FLESH&BLOOD 1

FLESH & BLOOD1【SS付き電子限定版】 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD1【SS付き電子限定版】 (キャラ文庫)

 kindleで読了。ネタバレあり。
 主人公は英国で育った東郷海斗。彼の父は三舛商事のロンドン支社の社長で、そして彼の母親は権勢欲の強い人で父の肩書きによって他の駐在員の妻を従わせている。海斗はそんな母のお気に入りだったので、子供たちの間でもその力関係が影響して、変に気を使われるか腫れ物のように扱われるから本当の友達がいないと思っていた。
 そのため子供の頃にあこがれた海賊にまつわる場所をめぐるために二人旅をしている和哉へも、本当に自分のことを友達と思ってくれているのか疑いを持っていた。長くその思いがあって、とうとう本人にそのことを尋ねてしまった。それで友人と思っていた海斗にそんな風に見られていたことを知った和哉は怒る。
 そこで友人だと思ってくれていたことを知って、自分の言葉を後悔して謝る。しかし友人と思っていた海斗からの酷い言葉を受けた和哉は当然まだ怒ったまま。
 そうして少し雰囲気が悪くなるが、そのまま旅行を続行した。その後海斗はプリマスイングランドに危機が迫る度に鳴るという伝説があるドレイクのドラムらしき音にひかれて、ふらふらと歩くと、次元の狭間に手を突っ込んでそのまま向こうの世界(ドレイクら海賊が活躍した16世紀の英国)に引き込まれることになる。海斗も和哉も仲違いしたことを後悔したままの別離となってしまう。
 1587年エリザベス女王の治世で、メアリー・スチュアートが処刑されてから一月ほど立った、1587年の3月の英国に海斗は放り出された。
 スペイン王からメアリー救出の命を受けていたビセンテがこの時代に来た海斗に最初に接触する。倒れていた海斗の解放をして、少し話した。そこでここが1587年と知って警戒心を示す。そして21世紀からきたこと、来年にはシドーニア公が総司令官となって無敵艦隊が英国に来ることを話す。その不吉な予言にカッとなったビセンテは思わず海斗の首を絞めて落としてしまう。
 その後彼のことを凄腕の占星術師だと思い、彼をスペインに連れて行こうと思う。しかし見回りに来た船員がきたので、やむなく気絶した主人公を置いてその場を去った。
 そしてキャプテン・ジェフリーに拾われる。そこで主人公は何処にも身を寄せる場所もない、時代の違う帰れない場所に来てしまったことを痛感して怖ろしくなる。
 海斗は未来から来たことを隠して、架空の田中氏の側仕えとして日本から欧州に来る途中に海賊に捕らえられて逃げようとしていたということにする。ジェフリーが、タナカ氏は何の見返りもなく教育を授けて面倒を見てくれたとは聖人のようだと、架空のタナカさんを褒めていることにちょっと笑った。
 航海長のナイジェルは海斗のことをスペインのスパイではないかと警戒する。
 ジェフリーは外見もそうだが、この時代ではもっと幼い頃になくなる子供にだけ許される甘えを当然のように持っている無垢で危うい海斗に惹かれる。
 有名なドレイクと会うことになった海斗。ドレイクにビセンテがなぜ狼狽して首を絞めたのか疑義を呈される。それに動揺するも実は占い師で、彼に朽ちた十字架が見えたことを話すと激昂したと述べる。ドレイクが先ほど知ったサンタ・クルズ侯が病に倒れたという情報と一致したことで、海斗のことを本物かもしれないと思う。そして今度の航海のジェフリーにも明かしていなかった目的地で、戦果をあげると言った事で本物だと思わせる。
 上手く騙して占い師として身の安全を確保できた。そうやって上手く本物だと思わせて切り抜けることはできたというのは面白い。でも、彼がこの時代の細かい歴史的な出来事を知っているとは思えないし、それを述べることで徐々に歴史からそれ始めたならば知識は役に立たなくなるから、今後どうなるかちょっと不安。
 まあ、知っていること以外には答えないようにしようとしている点では少し安心だが、それでも頼まれて断れないこともでてきそうだからそのときどうなるか。
 ドレイクトジェフリーは海斗の占い師としての能力を貴重だと思うが、海斗をウォルシンガム閣下にとられることを防ぐために結局彼をジェフリーの船に置くことにする。
 スペインに帰ったビセンテは、カイトの予言を報告してスペイン王に謁見する。そして彼にその占い師の海斗をつれて来るようにとの命令が下される。
 「予感」頑丈な靴だとまめができるといったジェフリーに海斗が靴がゆるくて空間があるからまめができやすくなると説明して、靴屋も教えてくれなかったと感心されるシーンが好き。