魔法科高校の劣等生SS

内容(「BOOK」データベースより)

二〇九六年度『全国魔法科高校親善魔法競技大会』。司波達也が、魔法兵器『パラサイドール』運用試験計画を阻止すべく『裏』で行動を起こしていた頃。『表』側では、魔法科高校生たちの熱戦が繰り広げられていた。モノリス・コードの選手・吉田幹比古のエピソード『竜神の虜』。新競技ロアー・アンド・ガンナーの選手・エイミィのエピソード『ショットガン!』。アイス・ピラーズ・ブレイクの選手・雫と花音のエピソード『一人でできるのに』。黒羽姉弟のエピソード『目立とうミッション』。そして、レオとエリカのエピソード『薔薇の誘惑』。書きおろしを含む連作短編集、登場!


 短編集。達也たちが二年のときの九校戦にまつわる話が収録されている。あとがきを読むと、本編で二年の九校戦をやっていたのが13巻のときで2年前だそう。そして確かその頃から短編で雑誌に掲載すると聞いて、短編集として出るのを待っていたが案外時間がかかったな。年月的にはそれほどでもないのだが、その間に本編がずいぶんと巻を重ねているからそういう印象がある。
 「龍神の虜」幹比古が「神童」と呼ばれるほど才能があったのに二科生で入学することになった原因の出来事が語られる。何かがあって魔法を上手く使えないようになったということは、最初から書かれていたので具体的なことは明かされていなかったので、ついにその出来事の詳細が見れたのはちょっと嬉しい。
 喚起魔法で竜神という強大な精霊と繋がった時に限界のスピードで魔法式を作らされたから、それで感覚がおかしくなったということのようだ。そして前年の九校戦で達也がアレンジした魔法式でそのとき以上のスピード、本当の限界のスピードを経験したことで、錯覚から逃れられたということのようだ。
 前回の九校戦は思っていた以上に幹比古にとって転機となった出来事だったようだ。
 たしか前年の一条・吉祥寺らの三高チームとの対戦の最後での、このままでは全部達也のおかげになってしまう。だが、それに甘えることは矜持が許さないと意地を見せていたと思う。
 その箇所を以前読んだときは確かに達也のおかげもあるけど、全部というのはずいぶんいうな、チームメンバーとしてしっかり仕事をしているのに、自分の役割を小さく見積もりすぎではと思ったものだ。しかしそうした事情を聞くと、彼にとっては確かな実感から出た言葉だったのかもと今更ながら思った。
 「ショットガン!」明智エイミィが主役の話。達也は彼女が代表となった新競技に参考の吉祥寺が得意とするインビジブル・ブリットを使用することを提案。実際の競技でアレンジを加えたインビジブル・ブリットが使われているのを見た、吉祥寺はショックを受けて、優勝確実と目されていたその種目で優勝を逃す。
 「一人でできるのに」雫と花音がコンビを組んでのアイス・ピラーズ・ブレイクの話。吉祥寺の策は次善に見抜かれ既にそのときのための魔法まで用意されて、その策を用いて直ぐに三高があっさりと負けた。そうして再び吉祥寺はがっくりすることになる。
 今回の短編集では吉祥寺がやられ役となっていてかわいそうだな。同年代では達也についで頭が切れるキャラである吉祥寺の想像を上回って、彼を驚かせることで、達也のアイデアを凄いと思わせられるというのはわかるけどね。
 「目立とうミッション」黒羽の双子が主役の短編。四葉当主の真夜から四葉家の分家に黒羽がいるという真偽不詳の噂を立て、そして二人の活躍を見せて、司馬兄妹への注目をそらさせよという使命を受ける。
 そしてそのミッションの一環で、四高の先輩から達也を紹介してもらい初対面と装う。そのとき四高の先輩は達也を特別ハンサムでないが、その落ち着いたたたずまいが格好良いとの評価をしている。達也はイラストは普通に格好良いから顔は普通といわれても、そう? と思っていたけど、この情報を聞いて、ようやくそう思えばいいのだという納得する落としどころを見つけたような気がする(笑)。
 「薔薇の誘惑」レオとエリカの話。実は二人の祖父が親しい関係だったことが明かされる。レオの祖父はローゼン家が作った調整体魔法師で、エリカの祖父はローゼン家からレオの祖父と共に出奔した人物。
 第一世代の調整体魔法師の性能を受け継ぐレオをなんとか手に入れようとするローゼン家の悪だくみにレオ・エリカのコンビが対峙することになる。
 エリカの祖父がレオの祖父とともにリスクを犯してローゼン家から出奔したのに、あたかもローゼン家がレオの祖父を他国に移してやったという風に事実と逆のことをいけしゃあしゃあといって、恩を売ろうとしているのはいらっとする。しかしレオはそんな言葉に全くなびかないのでよかった。