開高健電子全集14 オーパ!/オーパ、オーパ!!

内容紹介

釣り紀行文の傑作『オーパ!』『オーパオーパ!!』(アラスカ篇/カリフォルニア・カナダ篇)

“何事であれ、ブラジルでは驚いたり感嘆したりするとき、「オーパ!」という”――体長5メートル、体重200キロにも達する世界最大の淡水魚ピラルク、 そして黄金色の魚体からエルドラド(黄金郷)に由来する名前を持ち、同時にその獰猛さから“河の虎”の異名を持つドラドを釣り上げることを目的に、アマゾ ン川流域1万6000キロを約2ヵ月かけて釣り歩いた旅の記録『オーパ!』。
釣師・開高健が自らの“引退試合”として臨んだ『オーパオーパ!!』シリーズの中からベーリング海の巨大な怪物オヒョウに挑んだ『アラスカ篇/海よ、巨大な怪物よ』、ブラックバス、ストライパー、チョウザメなどを釣り歩きながらも貧果に終わった『カリフォルニア・カナダ篇/扁舟にて』を収録。

【収録数】 7本 付録:『オーパ!』幻の取材メモの写真など10点
(amazon より)


 釣りの話とその土地土地の人々や釣り人との交流などが書かれた釣り紀行文。アマゾンでの釣りを描いた「オーパ!」と、「オーパオーパ!!」のアラスカ篇、カリフォルニア・カナダ篇を収録。
 釣りはしたことがないが、面白く読める。魚についての色々な話も知らないことばかりなので面白いし、釣った魚の味の話も日本で見たり食べたりする機会のない魚ばかりなので興味深い。
 大変だったこととかも色々と書きながらも、この釣りの旅を楽しんでいるのが伝わってきていいね。そして釣りをしているから、自然描写が多くあってその土地土地のことが伝わってくるのもいいね。そして食事描写も美味しそうで良い。特に「オーパオーパ!!」では料理人随行ということでなおさら。
 「オーパ!」
 カンジェロは『血のにおいがあろうとなかろうと、魚だろうと、猿だろうと、人間だろうと』食いついてくる。そうして傷つき、血が流れるとピラニアがよってくる。ピラニヤは血がなければとはいうが、そんな魚もいるのか。しかも同じアマゾンに! ただ、カンジェロはいない場所もあるが、ピラニヤは『アマゾン水域だけでなく、はるか遠い大湿原のパラグァイ河水域にもうじゃうじゃいて、およそ釣りをした日でピラニヤを釣らないというのは一日もなかったし、そんなことはそうぞうすることもできない。この猛魚は神のごとく、空気のごとく、水のごとく偏在する。』そんな何処にでも多くいるのか。
 『ふつう川というものは魚のいる場所といない場所が切れたり、つながったりして流れていくものである。日本の川なら瀬にはアユやハヤ、淵にはコイ、ワンドにはフナというぐあいにそれぞれの魚の縄張りがあり、それぞれの居住区をつなぐ部分は通路にはなるけれど居住区ではないからマグレでないかぎり魚は釣れない。』しかしピラニヤだけは水面をたたけば何処にでも集まってくる。こうした話を聞くと改めてピラニヤって特殊な魚だなという思いを強くする。
 亀の甲羅は水中にあるときは柔らかいといって、弓矢を空に放って放物線を描いて落下した先が甲羅の真上で、そうして上から刺すのを外すことなくやるという名人技は凄いわ。小説にでてきたら創作と思われて、事実とは思われなさそうな話だ。
 『またまた釣師の時制である。過去と未来があって現在がないのだ』過去と未来に威勢のいい話があって、去年はよかったのだが今年は〜などといって、現在が絶好の機会と言うことはない。なるほど、面白いような。
 ブラジルの首都ブラジリア、以前から首都は海岸に近いリオ・デ・ジャネイロではなく、中央高原のどこかにという思考と希求があったが、1956年に当時の大統領が決断を下して首都とするために荒地に現代都市ブラジリアを作る。そして4年後の1960年に完成した。ブラジリアは近年に(といっても半世紀以上前だが)、1から作った都市だったのか。
 1メートル以上あるミミズなど想像つかない事象が色々とでてくるので、ブラジルの壮大さというか世界の広さ・不思議さみたいなものを改めて感じさせてくれる。
 ブラジルの食物とかを一つずつ感想を書いているところでアボカドやマテ茶やアサイーと言った、今は日本でも入手容易になったものがあるのを見て、時代を感じる。
 著者はカフェインにアレルギーがあって、カフェインを摂取すると頭痛や吐き気に襲われるというが、ブラジルのコーヒーだと不思議といたくならなかったので流石本場は違うと思っていたら、いい豆は輸出されるから二等、三等の豆を使っていたり、更に混ぜ物を使っていることもあるからそれで飲めたという話はくすりとくる。
 日本だと川魚は一部を除いて泥臭いというイメージあるが、アマゾンの魚はどれも美味。ピラニヤも美味。何の留保もなく美味と書いてあるので、ちょっと食べてみたくなる。
 最後の数ページでさらっと書かれている、牛を丸々一頭の焼きにして日本人会の人と食べて、それに取材にきたと言う話など、もうちょっと詳しく知りたいと思う話が色々とある。
 「オーパオーパ!!」
 アラスカ篇では谷口先生という料理人についてきてもらって食事をもらっていたようだが、料理・食材に対する著者の説明や感想と「教授の採点」が面白い。
 『ブラック・バス……逸品である。皮にちょっと特殊な匂いとホロにがさがあるので、ていねいに剥いでしまわないといけない。しかし、三枚におろしたその白い肉はよくしまりほどよい淡白な脂がいきわたり、いうことなしである。』特定外来で釣りの目当てにされる魚という印象しかなかったが味はいいのか。
 巻末には雑誌のインタビューなどが載っているが、話し言葉で聞くと著者の印象も変わるな。
 最後の解説というか、歿後著者の記念館ができたときの「オーパ!」の編集だった人のあいさつが載っている。それを見て開高健がルアーフィッシングとキャッチ&リリースを日本で広めた人だと知る。