FLESH&BLOOD 5

FLESH & BLOOD5 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD5 (キャラ文庫)

 kindleで読了。ネタバレあり。
 主教の毒殺犯と見られて連れて行かれそうになった海斗は、ジェフリーの危険を顧みない抗議でなんとか厳しい牢獄ではなく、ましなほうの牢獄に行くことになる。自分の立場や命が危険に曝されることをためらわずに、自分を守ろうとしてくれたジェフリーを見て、海斗の彼への信頼が確固としたものになる。
 ウォルシンガムが海斗を犯人説を強硬に主張するのは、単純に海斗憎しでそう見えているのか。それとも海斗が犯人でないにしても彼を亡き者にできる良い機会だということか。毒殺犯が彼でなくても見つからないときのスケープゴートにはなるし、見つかっても所詮異教徒で疑わしかったので犠牲も仕方ないで済ませられるということだろうか。
 いずれにしても海斗は獄中に放り込まれることになる。そしてジェフリーは海斗を助け出すために奔走することになる。彼は主教は病かなにかで倒れたのではないかと、そのことを調べることにする。
 トランプが買われるごとにウォルター・ローリーの懐に税金が入り込む。そうした歴史四方山話、小ネタ面白い。そのトランプを用いながら、宮廷内のどろっとした人間関係が語られる。
 海斗が肉体を傷つけない拷問されているときに、彼がいなくなった後に和哉が海斗をどうにかしたのではと疑われている悪夢を見る。夢なのか現実の光景なのかはわからないけど、ただでさえ友人が目の前でいなくなる怪現象に見舞われたのに、真逆のシーンが書かれるとか、かわいそすぎる。だから望み薄だけど、いつか彼が無事だとわかると場面や彼に対する何らかの救済の場面があればいいなと思ってしまう。
 ウィル(シェイクスピア)が巻をまたいで登場するとは思わなかった。しかし彼がカトリックだから、彼をビセンテ(スペイン)を手伝わせるという設定にするとはちょっと驚き。
 海斗のウィルへの説得もあり、海斗を連れ出すスペイン側の計画は後一歩で失敗となる。スペイン人と繋がっているなら何故逃げなかったのかはわからないが、死人がでているのに生き残ったことで、誤って彼にも薬を飲ませてしまったから連れ出せなかったとの声もあり、疑いは消えない。
 そうして疑いが晴らせぬまま裁判の時が近づく。ジェフリーは有力な庇護者を得て、なんとか海斗を助け出そうとする。そこでロバート・セシルがジェフリーに彼を助けるための知恵を授けた。
 海斗がウォルシンガムの部下で自分を拷問した相手すら擁護したことで、ウォルシンガムの彼への心象が少しよくなるも、やはりいまだ疑いは根強く、排除しようという意志は変えない。
 セシルの入れ知恵で、海斗がマリアの処女懐胎についての素朴な疑問を主教にぶつけたことにした。その質問が冒涜で、それが主教の健康に悪影響を及ぼして死亡したという体にした。そうすることで殺人罪の判決を受ける。しかしいまだに生きている聖職者規定(読み書きできる聖職者は一度は罪を許されるという規定、その後聖職者でなくても読み書きできる者は罪を許されるものになった)を使って、死刑を免れて自由の身に戻る。
 ただし再度罪を犯したときに再びその規定が使われないように右親指にTの焼印がいれられる。ナイジェルとジェフリーも海斗だけにそんなことをさせられないと、自分たちもその焼印を入れる。そしてウィルは焼印を押された彼らに良く効く軟膏を届けてくれたので、彼も改心したみたい。