魔人執行官 2

 ネタバレあり。
 旧市街で行われているフリースタイル・グラップルという格闘技の試合。撃銛剛刀が試合中にNEOの能力を使う。そして観戦していた山城大陸は能力を使っているのが見えた。
 久我囲暁琉の妹優香理の兄への思いを『通俗小説的妹心理(ブラコン)に基づくものでない』(P35)と書かれているのはちょっと笑った。
 NEOとなった格闘家の九枝良は格闘家としてマーシャル(暁琉)と闘いたがる。元の意識が強く残っているのかNEOとしての本能ではなく人っぽい理由でのマーシャルと相対するという新しいタイプのNEO。それはNEO陣営の新しい仲間の増やし方による違いなのかとも思ったが、手ごわい同類(撃銛剛刀)がいることをそこだけ記憶が妙に曖昧だけど若い女に伝えられたと表現して、後に世良と対面した時も初対面っぽいので暗躍しているNEO陣営とは関係なく覚醒したみたいだ。単に彼が戦う理由がしっかりあるからNEOの本能的なものに影響される度合いが少ないだけか。
 NEOの種類。タイプ・ペイル(直接殺害)、タイプ・ブラック(細菌兵器)、タイプ・レッド(攻撃を受けた相手に殺害・自殺させる)、タイプ・ホワイト(精神干渉、暴動・紛争を誘発)。
 暗躍するNEO二人組(世良と江口冴凛)は、実験も兼ねて強敵を求める撃銛剛刀をNEO対策室に送り込む。そこに収容されている九枝良を再度覚醒させて、撃銛剛刀と闘わせる。
 椿・理務のワイジアン夫妻、暁琉と花月のアーマーに秘かに新機能を組み込んで楽しむとか子供っぽさもある。暁琉が花月から誕生日プレゼントで貰った赤いバンダナをつけないと新機能が使えないようにする。
 そしてイリュージョナル・アーマーで『何故衣服の外見を変える必要があるのか、といえば、実はそんな必要はない。単にアーマーを製造しているワイジアンの趣味だ。ワイジアンの、高い知性を持っているにもかかわらず思考が子供っぽい側面は、こんなところにも表れている。』(P257)そしてその種の子供っぽさは夫妻だけのものではないようだ。
 NEO同士の戦い、そして山城大陸も再覚醒させられて病室から移動するなどNEO対策室は混乱する。収容されていた山城大陸との面会後にNEO対策室を後にしていた暁琉と花月が急いで戻って対処することになる。
 剛刀を倒した後タイプ・オリジナルが出現。前回と同じ三人プラス山城大陸で戦い、勝利する。NEOとフォーシアンの中間的存在となった山城。彼は要監視対象となり、NEOと闘うことで自らが人間社会にとって危険でない、有益な存在であることを証明しなければならなくなった。そのような中々重い宿命を背負うことになった山城大陸が監視も兼ねて秋竜胆家で暮らすことになったということが書かれて終わる。
 「あとがき」によると暁琉と花月に加えて山城大陸の『ヒーロー二人にヒロイン一人。シリーズの基本構造』(P298)で、他には『今のところ、脇役を追加する予定しかありませんが。』(P299)とあるので主要登場人物は今回で出揃ったという感じか。