ベン・トー 12


内容(「BOOK」データベースより)
半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋が、狼となってから出会った仲間たちと想いをぶつけ合う甘~いエピローグ集!気持ちを受け止めてもらったはずの槍水との未来は?そしていつも隣にいる著莪との関係はどうなる?さらにいつも周りでアクセル全開で暴走状態だった沢桔姉と噛み合う時は来るのか?そして白梅は?その他にも茉莉花とのタイホ寸前の××や、烏頭VSあせびちゃんのオカルトバトル、茶髪の想い…など、胸焼け必至のデザートバイキング!一緒に戦い、喰い続けてくれた皆様に感謝を込めて、庶民派シリアスギャグ・アクション、これにて完食!!

 冒頭で白粉の小説「マッスル刑事」の感想という体裁を取りつつも、『微妙に独立した短編とも見え、さらに全てがifエンディングにも見える……』(P13)と書いてあるように、最後の短編を抜かせば、想像力をたくましくすればその後佐藤は他のヒロインたちと結ばれると考えることが出来る短編がいくつも用意されている。そして著莪については明確にもう一つのエンディングとして書かれているのはすごく嬉しい。それまでの積み重ね的には著莪と結ばれるのが一番妥当なところだと思っていたし、思いたかったし、彼女と結ばれるものだと信じたかったのだが槍水先輩とくっついて終わるというルートで本編が終わってちょっと、いや大分ショックだったので、彼女とくっつく終わりがifではあるものの、今回槍水先輩ENDと併置して、彼女と結ばれるエンディングも描かれたことは本当に良かった。それだけでも満足だよ。まあ、他の娘たち(沢桔梗、白梅梅、茉莉花、広部さん)のエンディングもifエンドと見えるでなく、明確にifエンドとして書かれていたら更に嬉しかっただろうけど、そこまで多くは望まないさ。
 それに最初の短編で槍水が好きといってもイコールで付き合うというわけではないと、先輩の友人たちの入れ知恵のせいもあるけどそう言っているので、前回のラストを崩さずに他のENDに行くことについて想像するのを容易にしてくれる。
 つまり前巻のラストとこの巻の最初の短編、そして好きな短編を組み合わせることで、冒頭で「マッスル刑事」の感想という体裁をとりながら言っていたように、好きなヒロインとのエンドを半公式なものとして捉えることができる。それはとても有難いことだ。
 沢桔梗の短編は、佐藤の寮の先輩が佐藤のデートに際してジャケットを貸してくれるというシーンで、あの寮にもまともな人間が居たのかと驚いたのだが、最後夢オチだったので、その場面を思い返してはなるほどと苦笑混じりながらも納得できた。しかし沢桔梗の短編や茉莉花の短編といい夢オチが連発されるのは、それらの短編でのエピソードはかなり良いから残念だわ。
 茉莉花の短編は実に色っぽい短編で素敵だけど、そんなチャレンジして大丈夫かと思っていたのだが夢オチかあ。夢オチだろうとかなりやばいくらいエロ方面に踏み込んでいるのだから、そこまで踏み込んだなら夢オチじゃなくても!と思ってしまう。
 白梅の父は、美形なのに娘をストーキングしたり、白粉のBL本で勃起したり色々ときついなあ。しかし彼が結婚するために奮闘したエピソードを見ると、家長制でないのだから、家なんて気にしなければいいのにと思ってしまうのだが、それでも親の許可は得たいというのは、結婚とはそうあらねばという観念が強いのか、それともそうでなければ結婚の踏ん切りが付かないほどの愛の強さなのかどうなんだろう。まあ、なんにしても結婚がこんなに大事となるとは大時代的だなあ。
 白粉が佐藤のモノをつかんでいるのに、それに対して佐藤が(あの佐藤が!)、興奮するどころか嫌がっているのが笑える。佐藤は本当に彼女を化外の者と認識しているのだな。
 オカルトメイド喫茶の話で、茉莉花が佐藤のストライクゾーンに入っていることが判明したことは、少しびっくりした後に納得が来る。
 茉莉花看病回の冒頭にウッちゃんが登場したが、彼女は登場するたびに佐藤に色々見られているねえ、エロいとか哀れなとか思うよりも咲に毎度毎度という印象があるから、またかいとちょっとつっこみたくなる。
 しかし茉莉花に対して佐藤は格好いいところを見せるよりも、その変態性を見せることのほうが多かったように思うのになんで、こんなに好かれているのだろうか。彼女の今後が心配だわ、だから佐藤、責任取れよ(迫真)。なあんてね。しかし毎度のように茉莉花がでてくると一気に甘い空間になって、背徳感を含んだエロさで、他のどのヒロインとのシーンよりもエロくなるなあ。
 著莪エンドの終わり、彼女と結ばれた後を見ていると、彼女の想いが報われる姿を見ることができて本当に良かったと心底思う。もう、僕の中では最後の終わりはこれがトゥルーエンドと思うようにします。
 いや別に槍水先輩がいやとかではなく、著莪が好きなだけ、彼女が報われてほしいだけ。