本好きの下剋上 第四部 貴族院の自称図書委員 3

 ネタバレあり。
 プロローグはローゼマインの神殿の側仕えであるギル視点の話。ギルが手なれた風に他の灰色神官たちに指示を出すところや彼が非常にローゼマインの体調について心配している様子だったり、デリアが過去を反省して成長しているところなどが見れて良かった。
 エーレンフェストに帰還中のローゼマインは今後の製紙業や出版業の展開について適切な処置をする。その時に一旦契約魔術を解除して、新しい契約魔術を結ぶことになった。それでマイン時代にルッツと結んだ契約がなくなったことでつながりが消えたような強い喪失感を覚える。その後、久しぶりにルッツらプランタン商会の人々相手に感情を出して話せる機会を得たことでようやく落ち着いた。
 その後再び貴族院へ戻ることになるが、問題児なトラウゴットを教育するために彼の側仕えとして親族のユストクスがつくことになる。それでユクトクスが貴族院にくることで頼りになる人が増えていいね。しかしユクトクスはトラウゴットの再教育、ローゼマインの監視、貴族院での情報収集、領地への報告、今後のために印刷や製紙関係の仕事のできるようにするため文官見習いの教育も行うとは大忙しだ。
 貴族院に戻ってからアナスタージウス王子やエグランティーヌと面会し、その後他の領地を一度に呼んでお茶会を主催することでまとめて社交を終わらせる。そのお茶会でダンケルフェルガーのハンネローレと顔を合わせ、同じく本好きと知り、本を貸し借りする約束をする。ローゼマインは同じ本好きの友人を得たことの興奮で倒れる。それを理由にして領地対抗戦を欠席することになる。ユストクスの報告を読みローゼマインが面倒起こす前に隔離したほうがよいとのアウブの的確な判断。
 剣舞や奉納舞を見たいと言ったローゼマインのために、フェルディナンドが寮監であるヒルシュールが持っている映写の魔術具を借りてくれてエックハルトが撮影してくれた。奉納舞の音楽を口ずさみながらエグランティーヌの舞いを見て、エグランティーヌを祝福したいと考えていると意識せずに祝福が出てしまったことをフェルディナンドに指摘され、同時に騒動が起きるだろうが何を聞かれても素知らぬ顔をしておけとローゼマインや周囲にいた人間に厳命する。ローゼマインは奉納舞の歌が元々神にささげる歌だったことはしらなかったのだが、元々そうでそれを口ずさみ祝福したいという思いを抱いたので祝福がでた。
 アウブであるジルヴェスターはその祝福がエグランティーヌとアナスタージウス王子に降り注いだところを見ていたが、その祝福は結局神々の祝福になったようだ。ジルヴェスターはそのことを疲れ切った様子で話し、ローゼマインをじろりと見る。そんなジルヴェスターだったが、祝福が出たとき映写の魔術具でアンゲリカの剣舞とエグランティーヌの奉納舞を見ていたことを話すと、映写の魔術具に興味を示して見たいというジルヴェスターの子供っぽい無邪気さがいいね。
 その後エグランティーヌとアナスタージウス王子から手紙が来てその返答をしたり、一度フェルディナンドとともに一度貴族院の図書館に行った。それで今年の貴族院は終わって領地へと戻る。
 その後ローゼマインはプランタン商会と隠し部屋での最後のマイン時代のようなざっくばらんな話し合いを行う。神殿の隠し部屋に平民の男を連れ込んでいるという噂が流れると互いに取って困ったことになるため今後は隠し部屋を使えないことを話す。
 泣くマイン(ローゼマイン)に向かってルッツが『オレの夢はお前が叶えてくれたじゃないか。だから、お前の夢はオレがかなえてやる。お前のためにいっぱい本を作って届けてやるから、泣くな。お前は笑って本が届くのを待っていればいいんだ』といい、ローゼマインも『グーテンベルクが気持ちよく働けるように、少しでも多くの本が作れるように、協力して、援助する。……父さんとも約束した通り、わたし、この街ごとまもるよ』(P324)といったやりとりがいいね。ルッツがローゼマインのために本を作り、ローゼマインは会えなくてもルッツ達のために何ができるか考えるというこの新しい約束ができた。その新しい約束や泣いたローゼマインを身近な人々が心配して優しい心遣いを見せてくれたこともあって、悲しいながらも立ち直ることができた。
 そしてローゼマインが周囲の人々を家具などで例えるシーンは興味深かった。
 巻末の短編「時の流れと新しい約束」ルッツ視点で、最後の隠し部屋でのローゼマインとの会話が終わった後のことが書かれる。「卒業式と祝福の光」エグランティーヌ視点で祝福の光が届いた時の話が語られる。