おいしい穀物の科学

おいしい穀物の科学 (ブルーバックス)

おいしい穀物の科学 (ブルーバックス)

内容(「BOOK」データベースより)

おいしいコメとは、何だろう?日本人は、なぜコメが好きなのか?コムギは、なぜパンにして食べるのか?ソバは、なぜ麺にして食べるのか?トウモロコシは、どうして世界一の穀物になったのか?ごはんやパンの見方が変わる!

 HONZで見て、ちょっと気になっていたので購入。ブルーバックスの本を読んでおいてこんなこというのもあれかと思うけど、穀物についての科学的な説明についてはどうもいまいち理解できていない感じだけど、わかりやすく書いてあるから、読んでいてちんぷんかんぷんで何かいてあるかさっぱりということはないのはいいね。
 モチ性の穀物はウルチ性の穀物よりも、消化速度が速いため血糖値が上がりやすく幸福感を得やすいので上等だというのは、そういった観点で食べ物を見たことがなかったのでちょっと新鮮だな。モチ性遺伝は劣性遺伝で、また保存性も悪いため主食にはならなかった。
 しかしもち米は加工が簡便で、小さな熱量で食品ができる利点があるので、湿度が高いモンスーン地帯では有利なため、そうしたモチ性の食品が東アジア・東南アジアで好まれてきた。
 白い穀物、色素を持つ穀物に比べて栄養素に乏しく、保存能力が低く環境ストレスに弱いのだが、食感と美意識ゆえに世界各地で珍重されてきた。
 「図1-4 穀物栽培に適した温度と水分」は、温度と水分が高い(多い)か低い(少ない)かという基準によって、具体的な数字を使わずに、円形・楕円形で互いに重ね合わせて、どういう穀物が大体どうしたところが向いているかを示しているので見ていて面白い。それを見ると、ライムギと大麦は最も水分を必要としない穀物で、ライムギはソバ・ダッタンソバが適している低い温度が適した温度だということだから、相当にたくましい植物で、中世欧州で多く栽培されていたというのも納得の適正。
 パーボイル法、熱帯の多くの場所で行われ、日本でもヒエなどで行われる方法(黒蒸し方、白蒸し方)で、殻付きの穀物を一旦水にさらした後、湯や上記で加熱して、その後天日干ししてから殻を除去する。そうすることで、コクゾウムシやカビがつきづらくなり、脱穀しやすく、歩留まりが上がる。そしてヌカの栄養が内部に浸透する。そうした方法でヌカの栄養を内部に〜という方法があったとは知らなかったのでちょっと感心した。
 イネの栽培種、収穫指数が大きいが、雑草など多種との競争力が野生の状態よりも低下している。しかし水田ではその競争力の弱さを、他の植物は種子から成長しなければならない状況に、イネの苗を移植するので、その時点で他種との大きな成長力の差が付いているため稲は光をめぐる他種との競争に勝てる。こうした記述を読んで、今までは野生種はそうしたものなのだろうと特に種子が栽培種よりも少ないのは何でだろうだなんて考えもしなかったが、野生種では光を得るために茎を長くして、そっちに栄養使うため種子とかが少ないのかと理解した。
 古代米の色には野生の動物の職外を防ぐために、抗酸化性の物質などが含まれていて、生命力が強い。
 トウモロコシの起源地は狭い地域に、砂漠気候、ステップ気候、温帯気候、熱帯気候、熱帯サバンナ機構、熱帯雨林気候などときわめて多様な気候がひしめいているため、品種が多様化していった。それが世界に伝播して栽培地を拡大できた理由の一つ。世界の穀物生産量の1位。しかしよく考えたら、米を外国人が野菜扱いするのを不思議に思うけど、よく考えたら日本人もトウモロコシを野菜扱いしている感があるから、そう考えると不思議ではないのかな。日本で食べられるトウモロコシが、主食にならない甘い品種だということもあると思うが。それとググってみたら普通に食べるスイートコーンは、農林水産省は野菜に分類しているようだ。
 トウモロコシはワラの栄養分も高いということも、飼料用に栽培される理由なのかな。
 温帯の平地では50年、堆厩肥を投入し続けると炭素含有量(窒素はおおむねその1/10)は上限に達して、堆肥を投入しない収奪的農法の3倍の生産力になる。そうした50年という大きな数字を見ると、かつては新たに開拓するのは難事業だったということがよくわかる、十分に開発された土地の3分の1の生産力しかないわけだから。
 そして焼畑をすると炭素含有量が一気に上限になるので、土地があって森林の回復力が強い地の場合、そちらのほうが効率的だというのはよくわかるわ。
 白米の偏食でビタミンB1が不足して江戸わずらい、脚気があったように、近代アメリカの南部貧困層やイタリアではトウモロコシの偏食によるビタミンB3が不足して、ペラグラという病気があった。脚気みたいな病気が他にあったというのは知らなかった
 明治時代に地価を課税の基準としたため、米の生産が増え、雑穀の生産が減っていった。
 日本は山が多く標高差もある、中部山岳地方の農耕地の標高差は最大1700メートルあり、「これは2000km北上したのとほぼ同じ温度差で、福岡―札幌の直線距離以上ある。人のわずかな垂直移動が、大きな水平移動に相当する温度差をもたらしていて、栽培品種の多様さを生んだ。』(P110)そのため日本は様々な品種の穀物を栽培する雑穀文化もある。
 ソバの加工・利用法(図5-2)が見開きの大きな図で色々な加工・利用法が載っているのはずいぶんと力が入っているなあ。
 穀物の成分の大部分はデンプンなので、その単調さを解消するために、粘りや弾力をもたらす加工を人は工夫するようになった。
 『大量に摂取する穀物の味が強いと後に食べたものの味が変化する(継続的対比)。また、舌の上で穀物が強い甘味を出して刺激すると舌の他部位の食味が変化する(同時的対比)。こうした理由により、主食が甘すぎると、多様な食物を摂取する障害にすらなる、ヒトが雑食性動物そして獲得した性質なのだろう。』(P126)甘いものは主食にならないということには、そうした理由があったのね。