完訳 完訳 ギリシア・ローマ神話 下

完訳 ギリシア・ローマ神話〈下〉 (角川文庫)

完訳 ギリシア・ローマ神話〈下〉 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

すべての大いなる物語は、ここに通じる―。西欧文化の源流である、さまざまな神話や伝説。現代に息づくその精神の真髄を平易な訳で、親しみやすく紹介する。ヘラクレスって誰?アポローンって何の神さま?などなど今さら聞けない神話の成り立ちから、人間味溢れるオリュンポスの神々の恋や嫉妬、名誉をかけた戦いまで、めくるめく壮大な物語がぎっしりとつまった、人類の遺産。


 kindleで読了。
 下巻の前半部はトロイア戦争オデュッセウスの冒険の話がなされた後に、トロイア戦争で敗れたトロイアの英雄アイネイアースがローマにやってくるまでの旅路の話(彼はのちのローマ建国の祖になる)が紹介されている。読んだことがないけど、この前半部はホメロスイーリアス」「オデュッセイア」と、ウェルギリウス「アエネイース」の物語の筋をコンパクトにまとめたというものなのかな? そして後半部はギリシア・ローマ以外の、そしてアブラハムの宗教以外の、世界各地の神話・宗教について簡易な説明と挿話の紹介がされる。その中で北欧神話は複数の章を割いて紹介している。下巻では色々な違う地域の神話や宗教などについての説明もあるということで、雑多な印象。原題は「伝説の時代」とのことなので、それで色々と紹介されているのかなと納得した。
 トロイア戦争の話ではその戦争の全体的な流れが手際よく説明される。そしてオデュッセウスの話ではトロイア戦争後に長きに渡って色々な苦難にあって帰郷が叶わなかった。その英雄オデュッセウスの帰路でのさまざまな冒険譚が手短に語られる。
 そうした筋を頭に入れておくとホメロスの有名な長編二作を読む際にもわかりやすいと思うので、それらを読むときには一旦その部分をざっと読み返したり、読んでいる途中にこれで確認しようかな。そうしたこれを確認すれば良いというものがあることを知っていれば、ホメロスの作品に取り組もうという気になるな。
 アテーナー、ヘーラー、アプロディーテーの誰が一番美しいかを争い、神々がその判断を下したがらなかったので、その審判者として連れてこられた美しい羊飼いパリス。三女神はそれぞれ彼に自分が一番美しいとすれば、これこれの褒美をあげようという。最終的に彼は人間で一番美しい女性を彼の妻としてくれると約束してくれたアポロディテーを一番美しいと述べた。
 そしてパリスはスパルタ王メネラーオスの妃だったヘレネーを誘惑し、駆け落ちして妻とした。羊飼いパリスは不吉な予言で卑しい境遇で育てられていたが、トロイア王の子だったということで、トロイア王は彼をかくまっていると思われた。そのためこの事件に怒ったギリシア勢が攻めてきて、トロイア戦争が始まる。
 三女神が誰が一番美しいかで争うというエピソードは知っていたけれど、それがトロイア戦争の発端であるとは認識していなかったが、そうだったのか。そのように知っていたエピソードが別の有名な物語の一部だったり関連があるということがわかることは面白い。
 著者であるブルフィンチがこの本を書いた時には、シュリーマンはまだトロイアの遺跡を発見しておらず、その16年後に発見されたのか。シュリーマンも有名だけど読んでいないから、そろそろ読もうかしら。
 オデュッセウスは英語でユリシーズ。有名な世界文学に「ユリシーズ」という小説があるが、そのタイトルは英雄オデュッセウスからとっているのね。そしてwikiみたら物語の構造も、ホメロスオデュッセウス」と対応させていると書いてあってちょっと興味引かれる。
 またエーリュシオンは死後の楽園あるいは大洋の西にある幸福な国だが、「パリの『シャンゼリゼー』は『エーリュシオンの野』という意味」。
 北欧神話。最初に霧の世界があって、まず雲から霧の巨人ユミルとその子孫、そして牝牛のアウスラムが生まれた。そして巨人は牝牛の父から栄養を取って、牝牛は氷の下や塩をなめて栄養をとっていた。『ある日、塩がっこびりついている岩をなめていると、初めに人間の髪の毛が表れてきました。二日目には頭が表れ、三日目には美しく、きびきびとして、たくましい体がすっかり現れたのです。この新しい生き物は、神様でした。そしてこの神様と、その妻となった巨人族の娘との間にオージン(「オーディン」ともいう)、ウィリ、ウェーの三人の兄弟が生まれました。』そしてその三兄弟が巨人ユミルを殺して大地や海や木を作った。神の前に巨人や牝牛が登場する神話というのも斬新というか、聞いたことがなかったので驚いた。
 そしてロキは元は巨人族だったが神々の仲間入りした神。
 ソール(トール)と巨人族とさまざまな種目で闘うが、トールが勝てなかったという話。巨人が凄いのか、北欧神話はトールのような名前を聞いたことのあるメジャーな神でもそれほど力がないのかと思っていたら、最後に実は巨人たちが幻術でトールが巨人と競走しているように思わせて、さまざまな概念とがっぷり四つで闘っていたから勝てなかったということがわかるというこの挿話の驚かせ方はいいな。トールがたいしたことがないと思わせて、最後に彼は槌で大きく地形を変えて窪地を作り、「火」との大食いでいい勝負をして、角杯の中の酒を飲み干せるかという勝負で飲んでいたのは実は海で、彼が飲んだために海の水位が下がったということが説明されることでトール神凄いなと最後になるこの挿話は好きだな。