量を超えた摂理である『因果律の存在と謙虚に向き合いつつ、しかし現実に対処するに際しては、人間の知恵がつくり上げてきた規範である儒教道徳に従うべし、というのが『太平記』の哲学ということになる。』(P58)南北朝期から行動は儒教道徳に基づき、内面では目にみえない摂理への敬虔な信仰から仏法に帰依するという行動様式が理想的なものとして考えられるようになる。当時そうした「太平記」にみられる思考様式は広く共有されていた。
読了日:08月26日 著者:神田 千里
紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)感想
短編集。「編・訳者あとがき」にファンタジィ篇とあるように、ファンタジー的な短編もある。収録作の中では、表題作にもなっている「紙の動物園」が一番好き。「紙の動物園」折り紙の動物に意志を持たせる母の魔法。母の死後に母が作った折り紙の動物が再び動いて、彼の前にきてその折り目をほどいて広がる。それに母の出生や息子への思いが綴られていた。親子が疎遠になった理由も母の手紙の内容も悲しい。
読了日:08月19日 著者:ケン リュウ
魔人執行官2 リベル・エンジェル (電撃文庫)魔人執行官2 リベル・エンジェル (電撃文庫)感想
今までにないNEOとフォーシアンの中間的存在となった山城大陸が登場。「あとがき」によると暁琉と花月に加えて山城大陸の『ヒーロー二人にヒロイン一人。シリーズの基本構造』(P298)がそれで、『今のところ、脇役を追加する予定しかありませんが。』(P299)とあるので主要登場人物は今回で出揃ったみたい。イリュージョナル・アーマーで衣服の外見を変えるのは『単にアーマーを製造しているワイジアンの趣味だ。ワイジアンの、高い知性を持っているにもかかわらず思考が子供っぽい側面は、こんなところにも表れている。』(P257)
読了日:08月19日 著者:佐島 勤
小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む (角川ソフィア文庫)小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む (角川ソフィア文庫)感想
東の飛び地を合わせて1万石の小松藩の領地、計15カ村と藩主の居宅である陣屋や武家屋敷を中心とした町がある。町は街道沿いに『地形のためか道の片側一列に並んで――もっとも軒を接してというほどではなく、まばらなもの(中略)商人の家々は東西に約二キロ続いていた。藩が「町」と称している小松藩内唯一の繁華街である。(中略)商人の「町」は家数二〇七軒、総人口は九〇八人(天保九年・一八三八調)』(N165)江戸中期の小松藩、武士約70人に足軽・下男約100人。家老は一人だけで禄高400石。町奉行や普請奉行は100石ほど。
読了日:08月12日 著者:増川 宏一,北村 六合光
バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)感想
著者はモーリタニアのバッタ研究所に滞在していた頃の色々な面白いエピソードが書かれている。とても楽しんでフィールドワークをしている様子が書かれていていいね。バッタが予想外に急にいなくなったため、ゴミムシダマシの研究をする。そこでゴミムシダマシを満腹にさせることで殺さずに雌雄の判定ができることを発見。その研究についてババ所長に話したら『バッタがいなくてさぞかしコータローが困っていると思っていたら、あっという間に論文のネタを仕上げたな。』(N1794)と笑いながら褒めてくれたというエピソードも好き。
読了日:07月30日 著者:前野 ウルド 浩太郎
わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)感想
ホテルの給仕だったヤンが、自身のことやホテルの客や同僚の話などを語る。『ありえそうにない小話や信じられないエピソードを連結して滔々と語っていく』(P251、解説)そうしたほどよく現実離れしたエピソードが多数記された物語は好みなので面白かった。ホテル・チホタの同僚ズデニェクの挿話はどれも好き。『ズデニェクはどうやって数千コルナを使うか十日のあいだずっと考え続けている』(P161)。夜、村の居酒屋に音楽家を呼び、村の人々に酒を奢って金を使い果たす。そして音楽が続く中で車でホテルに帰るというエピソードが好き。
読了日:07月29日 著者:ボフミル・フラバル
最弱球団 高橋ユニオンズ青春記最弱球団 高橋ユニオンズ青春記感想
1954-56年、パ・リーグ8球団時代の3年間だけ存在した高橋ユニオンズ大映スターズのオーナーでパ・リーグ総裁に就任した永田雅一セ・リーグに対抗するために8球団制にするとぶちあげる。永田から頼まれて高橋龍太郎は新球団を設立したが、約束されていた支援がなされかった。高橋龍太郎のポケットマネーで球団運営を行っていたユニオンズは資金難だったが、オーナーは足しげく球場に通うほどチームを愛していた。しかしパ・リーグ総裁永田は8球団制は失敗だったと球団数を6球団にすることに決めて、ユニオンズは消滅することになる。
読了日:07月29日 著者:長谷川晶一
異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)感想
「親子丼」普段は別行動だが、年に1回決まった日に異世界食堂で会うことを決めている家族の話。こうした異世界では遠い場所に居て普段会えないけど異世界食堂で会う話はいいね。「ポテトチップス」ジャガイモが異世界に渡った経緯や現在の異世界でのジャガイモの扱われ方が書かれていて面白かった。それからプロローグや巻末の番外編「あさごはん」での、現ネコヤ店主の祖母ヨミ(異世界出身)と祖父(初代店主)の昔話もいいね。
読了日:07月15日 著者:犬塚 惇平
十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)感想
12世紀に多数のギリシアやアラビアの学術書ラテン語に翻訳された。『ギリシア学術の一番いいものはローマへ入らなかったのです。ローマへは五パーセントぐらいしか行っていない』(N191)『ユークリッドの著作もほんのわずかしかラテン訳されていない。アルキメデスプトレマイオスにいたっては、その痕跡もない』(N1470)。ローマ崩壊で失われたのではなく、そもそも一級の学術書がローマに入らずラテン語訳もない。12世紀『西欧はアラビア、ビザンティンを介して、こういうギリシアの第一級の学術とはじめて出会う』(N205)
読了日:06月30日 著者:伊東俊太郎
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女IV」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女IV」感想
冒頭の下町パート、富裕な町人が住む街の北側のギルベルタ商会に移ることになったトゥーリに対して同じ下町から北に移ったルッツが、色々と必要なものを教える。ルッツが町の北の常識にも馴染んだことがわかるし、準備する必要がある物の多さにトゥーリと母エーファが驚いているのもいいね。
イルクナーでの滞在」イルクナーに滞在するルッツらの生活の様子、都市との違いについて語られる。店が一つもなく『旅商人が来た時はギーベが買い付けて、ギーベの館に保管される』(P367)という想像を超えるイルクナーの田舎度に驚く。
読了日:06月24日 著者:香月美夜
昆虫はすごい (光文社新書)昆虫はすごい (光文社新書)感想
『糞を食べる虫は自然界における重要な清掃者である。もしこれらがいなかったら、森や草原は哺乳類の糞だらけになってしまっているに違いない。/ 実際、オーストラリアに家畜が持ち込まれた時、オーストラリアには羊や牛などの糞に対応できる糞虫がおらず、糞がそのまま残り、数々の問題を引き起こした。結局、あちこちの国から糞虫が導入され、その問題は解決されたのである。』(N1177)仮定だけの話でなく、実際にそうなって困った実例が存在するというのが面白い。
読了日:06月24日 著者:丸山 宗利
絶対ナル孤独者4 ―刺撃者 The Stinger― (電撃文庫)絶対ナル孤独者4 ―刺撃者 The Stinger― (電撃文庫)感想
今回主人公たちが属するジェットアイの特課でも、ルビーアイの組織でもない、両勢力を襲う謎のルビーアイであるスティングが登場。スティングは4人のサードアイ保持者と渡り合えるほどのきわめて強力な能力を持ち、ラスボスになりそうな感じもするキャラ。小村スウは前回意識不明となったのでしばらく登場しないのかなと思っていたが、今回で意識を取り戻す。好きなキャラなので、長く登場しないということにならなくて安心した。
読了日:06月24日 著者:川原 礫
ネアンデルタール人は私たちと交配した (文春e-book)ネアンデルタール人は私たちと交配した (文春e-book)感想
デニソワ人は『ネアンデルタール人と祖先を共有する集団』(N5046)で、両者の違いはスウェーデン人の著者とアフリカ南部のサン人との違いと同程度。『デヴィッドとニックは(中略)、アフリカの外の人の、ゲノムの約2.5パーセントはネアンデルタール人由来で、パプア人はそれに加えて約4.8パーセントをデニソワ人から寄与されたと推定した。』(N5130)ネアンデルタール人の遺伝子を非アフリカ人は欧州人もアジア人も同程度に持ち、デニソワ人はパプア人とのつながりが特に深い。
読了日:05月31日 著者:スヴァンテ・ペーボ
ゴブリンスレイヤー5 (GA文庫)ゴブリンスレイヤー5 (GA文庫)感想
今回ゴブリンスレイヤーは、家から飛び出て冒険者になったばかりでゴブリン討伐中に行方不明となった令嬢剣士の捜索依頼を受ける。季節が冬ということで雪が積もる中での冒険となる。ゴブリンスレイヤーが小休止中に普段はずさぬ装具を外して手足を解すなどそうした季節ならではの描写があるのがいいね。追ってくるゴブリンたち相手に、退きながらゴブリンスレイヤーが次々と武器を取り替えながらの戦っているシーンが格好いい。
読了日:05月31日 著者:蝸牛 くも
1985年のクラッシュ・ギャルズ1985年のクラッシュ・ギャルズ感想
ファン(親衛隊)だった女性へのインタビューのパートでは、ファン視点から見たクラッシュ・ギャルズの輝きが語られる。そのパートがあることで、クラッシュ・ギャルズがどれだけ少女たちから熱烈に愛されていたのかというのがわかっていいね。プロレスの天才長与千種『惚れさせるような表情を作り、カメラのフレーミングを意識した上で手の位置を決めている。マイクアピールも立ち居振る舞いも、すべて計算しているんです。(中略)千種の計算高さは全員がわかっている。でも嫌いになれないんです。かっこよすぎて。』(N1736)
読了日:05月31日 著者:柳澤 健
日本人初 プロスマブラーの軌跡日本人初 プロスマブラーの軌跡感想
スマブラのガチ勢(競技プレイヤー)が行うスマブラのガチ対戦(真剣勝負)は、1対1のアイテムなしでの勝負でステージもある程度限定して行われる。著者が主にプレーするスマブラDXはネット対戦機能もなく、ガチ対戦にはブラウン管テレビを使う。しかし、DXはその『特徴としては、?操作の複雑化、?テクニックの大幅な増加、?ゲームスピード、ゲームテンポの高速化の3つが挙げられ、これはそのまま競技性を持たせやすい要因になっている。』(N214)そのような技術介入度の高さもあって、シリーズ最新作に負けない根強い人気を誇る。
読了日:05月31日 著者:aMSa
第四 若草物語 (角川文庫)第四 若草物語 (角川文庫)感想
シリーズ最終巻。前巻から10年後の話、プラムフィールドは大学となった。もうすぐ留学に行くナットや久しぶりにプラムフィールドに帰って来たダンの再度の出立前の、さよならパーティーやその準備でワァワァ楽しそうに騒いでいる描写がいいね。それとロブが弟のテッドを庇って犬は噛まれて、その時やその後の兄の冷静な振る舞いにテッドは感銘を受ける。この兄弟のちょっとした秘密と冒険といった感じのエピソード好きだな。それと第十四章のプラムフィールドの皆で、ジョーが書いた演劇をした話も好き。
読了日:04月30日 著者:L・M・オルコット,吉田 勝江
共産主義黒書〈ソ連篇〉 (ちくま学芸文庫)共産主義黒書〈ソ連篇〉 (ちくま学芸文庫)感想
クラーク(富農)撲滅作戦。貧しい農民が自分の作ったものを売ったことで商業に従事したとして逮捕され、他にも教会によく行っている、集団化に反対していたなどの理由で多くの裕福でもない人もクラークとして強制移住させられた。彼らを強制移住させて、天然資源に富んだ地域を開発させようとしたが人数があまりにも多かった(1930年末までに70万人超、翌年末までに180万人超)。そのため『強制移住者は予備の食料も用具もなしに、多くの場合には仮寝の小屋すらなしに、定住することを余儀なくされた。』(P308)
読了日:04月30日 著者:ステファヌ クルトワ,ニコラ ヴェルト
インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫)インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫)感想
苦行による強力な力。2章「第四話 海水を飲みほしたアガスティヤ仙」では悪魔たちが『学術と苦行(功徳)を積んだ者たちをまず第一に殺すべきである。全世界は苦行によって維持されているから、修行者たちを殺せば、世界は全滅するのだ。』(P100)と述べる。また『インドラをはじめとする神々が苦行を恐れ、天女その他の女性を派遣して苦行の妨害をするという話は枚挙にいとまがない。ヴィシュヴァーミトラの伝説や、前に紹介したダディーチャとアランブサーの話(九九頁参照)はその代表的な例』(P138)。
読了日:04月30日 著者:上村 勝彦
犯罪の大昭和史 戦前 (文春文庫)犯罪の大昭和史 戦前 (文春文庫)感想
昭和20年までの政治的・社会的な大事件について、事件ごとに10〜20ページほどで書かれたさまざまな媒体で発表された文章が収録。昭和1年「鬼熊事件」自殺前日に岩淵熊次郎(鬼熊)にインタビューをした東京日日新聞の坂本斉一記者が鬼熊事件について書いたものが収録されている。自殺する時まで一緒にいて、彼の死を確信して直ぐに特ダネを本社に速報した。
読了日:04月30日 著者:
FLESH & BLOOD5 (キャラ文庫)FLESH & BLOOD5 (キャラ文庫)感想
主教の毒殺犯と見られて獄中に放り込まれた海斗。ジェフリーは彼を助けるために奔走する。その際に出会ったロバート・セシルの知恵を借りて、海斗が罰当たりな疑問を口にしてそのショックで死亡したことにした後で、いまだに生きている聖職者規定(読み書きできる聖職者は一度は罪を許されるという規定。後に聖職者でなくても読み書きできる者は罪を許されるものになった)を持ち出したことで、海斗を自由の身にした。
読了日:03月31日 著者:松岡なつき
香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)感想
匂いによる感情の誘導など魅力的かつ魔術的な匂いの力が描かれていて面白い。主人公グルヌイユは生まれつき自分の匂いを持たないが極めて優れた嗅覚と匂いを記憶する能力を持ち、また匂いを頭の中で組み合わせて現実には存在しない匂いを生み出せる。地中の物は活気を失わせるという理論を信じるスピナス侯爵の前で、グルヌイユはめまいを起こした風を装う。そして侯爵がつけているスミレの香水はスミレの根を材料としていているせいだと言って、それを聞いたスピナス侯爵が自分の理論はやはり正しかったと喜んでいるシーンが好き。
読了日:03月31日 著者:パトリック ジュースキント
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」感想
エピローグで、神官長の側仕えであるエックハルト視点で、神官長はローゼマインの引き起こす厄介事を面倒だといいながらもローゼマインに常にないくらいに気を使っていることが書かれる。そしてフェルディナントの肖像画エックハルトとユストクスという神官長の側近の二人もしっかり全種類購入していたのね。巻末短編の「神殿長の専属」ローゼマイン関係の仕事でベンノが裏で面倒な調整などをやっていることがわかる話。そうしたベンノの仕事の一端を見ることができて面白かった。
読了日:03月31日 著者:香月美夜
「月給100円サラリーマン」の時代: 戦前日本の〈普通〉の生活 (ちくま文庫)「月給100円サラリーマン」の時代: 戦前日本の〈普通〉の生活 (ちくま文庫)感想
戦前の日常的な物事を見ることで、人々が良くも悪くも現代とあまり変わらないことがわかる。『昭和ヒトケタから昭和三十年代なかごろまでの日本人の基本的ライフスタイルはほぼ同じだったといってよい。(中略)戦後の日常生活面だけをみれば、終戦で変わった部分より、マンションやマイカーの普及、スーパーマーケットの登場など高度成長期に起きた変化の方がずっと大きかった。』(P14-5)『昭和初期の約十年間の物価を現在と比較する場合「およそ二千倍」』(P19)そう書かれたことで戦前の物の値段のイメージがぐっとしやすくなった。
読了日:03月31日 著者:岩瀬 彰
悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門 (幻冬舎新書)悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門 (幻冬舎新書)感想
瞑想など『仏教の実践をやるのであれば、「自分がどこにいて、これからどのような道を通って、どういう目的地を目指していくか」という「地図」のイメージをしっかり持っておかなくてはならない』(N633)。自分の資質や目的に合わせて実践方法を選ぶことが大事。向かない瞑想法が結果として『よい結果をもたらすこともないとは言えません。ただ、中には明らかなノイローゼや、抑うつ状態に陥っているのに、それでも根性で向かない瞑想法を続けてしまって、どつぼにはまる人もいる。』(N685)
読了日:02月28日 著者:プラユキ・ナラテボー,魚川祐司
その後の慶喜: 大正まで生きた将軍 (ちくま文庫)その後の慶喜: 大正まで生きた将軍 (ちくま文庫)感想
32歳で最高権力者の座から降りた慶喜の大正二年に亡くなるまでの長い後半生が書かれる。明治期の慶喜のお目付け役であった勝海舟大久保一翁は、慶喜に長年強く自戒を求めていた。そのため慶喜からの信頼が厚い渋沢栄一慶喜を押し込める勝のことを快く思っていなかった。それもあって「昔夢会筆記」で慶喜は『他人をそれほど批判的な口調で評してはいない』のだが、勝と大久保一翁『この両人に対しては、めずらしくかなり辛口の批判が下されている。それゆえ、逆にここから慶喜の両人に寄せる思いのほどがうかがわれるのである。』(P151)
読了日:02月28日 著者:家近 良樹
望郷の歌―石光真清の手記 3  (中公文庫 (い16-3))望郷の歌―石光真清の手記 3 (中公文庫 (い16-3))感想
日露戦争に従軍して、日露戦争後には何度も満州渡航して、その地で仕事をしようとしては失敗するという失意の日々を送ることになる。その後東京世田谷村で郵便局長をすることになる。そのことでようやく生活も気持ちも落ち着き、穏やかな日常を得ることができた。そして明治天皇と叔父の死で明治が終わったところでこの巻も終わる。
読了日:02月28日 著者:石光 真清
ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル (電撃文庫)ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル (電撃文庫)感想
今巻はアリスが現実世界に行ってから少し経った後の話。ロニエ視点。謎めいた殺人事件が起きたために、キリトはイスカーンに非公式に会いに行くことになり、ロニエもそれに同行する。二人は暗黒界の城下町に一泊することになるが、そこで暗黒界の市井の日常を少し見ることができるのはいいね。あとがきによると、次回はこの陰謀の黒幕と対決する予定とのことなので、本編後のこの世界の話をまだ見ることができるのは嬉しい。
読了日:02月28日 著者:川原 礫
第三 若草物語 (角川文庫)第三 若草物語 (角川文庫)感想
今回は四姉妹とローリーではなく、ジョーとベア先生の夫妻が運営する教育の場であるプラムフィールドとそこの子供たちが主役。プラムフィールドは、大きな家族のような雰囲気で楽しそうなのがいいね。ナットが他の子供たちが何かしら生き物を飼っているが、自分はお金もないから無理そうだと悲しむ。その姿を見たトミー・バングスは自分が飼っている鶏の卵を探してくれれば1ダースにつき1個あげる、12個あればベア奥さんが買ってくれるからそれで買えばいいと提案したエピソード、好きだな。
読了日:01月31日 著者:L・M・オルコット,吉田 勝江
ゴブリンスレイヤー4 ドラマCD付き限定特装版 (GA文庫)ゴブリンスレイヤー4 ドラマCD付き限定特装版 (GA文庫)感想
今回は短編集ということで、主人公以外の色々なキャラクター視点での話があって面白い。「第1章『新米戦士と見習い聖女のお話』」新米冒険者たちの楽ではない生活の様子を見ることができる短編。悪臭のついた装備を土に埋めて消臭を試みるとか、そうした冒険者としての工夫・豆知識がいいね。「第6章『悪魔に見せられし魔宮の滅亡するお話』」重戦士、槍使い、ゴブリンスレイヤーの男三人で冒険したときの話。敵を落下ダメージで倒していくのが面白い。
読了日:01月31日 著者:蝸牛くも

読書メーター

読メの年間まとめに反映されていない本もあるので簡易まとめ。
1月 2冊
ゴブリンスレイヤー4 ドラマCD付き限定特装版」
「第三 若草物語
2月 4冊
ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル」
「望郷の歌―石光真清の手記 3」
「その後の慶喜: 大正まで生きた将軍」
「悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門」
3月 9冊
魔法科高校の劣等生(21)」
「「月給100円サラリーマン」の時代: 戦前日本の〈普通〉の生活」
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」」
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVI ―ワン・サマー・デイ―」
「香水―ある人殺しの物語」
「FLESH & BLOOD5」
「いまさら翼といわれても」
白河法皇 中世をひらいた帝王」
「往生要集を読む」
4月 5冊
幼女戦記 (1) Deus lo vult」
「犯罪の大昭和史 戦前」
インド神話マハーバーラタの神々」
共産主義黒書〈ソ連篇〉」
「第四 若草物語
5月 6冊
「詩という仕事について」
「魔人執行官 インスタント・ウィッチ」
「日本人初 プロスマブラーの軌跡」
「1985年のクラッシュ・ギャルズ
ゴブリンスレイヤー5」
ネアンデルタール人は私たちと交配した」
6月 10冊
絶対ナル孤独者4 ―刺撃者 The Stinger―」
「昆虫はすごい」
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女IV」」
魔法科高校の劣等生(22) 動乱の序章編〈下〉」
「十二世紀ルネサンス
「甲子園への遺言」
理想のヒモ生活 9」
「メジャーリーガーの女房」
「記憶喪失になったぼくが見た世界」
ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」
7月 7冊(内1冊再読)
異世界食堂 4」
「最弱球団 高橋ユニオンズ青春記」
「わたしは英国王に給仕した」
「中世の村のかたちと暮らし」
「バッタを倒しにアフリカへ」
「増補版 江戸藩邸物語」
「日本仏教史―思想史としてのアプローチ」(再読)
8月 6冊
「小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む」
「魔人執行官2 リベル・エンジェル」
「紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)」
「シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』」
「新版 百人一首
アメリ南部連合史」
9月 9冊
魔法科高校の劣等生(23) 孤立編」
ある奴隷少女に起こった出来事
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女V」」
幼女戦記 (2) Plus Ultra」
「アイデア大全」
プロ野球・二軍の謎」
ソードアート・オンライン20 ムーン・クレイドル」
ゴブリンスレイヤー6 ドラマCD付き限定特装版」
「ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語」
10月 4冊
オーバーロード12 聖王国の聖騎士 上」
オリエント急行の殺人」
カンタベリー物語」
「ハンザ「同盟」の歴史: 中世ヨーロッパの都」
11月 4冊
「雲は湧き、光あふれて 」
「謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア
「聖家族(上)」
「ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像」
12月 4冊
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」」
アクセル・ワールド22 -絶焔の太陽神-」
理想のヒモ生活 10」
「昆虫はもっとすごい」


1月 2冊
2月 4冊
3月 9冊
4月 5冊
5月 6冊
6月 10冊
7月 7冊(内1冊再読)
8月 6冊
9月 9冊
10月 4冊
11月 4冊
12月 4冊