完訳 ギリシア・ローマ神話 上

完訳 ギリシア・ローマ神話 上 (角川文庫)

完訳 ギリシア・ローマ神話 上 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

すべての大いなる物語は、ここに通じる―。西欧文化の源流である、さまざまな神話や伝説。現代に息づくその精神の真髄を平易な訳で、親しみやすく紹介する。ヘラクレスって誰?アポローンって何の神さま?などなど今さら聞けない神話の成り立ちから、人間味溢れるオリュンポスの神々の恋や嫉妬、名誉をかけた戦いまで、めくるめく壮大な物語がぎっしりとつまった、人類の遺産。


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 多くの文学作品でギリシアローマ神話の人物やエピソードが比喩やモチーフとして使用される。そうしたギリシアローマ神話の中でも『文学に関係の深い神話を選』び、そうした挿話をまとめて紹介した本。多くの挿話が書かれているが、その挿話の後には、実際に文学に使用されているという実例として、その神話上の挿話が使用されている詩も引用して紹介している。
 今までギリシア神話のエピソードは一つ一つのエピソードとして知っているものはそれなりにあったが、こうしてギリシア神話のエピソードをまとめて読むと、このエピソードとこのエピソードとはつながりがあったんだとか、こういう一続きの流れがあったんだとかがわかって面白い。
 例えば触れるもの全てを黄金に還る能力を得たミダース王、その能力を消してもらったのちにパーンとアポローンの音楽対決があって、アポローン勝利に異議を唱えたミダースの耳がロバの耳にされて、王様の耳はロバの耳の神話に繋がる。
 ディオニューソスに触れるものを全て黄金に変化させる能力を願ったミダース王。食べ物や飲み物も黄金に変わるので、ディオニューソスに再び頼んでその能力を消してもらった。そのことがあってから田舎に遁世したミダースは、山野の神パーンの崇拝者となった。そしてパーンとアポローンとの音楽対決、トモーロスが審判役だったがパーンも居合わせた。そしてトモーロスがアポローンに軍配を上げて、その判定に皆納得したが、ミダースは異議を唱える。『そこでアポローンは、こんなふらちな耳にこれ以上人間の耳の形をさせておいてはいけないと考えて』ミダースの耳をロバの耳へと変化させた。
 そしてミダース王の父がゴルディアースの結び目のゴルディアース。「ゴルディアースの結び目」には、その結び目を解いたものがアジア全土の王になるという言い伝えがあり、アレクサンドロス大王はその結び目を剣で断ち切ったという有名な逸話がある。
 ギリシア神話のクロノスと同一視されたローマの神サトゥルヌス。クロノスに自分の子供たちを呑み込んで、ゼウスによってその兄弟姉妹は解放されたという神話があるのを知っていた。しかしクロノスとサトゥルヌスという言葉を同じものだと認識していなかったので、ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」がその神話の絵だということがこれを読んでようやくわかった。
 オイディプスの物語の後に、残されたテーバイでは彼の息子による争いがもとで「テーバイを攻める七将軍」という神話が続く。 自分の出生を知らなかったオイディプスが、父を殺し母を娶って子をなしたが、その後その出生を知って彼は自分の眼を抜き放浪することになる。残された王国ではオイディプスの息子の兄弟エテオクレースとポリュケイネースが、1年おきにテーバイを治めることになったが、1年後にエテオクレースは王位を譲らなかった。そのためポリュケイネースはアルゴスの王のもとへ逃げ、王の娘を妻として、そして王は彼に軍隊を貸し与えて、彼はテーバイを実力で取ろうとする。その話が「テーバイを攻める七将軍」名前だけは聞いたことがあったけど、この話はオイディプス王の後にくる話だとは知らなかった。