FLESH&BLOOD 2

FLESH & BLOOD2 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD2 (キャラ文庫)


 kindleで読了。ネタバレあり。
 海に出た海斗は、16世紀の船舶は荒波でひどく揺れ船酔いで大変苦しむ。積み込んだ水はひどいもので口にできず、エールも口に合わずで、何も飲めずに更に体調が悪くなる。そんな海斗を看病する船長のジェフリー。
 その船酔いから回復した海斗は、他の怪我人や病人たちの世話をする。船での役割がなかった海斗はその役割を活き活きとこなしている。海斗がフランス語も片言だけどいけて、それが役に立つという展開はいいね。
 いったん補給のために寄航することに決めたが、船に病人が出ているから、上陸させたがらない。その相手に海斗は片言のフランス語で聖書のエピソードを用いながら、熱弁をふるって上陸の許可を貰う。未来知識とは関係のないところでの主人公の活躍するところがあるのはいいね。
 彼のそうしたはしっこさはわりと好き。現代知識もあって、そこに多芸さとミステリアスさも加わっているから、ジェフリーが惹かれるのも納得かな。
 ジェフリーは彼が孤独で誰かに必要とされたい。そのように海斗を理解するごとに好意は深まっていく。もちろん好いているからこそ、その新たな一面に引かれていくのだろうが。
 ユグノーの街、スペイン商人も来ると聞いて、海斗はこの街はカトリックと戦っていて敵なのに何故と驚き、ジェフリーがどの宗派が払おうと金だと笑う。現代人と16世紀の人間だと、感想が逆でもおかしくないのにそうじゃないというところが面白い。
 海斗を狙うスペインのビセンテも偶然この街へ寄航する。
 他者と違う(現代人であり、東洋人である)ことで孤独感を深める海斗。ジェフリーはそんな彼を励まそうと、凄い能力がありそれが君を守ってくれるから心配は不要だといった。それで海斗は内心さらに落ち込む。占い師という最初の嘘からくるすれ違い。ジェフリーはただ励ましたいだけだが、海斗はもし俺がそうでなかったらと考えてへこんでしまう。1巻での友人和哉との齟齬もそうだったが、そう簡単には変わらないか。
 海斗が身体を洗っているときに口ずさんでいたQueenの歌をジェフリーが気に入って(未来人だと明かしていないから、自分で作ったのかという問いに海斗は首肯してごまかしたので)褒めている。こうした現代の歌とか文化的なものが、それ以前の時代の人間が気に入るというエピソードは好きだわ。チート物は技術や物になりがちだから、それ以外で喜ばれるという話もいいよね。
 和哉との別離を思い出し後悔でジェフリーの前でないてしまう。そんな海斗をジェフリーは慰めて、海斗は彼のことが好きだと思う。しかしその思いが保護者に対するものか兄弟へのものか、それとも恋なのかは自分でも未だにわからない。
 ジェフリーは海斗が持つ能力と、それで抱える重圧をかわいそうに思っている。そのことからも既に彼は占い師の能力を超えて海斗にひかれていることがわかる。
 船に帰る前に街でビセンテと邂逅。そこから何とか難を逃れるも、ビセンテの船と対決することになる。その説明を求められて、ジェフリーはナイジェルに海斗の正体(占いの能力)を明かす。そして海斗はナイジェルに謝られた。これでナイジェルの警戒心も解けた。そして彼は病人のために献身的に働く海斗の姿を見たことで海斗に好感を持つ。
 逃げるジェフリーと海斗の船をビセンテの船が追いかける。ジェフリーは船の性能で劣っているから、何とか知略で相手の船を浅瀬に乗り上げさせようとする。単に切りあい、打ち合いではない戦いもいいね。
 そして何とか切り抜ける。しかしビセンテは敵方の登場人物だけど、悪い人ではないと思うから失態を繰り返して大丈夫かなと心配になる。