ソードアート・オンライン 20

 ネタバレあり。
 今回も基本的にはロニエ視点で話が進む。
 『キリト自身が口にした通り、人界統一会議代表剣士という肩書きは、人界に於いても――そして公理教会に於いても、決して盤石の重きを得ているわけではないのだ。』(P39)キリトはアドミニストレータ、後には四皇帝を打倒した反逆者でもあるため内外で反発心を持つ者もいる。なんとなくもっと安定してトップに担がれていると思っていたので意外。
 そして整合騎士が整合騎士になる前の話、精神に極限の負荷がかかることで死にいたる危険性があるため、この巻の時点ではまだ話していない。
 アスナは新たに習得した過去視の神聖術で事件の現場を見ることで、被害者が旧皇帝直轄領の小作人だった人間だったことがわかる。そして、おそらく皇帝関係者が私領民への裁決権の範囲だという欺瞞で禁忌目録から逃れて殺害をやったと推測できる。
 事件に巻き込まれないように保護されていた山ゴブリンたちが、行政府の役人だと偽った犯人の手により誘拐された。
 アンダーワールドでは埃は掃除用具を使えばすぐ消えるし、また食事はするけど排泄はそもそもこの世界に存在しない。大変面倒がなさそうでいいね。
 ロニエとティーゼは幼竜の偏食矯正のために湖で魚を取って食べさせていた。その時に湖の近くの幽霊がでるという屋敷の話をして、その屋敷に半ば肝試しにその屋敷に二人で赴いた。
 魂が神界まで辿り着けないとお化けになる。死後の世界について少し考えているのを見て、アンダーワールドの外にリアルワールドがあって、その人々が自分たちとこの世界を作ったことがわかっているというのはどういう気分なのだろう。そういう前提からできた神や死後の観念、死生観はどういったものになるのだろうと興味深い。それと同時に失敗や死後の慰めを持ちづらそうでかわいそう。
 幽霊屋敷を探索していた二人だったが、その屋敷には死んだはずの北の皇帝とその従者がいて、そいつらの隠れ家だったことがわかる。一匹の幼竜を捉えられて脅され、囚われの身となる。そしてもう一匹の幼竜・月駆を外に出して助けを呼んできてくれることを期待する。
 助けが来る前に牢を脱出して剣を取り戻し、二人で皇帝らと戦うことになる。四皇帝家は数百年前から永遠の命の研究を行っていた。死んでいた皇帝はミニオンとして、頭部に核となる何かがあってそれが人格と記憶を与えている。その裏には皇帝をよみがえらせて、ミニオン製造法を教えた黒幕がいる。
 前回の誘拐犯は東帝国皇帝で、墜落時に跡形もなく消えて死んでいる。そして死ぬまでの記憶と共に前回誘拐犯が身に着けていた赤い宝石が彼のもとまで来たことが明かされる。敵だけど前回のネタばらしありがとう。
 皇帝が誘拐したゴブリンとの融合ミニオンにやられた二人。危うい状況でキリトとアスナがやってくる。そして皇帝を倒すことができたが、赤い宝石の事を情報共有する前に赤い宝石が西帝国の方角に飛び去りはじめてしまい取り逃してしまう。
 あとがきによるとこれで「ムーン・クレイドル」の話は、事件の完全解決には至らず真の黒幕もわからないがひと先ずお終いとのこと。しかし『キリトたちと黒皇帝団との戦いはここから百年以上続いて、最終的には宇宙怪獣アビッサル・ホラー(18巻ラストに出てきたヒト)との決戦に至る予定』(P348)とのこと。この事件めちゃくちゃロングスパンのエピソードになる話の最初だけを書いたという感じか。また続きが書かれるのか、いずれ歴史としてその話について触れられるのかどっちだろ。そして『21巻からは舞台を現実世界に戻して、統治者ではなく高校生のキリトとアスナの新たな物語が始まる予定です。』(P349)新章がどんな話になるのかとても楽しみ!