ゴブリンスレイヤー 3

内容(「BOOK」データベースより)

秋、辺境の街は収穫祭を間近に控えていた。そんな中、神殿の仕事で忙しそうな女神官、ある出来事で拗ねる妖精弓手、祭の準備に参加する鉱人道士、蜥蝪僧侶と、それぞれの日常を過ごす冒険者たち。そしてゴブリンスレイヤーもまた“日常”を過ごしていたのだが…。依頼の減るゴブリン退治、現れる三人の来訪者、祭の裏で暗躍する計画とは!?「素人め、教育してやる」蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第3弾!


 ネタバレあり。
 受付嬢と牛飼娘に誘われて収穫祭で遊ぶことになったゴブリンスレイヤー。普段冒険をともにする女神官や妖精弓手に比べて登場する機会が少ない、ゴブリンスレイヤーに好意を寄せる二人のことがメインに書かれる回。
 ゴブリンスレイヤーが女騎士と会話していた姿を見て、武具店の工房の親方が『しっかしお前さん、五年かかってようやっと馴染んできたなあ』(P76)とからかいながらも、彼が馴染んだことに喜びや安心もこもっている言葉をかけているのがいいね。
 『大路を走り回る子供たちは、きっと今から小遣いの使い道を考えているだろう。/ もちろん、その拙い計画は出店の玩具を前にたやすく崩壊してしまうのだが……。』(P88)こうした祭りの前日の町の描写は、人々がその祭りに向けてわくわくしている感じが伝わってきていいね。
 ゴブリンスレイヤーがオーガすらよくわかっていないというのは驚き。いくらゴブリンばかりに目がいっていても、他の怪物の情報をよくしらないというのは今更ながら彼の危うさを感じる。
 妖精弓手は、ゴブリンスレイヤーに手伝いを頼むかもしれないといわれて、その報酬代わりにゴブリン絡み以外の冒険を一回する約束をする。もちろん、いつものゴブリン相手にえぐい戦術で終わらせる彼の活躍も楽しいけど、そうして引っ張り出されて、珍しくゴブリン以外の冒険をしている彼がどうなるのかもちょっと見てみたいな。
 幼馴染の牛飼娘と十年ぶりに祭りで遊ぶ。ゴブリンスレイヤーが彼女を喜ばそうと、昔好きだった銀に見える素材でできた安物の指輪を買ってきたシーンは微笑ましい。それから酒場でやっていた一定距離から銀玉をなげて目標の像の中に入れると一杯もらえる。彼がその遊びをやって、牛飼娘が『小さいころから得意だったもんね、これ』(P145)といって、彼女が昔のことを少し思い出しているのもいいね。
 いつでもゴブリンの脅威を忘れられないゴブリンスレイヤー。ゴブリンがいないか注意していることを見てとった受付嬢は、それを咎めずに、天灯を見るにもちょうどよいギルド庁舎の見張り塔に案内したときにそのこともいって、安心しましたと聞くなんて、できた人でいい人だな。
 ゴブリンスレイヤーは祭りの前のゴブリン討伐でのゴブリン達の姿に違和感を覚えていたこともあって、襲撃に備えていろいろと準備していた。そのおかげとパーティーの仲間の協力もあって、ゴブリンとそれを操るものを街に入れずに打倒することに成功した。
 矢避けの加護を持った今回のボスに武具店で購入した南洋式の投げナイフが、あくまで「剣」だとその親方が語っていたように、遠距離武器だが剣扱いとなるのでそれで倒せた。そのルール上「矢」ではないから通るというのもゴブリンスレイヤーらしい攻撃でいいね。
 あとがきによると、次回はゴブリンスレイヤー以外の人々が主役となる短編集で、その他に槍使いや重戦士とともに塔に登るゴブリンスレイヤーの短編もあるようなので、楽しみ。