マージナル・オペレーション 空白の一年 下

内容(「BOOK」データベースより)

赤い日本による襲撃をかわしつつ、イラン―かつてのペルシャを目指すアラタたち。国境を越え、アフガニスタンに入った一行が見たのは、無人機が遊弋する荒廃した戦場だった―。補給もままならぬ過酷な旅路に、子供たちは次々と病に倒れ、どこに行ってもシベリアによる監視の目が光る。果たして、砂漠の果てに安息の地はあるのか。そして、シベリアはなぜアラタに固執するのか…。芝村裕吏×しずまよしのりのタッグが贈る大ヒットシリーズ、“新田の血”が時空を繋ぐ番外編、ここに完結―!


 ネタバレあり。
 今回は「遙か凍土のカナン」との関連性が高いという印象。まあ、カナンを読んでいないので恐らくではあるが。
 『あの人にとって、逃げるというのは行為ではなく、空間という資源の使い道の一つらしい。』(P4)時間はともかく空間に資源という言葉を使うのが新鮮。全てをリソースとして捉えているのもアラタっぽい。
 アラタがメーリムが病にかかって心配している姿を見て、子供たちはアラタは戦闘では剛胆に、冷静に立ち振る舞っているのになんでだろうと思う。それで結局アラタの国では、戦死は良くても病死は認められていないのだろうという考えに落ち着いた。こうした考え方の違いを妙な理解されているシーンはくすりとくる。
 43ページで急にジニが神がかりになって、その土地の昔のことを話し出す。その話している昔はたぶん「遙か凍土のカナン」の頃の話なのだろうな。このシーンに限らず今回は「遙か凍土のカナン」と関連させたシーンがかなり多く、そちらを読んでいたほうが楽しめただろう。
 子供たちが皆好きなメロンの乾物、どんなものなのかちょっと食べてみたくなった。
 ジブリール視点だからかもしれないが、オマルの影が薄いな。あまりに出てこないものだったから、私が上巻の内容を覚えていないだけでどこかで一旦別行動を取っていたかなと思ったよ。
 イランに向かう部隊に便乗するために、持っていた武器を捨てる。ジブリールも驚いているが剛胆な判断。時にはそれまで自分たちの安全を担保していた武器を捨てて、弱い立場となることで庇護してもらうという彼らしい効率的な判断。
 イラン国境まで来たが、直ぐには国境を越えずに情報収集にいそしむ。
 泣いているジブリールとあやそうとするアラタ。子ども扱いされて屈辱を感じるジブリールだが、その姿を国境警備隊に見られて『苦笑いして気をつけてね』(P151)と言われたように彼らからも子供に見えるというのが現実。
 ハキム、彼は後に仲間となるが、最初の出会いはアラタたちとタリバンを戦わせようとしてシベリア共和国が送り込んできた少年スパイだったのね。
 そのタリバンの情報をイランに流すと共に、自分たちを売り込んで『入国と訓練と武器調達』(P177)をする。
 結局はタリバンと戦うことにはなるのだが、シベリアとタリバンの思惑が混じって読みづらかったのを、状況を読みやすく戦いやすいように場を整えてから戦う。
 日本企業を狙うテロリストを阻止するというのが例のテストとなる。アラタは防御ではなく、先んじて攻撃することを狙う。
 アラタのバイク操縦スキル。そんなスキルあったっけと思ったら、「カナン」の主人公のスキルでそこも似ているということらしい。
 テストといいつつシベリアも兵を出して直接相対してきた。どうやら、このアラタたちへの執着はシベリアの偉いさんがアラタと誰か(おそらく「カナン」での主人公のアラタと血縁関係がある主人公で、アラタと似た外貌を持つ人)を重ねて、違いがわかったから戦闘を止めたということみたい。「カナン」を読んでいたら、そうしてちょっかいをかけてきた理由がわかるのだろうし、それなら今回の襲撃の裏にも何かしらドラマがあるのだろうとは思う。しかし私は読んでいないので、ちょっと消化不良感がある。なので「カナン」も読んどかないといけないな。