オーバーロード 11

オーバーロード11 山小人の工匠

オーバーロード11 山小人の工匠

内容(「BOOK」データベースより)

アウラとシャルティアを従えたアインズが足を踏み入れたドワーフの国ではクアゴアなる亜人種族の侵攻が迫りつつあった。ルーン工匠を魔導国に引き入れることを交換条件にアインズはドワーフの王都を奪還する約束をする。そこで待ち受けていたのは最強の種族、フロスト・ドラゴン。未知なる世界に偉大なる魔導国の威光が次々に刻まれていく―。


 ネタバレあり。
 今巻はドワーフやクアゴア、フロスト・ドラゴンといったファンタジーの種族の視点で、そうした種族の独特な風習や社会のありかたなどがしっかりと描かれているのが好き。リザードマン編でも思ったけど、そうした社会の習慣や種族の特色を書くの上手くて面白いからいいね。
 冒頭でドワーフが会社のように鉱山に行っているとか、彼らは地下で生活しているから空気を汚す薪などは使わずに熱鉱石という叩くと熱くなる石を燃料などとして使っているというのも生活感が出ていていいね。
 アインズはユグドラシルではなかった効果の武器がこの世界にあり、ドワーフはルーンでの武具作成という特殊技能を持っていることがわかった。ドワーフのことを知ったアインズはドワーフを手に入れて技術の開発をしてもらおうと思う。そのためドワーフが自分のように考えた他のプレイヤーと接触している可能性も考慮に入れて、ドワーフの国へ外交団を出して確認するとともに、プレイヤーが攻撃してきたらそれを名目に攻め落とすことも考える。しかし、まずはプレイヤーがいるかの確認、ルーンとその来歴の調査、彼らの鍛冶技術や鉱物の知識を調べるというのを目的にした。
 アインズはシャルティアとアウラを供として、またドワーフの国に行ったことがあるリザードマンのゼンベルを案内役としてドワーフの国に赴く。シャルティアは以前に操られたとはいえ主にそむいたという失態を晴らす舞台がなかなか巡ってこなかったので、今回の任務に強い意気込みがある。
 2章の扉絵のアインズを見て驚いて良いリアクションをしているドワーフ(ゴンド・ファイアビアド)のイラストは好き。
 ドワーフの国に行く途中で一旦ナザリック地下大墳墓に戻るのではなく、かつての冒険のことを想起させるこうした旅路でそうやって戻るのは乗り気にならず、第十位階魔法<要塞創造>で塔を作って、そこで宿泊する。夜を前にするたびにそうして塔を作っているが、この魔法は時間で消えるのかそれとも消えないのか、ちょっと気になる。まあ、消えなくともアインズ本人しか塔の扉を開けないのだから、そこを悪用される心配はないようだから、その点は安心だけど。
 アインズお目当てのルーン工匠は、同品質の物を作るのに魔法で付与したほうが短く作れるので、ドワーフの国では独自の技能であるがすたれ気味。しかしアインズはユグドラシルでない技術ということもあるから欲しい、それにすたれ気味の技能であれば安く買えるだろうと皮算用
 ルーンに熱い思いを抱く権度はルーン工匠を高く買って庇護してくれると言っているアインズの傘下に入ることを喜んで受け入れる。
 以前の失態の恥を拭おうと張り切っているシャルティアが、色々と考えて行動して、活躍しているのがいいね。彼女の成長が見て取れる。
 ドワーフとクアゴアは敵対している。ドワーフの土地へクアゴアがちょうど侵攻しているときだったので、アインズはドワーフに手を貸してクアゴアを撃退することで、スムーズに目的のルーン技能を手に入れるようとする。
 その協力として、攻撃しているクアゴア側にデスナイトをけしかけた。クアゴアからの視点で彼らを蹂躙するデスナイトという大きな脅威を橋を落とすことで難を逃れたことが書かれるが、そのなんとか凌いだという感じの戦闘シーンもいいね。デスナイトは橋を落としたことでの落下死したのだが、アインズはその可能性に気付かずに、敵に強者がいる、プレイヤーかもしれないと警戒を強める。アウラはそれに気付いたが、そのことを伝えようとしたときに静かにというジェスチャをされたので、アインズ様はシャルティアの緊張感を緩めないないためにわざとそれを言わなかったのだと理解したということに笑った。こうした勘違いは悪くない。
 それとアインズのザリュース評価が徹頭徹尾レアリザードマンの夫・父としての評価であることに笑う。
 アインズが、かつては花形だったが現在は落ち目となっているルーン工匠たちに、ルーンの意匠がついたユグドラシルの武器を見せて、彼らに火をつけるシーンが好き。実際にはルーンの意匠だけで、ルーン工匠がしているの違う方法で作られたものなので、そのルーンが効力の有無は不明だが(もしかしたら、この異世界に転移したことでルーンとして機能しているかもしれないので)、ともかくルーンはここまでやれるという到達点を見せてやる気を出させているのはいいね。
 かつてのドワーフ国の首都で現在クアゴアとフロストドラゴンの一家が居住する都市を制圧して、それをドワーフたちに渡すことで、全てのルーン技術者をすんなり貰いうけ、そしてドワーフ国を友好国にすることで、複数のプレイヤーが徒党を組んで攻撃されないようにすることを目論む。
 ひきこもりで学究肌のフロストドラゴンであるヘジンマール。アインズにあっさり殺されようとしたところを、びびりな性質で彼の恐怖を感じて、即座に服従することを決意する。その危機察知能力は見事。
 ヘジンマールの太り気味な身体を見たアインズは、それは種族としての特性かと聞いて、それにヘジンマールは自分だけと恥ずかしがりながら答える。それにアインズはレアかとちょっと喜んでいるのが面白い。
 アインズが歯向かってきたフロストドラゴンを<心臓掌握>で一撃で倒す。最強のドラゴンがそれで倒されて、他のドラゴンが一気に保身に走り、アインズがヘジンマールの母は誰かと聞いたとき実の母以外の二匹のドラゴンも私が母だと言っているのはコミカルで面白い。ところで、アインズが<心臓掌握>でドラゴンを倒したのは素材をとるためなのかな。
 そしてほとんど問答無用で種族の過半数をひき潰されたクアゴア哀れ。
 アインズはルーン工匠の送別のための式典を開催してほしいと提案する。それを提案した理由が、想像以上に王都奪還が早く済んでしまったから、帝国の属国化の申し出をどうするかというプランをアルベドたちに考えてもらうために時間を稼ぐ必要があるから帰らないための理由が欲しいから。
 盛大な送別会が催されて、羨望の眼を浴びて出立する。そのことをルーン工匠たちがとても喜んでいるのがいいね。
 エピローグを見るとカルネ村にドワーフたちを移動させたようだ。しかしカルネ村は着々と他種族混生の地となっているな。
 次回はデミウルゴス主催のイベントということみたいなので、いったいどうなるのか恐ろしくもあり楽しみでもある。