フランケンシュタイン

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

天才科学者フランケンシュタインは生命の秘密を探り当て、ついに人造人間を生み出すことに成功する。しかし誕生した生物は、その醜悪な姿のためフランケンシュタインに見捨てられる。やがて知性と感情を獲得した「怪物」は、人間の理解と愛を求めるが、拒絶され疎外されて…。若き女性作家が書いた最も哀切な“怪奇小説”。


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 北極点に向かう途上でウォルトン氏は姉宛てに書いている半ば日記に近い手紙を書いている。そしてその手紙の中に、北極の海で割れた氷に乗って犬橇と一緒に漂流してきた謎の人物(フランケンシュタイン博士)が語る、彼自身が作った化け物とそいつとの因縁で個々まで来たという話を書き留めているという体裁の小説。
 かつての自分のように知識と英知を求めるウォルトンに対する戒めとして自身の体験を語る。こんなに饒舌に語るということは、誰かに話したいという思いがまったくなかったわけでもないだろうが。
 フランケンシュタイン氏は少年時代はとうに廃れた錬金術などを私的に熱心に勉強していた。そして彼は大学に入って科学のさまざまなことを学び、わずかな年月で一流の科学者となる。そして彼は生命の秘密を解き明かし、生命を作ることを思いつく。そしてフランケンシュタイン氏は実際に「化け物」(今日、俗にフランケンシュタインと呼ばれているもの)を創造することになる。
 実際に作っている間、彼は大いなる熱意でもってその仕事に取り掛かっていた。しかし実際にその化け物に生命が宿って、その者が実を震えさせると、急にそのことが恐ろしくなり、その部屋から逃げ出した。そして再び部屋に戻るとその化け物はいなくなっていた。
 また、彼はその人造人間の容貌を美しく創ったはずだったが動き出そうとするその姿を見ると醜く見えた
 その自らのしでかしたことの重大さに怯えるフランケンシュタインは、幼馴染で親友のクラーヴァルのおかげで元気を取り戻した。しかしその後、父からの手紙で幼い弟が殺されたことを伝えられる。そして実家へと帰り、家に戻る前に弟が死んだ場所に寄った。するとフランケンシュタインの視界にあの化け物の姿が映る。瞬間、奴が弟を殺したと思い、自身が作った化け物が災厄をもたらしていると思い、頭の中は絶望と後悔が一杯となった。
 そして弟殺しの件で女中のジュスティーヌが犯人とされていた。フランケンシュタイン氏は裁判では彼女を弁護は熱心にしたが、真実を明かしても信じてもらえるかわからないし、また自分の罪を告白する勇気をだせなかったので化け物について話すことができなかった。そして結局彼女は処刑されてしまう。
 その後フランケンシュタイン氏に怪物が接触してくる。創造主であるフランケンシュタイン氏にすら悪意と憎悪を向けられる怪物だが、そのことに激せず、その者は願いがあることとそれをかなえてくれれば、自分に酷い目に合わしてきた人間たちに危害を加えることもしないと約束する、だからまず自分の話を聞いてくれと落ち着かせようとする。そして化け物はフランケンシュタイン博士に創造された後に誰もいない部屋から出て行って以来どう過ごしてきたかが、悪意のない人造の生命体である彼がいかに怖れられ迫害されたかが語られる。
 ある一家の日常を長い間秘かに見て、彼らの話している姿や外国人である新妻に文字や言葉を教えているのを聞きながら、彼もまた言葉を習得する。それによって服のポケットに会った神束に、フランケンシュタインが自分を作った記録が書かれているのを発見し、それを読み、その行為のおぞましさに震えることになった。
 化け物が秘かに見る間に大きな好意を抱いていたその一家と付き合いたいと思い、彼らの前に姿を現した。やはり化け物だとして、理想的な温かい家庭であるその一家からも攻撃、拒絶されてしまう。
 おぞましい方法で醜い自分を創っておきながら、放っておいた創造主へは憎しみしかない、『しかし哀れみをかけて助けてくれるとすれば、おまえしかいない。人間の衣をきたやつらにまともな扱いを受けることを期待して、それを果たせなかったのだから、おまえにはきちんとした扱いを要求しようと思ったのだ。』
 そして自分の伴侶となる生き物を作ってくれ、そうすれば俺はもう二度と人間の前に姿を現さない。そう怪物は自らの要求を伝えた。
 それをフランケンシュタイン博士は迷った末に受け入れる。それが人類に対しても、こいつに対してもいいことだと思ってそう決断する。弟を殺した相手だが、それまでの同情を引く身の上話でうまく要求を通したな。
 要求を受諾したが心は重く、中々再び怪物を作る作業に手をつけず、外国でその作業を行うことになる。しかしそれを喜ばしげに監視するその化け物の姿を見て、もしその二人の化け物が子孫を産んで、未来永劫化け物が存在し人類の重荷になったらという考えが頭をよぎり、作成途中の化け物を壊す。そして怒る化け物に、もうおまえのような化け物は作らないと述べる。それで化け物は創造主である彼に対する復讐の怪物となる。
 そして彼の手にかかり、幼馴染の親友が殺され、その後に彼の両親に引き取られて兄妹のように育った婚約者は婚姻の当日に殺された。そして彼の父もそのショックで死ぬことになる。
 これで化け物の影響で自分以外の家族(幼い弟、女中、幼馴染の親友、彼の両親に引き取られて兄妹のように育った婚約者、父)が死んでしまった。
 そうして相手に対する強烈な憎悪と狂気で強く結び付けられた二人。フランケンシュタイン氏は化け物を追いかけ、彼への強い憎しみ・復讐心で生きて、そして化け物は彼を挑発して追いかけ続けさせながら醜い体のみ作り、あとは何一つ与えなかった創造主に対して与える悪意と嘲笑によって生きているという状態になる。その互いへの悪意による追いかけっこを続けていて、そして現在の北極までくることになった。
 もう互いにもう他に何も希望が残っていないので、ただその空疎な目的により生きている。そしてフランケンシュタインが死亡し、それを見に化け物が来た。そして化け物はフランケンシュタインは何も与えてくれなかったために、自分は彼から全てを奪った。しかし全てが終わったことで、生来の悪ではないこの醜い人造人間は自分の犯してきた罪業を悲しむ。しかし彼の罪を非難するウォルトン氏に、俺だけが何故そういわれるのだと悲痛な叫びを口にする。
 そして彼はウォルトン氏に極北でこの身を焼き尽くし灰となって散ると述べて、北極の奥地へと姿を消す。北極で薪があって彼を燃やすだけの火がつけられるのかとも思うが、それは野暮か。ひょっとしたらもってきていたかもしれんし。
 化け物は醜い外貌で身体能力は高いが、感受性や心は人間そのままであり、人間から拒絶され、そして伴侶がほしいという願いも創造主に拒絶され、希望を失い、創造主への復讐の道へと突き進む。そしてその全てが終わると、もっと善いものになりえたのに、多くの罪を重ねたことの虚しさが去来し、もう何も希望も目的もない彼はそのまま死に場所を探しに行く。