本好きの下剋上 第三部 領主の養女2

内容(「BOOK」データベースより)

領主の養女となり、神殿長に就任したローゼマインは、慣れない権力者としての立場に翻弄されていた。収穫祭へ向けた準備、新しい孤児たちの面倒、近隣の町からの不満等、立場を手にしたことで課題が増えていく。おまけに、神官長フェルディナンドは常に厳しい。それでも、ローゼマインは諦めない!下町の家族や仲間との再会に励まされ、図書室での束の間の読書で元気満タン!そして、年に一度訪れる「シュツェーリアの夜」に、薬の素材採取へ向かうが…。過去最大のアクションが待ち受けるビブリア・ファンタジー!神殿長はつらいよ!?書き下ろし番外編2本+椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

 プロローグでの母エーファとの久しぶりに言葉を交わす。家族として言葉を交わすことはできなくとも、表情やルッツとの会話などでローゼマインが変わっていないことがわかって安心しているのがいいね。
 ハッセの小神殿回りの話は、常識を知らないことから生じた重い話。ハッセの町長の常識と貴族の常識や貴族の常識とローゼマインの常識の違い。事の大きさとやらなければならないことの苛烈さを思って気が重く体調も悪くなっていた。しかしベンノとルッツの助言でようやく気分が上向く。
 新たに服を仕立てるときに、リヒャルダが義兄で領主の息子ヴィルフリートと同じ記事と色を勧める。ローゼマインは『小さい兄妹がおそろいの服を着ているのを見るのは微笑ましいと思うけれど、自分が着るとなると微妙な気分だ。しかし、リヒャルダの中では生地と色をそろえることは決定しているようだ。』(P94)という風にリヒャルダがそういうのが好き程度に思っているようだ。でも、生地とか色を揃えるのはローゼマインが領主家の一員で、次期領主候補のヴィルフリートと同じくらい(養女だから一段下とかではない)大事な娘であるという周囲へのアピールもあるのだろうな。
 フェルディナンドがハッセというハードな課題を与えていたのは、ローゼマインの前世が上級貴族の娘だという誤解があったからだようだ。今後は今回のようなハードな課題は直ぐにはこなそうでホッとする。
 ヴィルフリートとローゼマインの一日生活入れ替わりは、web版で読んだ時から好きだ。ヴィルフリートの側近たちが機嫌取りに終始し、厳しい対応が取れないから勉強進まず。ローゼマインが教育計画を立てて、あれこれと細かなテクニックをヴィルフリートの教育係モーリッツに話すと彼が驚きや感心を通り越して恐ろしげにしているが面白い。そして城の図書館での読書タイムに悦ぶローゼマイン。ヴィルフリート視点でのその一日の話は巻末にある。
 フェルディナンドの側近ユストクス、素材集めと情報集めが好きで、以前にローゼマインを調べるために下町に潜入城と命じられた時に興奮で眠れなかったという変人度の高い人。その時の話は巻末の「ユストクスの下町潜入大作戦」に描かれている。
 収穫祭の時に素材収集も実行するも、想定外の自体が起こったため運悪く素材を得ることはできず徒労に終わる。
 「ヴィルフリートの一日神殿長」ローゼマイン考案のお菓子を食べたヴィルフリートにローゼマインの側仕えのニコラが発した言葉、web版だとちょっととげとげしい言葉だったから、そんな言葉づかいでいいのかなと気になっていたので、穏やかな表現に変わっているのはいいね。
 祝詞を覚えよといわれたときにそれに反発するも、ローゼマインの護衛騎士ブリギッテの話を聞き、自分の環境の甘さを自覚する。そして祝詞を覚えた後の一人での食事をしながら、ちょっと寂しさを感じる。このシーン好きだな。
 普段ではないくらいに怒られっぱなしだけど、それでも最後のフェルディナンドの指摘を受け入れられている。それを見ると、入れ替え生活後にローゼマインの側仕えたちが素直だといったのも頷ける。
 「ハッセの孤児」ローゼマインのおかげでひとまずの危機を脱せたけど、同時にこれまでと違う見通しのつかない境遇になる。そのことで不安を感じている。農村の孤児から都市に行き、神殿で生活するようになったので環境の変化にまだ対応しきれていない、そのため旧環境を懐かしみもしている子供たちのことが書かれる。
 巻末の四コマ。自慢げに勉強の成果を両親に報告してほめられて嬉しそうにしているヴィルフリートが可愛い。