マージナル・オペレーション 4

内容(「BOOK」データベースより)

イヌワシと2000人の子供たちは、ミャンマー北部において、ついに中国正規軍と戦闘状態に突入する。そんな中、守護天使との関係にも新たな季節が訪れて…。芝村裕吏が贈る戦場の叙事詩、熱誠の第4巻!


 登場人物紹介に、シュワさんのかつての部下の梶田のイラストがあるが、キャプションに「現在は無関係か。」とあるが、わざわざ説明を載せているということはなんか今後に関係してくるのか?そして登場人物紹介のソフィの笑顔には胸が痛む。
 イブンはビルマ語もシャン語も使えるようになったとは、語学の才があるのだな。そんな人間が子供なのに傭兵家業をしなければならない世界の厳しさには、アラタならずとも悲しくなるね。
 アラタはタイとミャンマーを行き来しているとは、フットワーク軽いね。そしてなるべく前線から、子供たちから離れたくないとはいえ、強行軍だねえ。
 リさんといい、ホリー(=シャウイー。1巻でアラタに英語を教えてくれた娼婦で、現在は監視団の一員)といい、なんでアラタがもてるのかさっぱりわからないなあ。ライトノベルだからといってしまえばそれまでだが、直接の配下でその能力を知って、付き合いの長いジブリールやジニ、あるいはソフィとかならともかく、大人の女性で通常の社会に基盤がある彼女らが彼に攻勢をかけている理由がさっぱりわからないな。
 サキの体が弱いとはいえ、一人だけ褒めるのはいかがなものかと。特に傭兵家業であるのだから、普通にやれている子供たちの前で彼女のことだけ気にかけるのもちょっと腑に落ちない感じ。というか、彼女が日系ということで贔屓しているんじゃないかと見られるかもしれないから、そうしたことは自重したほうがいいんじゃないかということが妙に気になってしまった。
 ソフィもたまたま調子の良い日だったというのもあるけど、アラタと会話できるまでに回復してきたということにはホッとした。
 敵は賢いほうが止め時もわかってくれるから、賢いほうがいいと言えるのは主人公のようによほど能力が傑出しているやつだけだなあ、普通敵は馬鹿なほうが楽に勝てていいし、相手が馬鹿であるより賢いほうが字軍の被害を最小限に抑えられると自然に思えているのは凄いわ。
 10人に満たない隊を300くらいに分けて運用したほうが、もっと人数が大きな部隊を指揮するよりも、いくら小部隊編成の慣れがあるとはいえ、そちらのほうがより効率的に動かせると当然のように考えていて、実際出来るだろう(検挙という彼が指揮については見栄をはらず、やれることしか言わないから)ということを見ると、アラタの傑出度合いが改めてわかる。
 『イトウさんは頼りにはなるが日本の国益を重視しすぎて、こういう時はちょっと信用ならず』(P135)リさんのほうが信用できるというのは言われてみれば確かにそうかも、イトウさんが確実に信用できるケースなら能力的にイトウさんのほうが安心だけど、リさんはちょっと頼りないところもあるけど、子供の被害を最小限にすることへの理解もあるし、嘘はつかなそうだものね。
 ジブリールがアラタに惚れていて、彼と結婚したいと思っているというのは自明の事実でいまさらという感じなのに、アラタがそのことをジニに指摘されてもまだ半信半疑に思っているというのは、流石に鈍感がどうこうというレベルを超越しているから唖然としてしまう。てっきり今まで見てみぬふり、気づかない振りをしているのかと思っていたが、まじでか。それともこんなに直接的に突きつけられても、いまだに気づかない振りをしているのか、それならばこの期に及んで往生際の悪い、そろそろ年貢の納め時だ。
 指揮している最中にも損害を極端に恐れて、大きな戦果を得る機会を逸するなど、アラタはいまだに心構えがプロではないのに、そこまでやれてしまうのが才能だなあ。
 ラストは中国軍がアラタたちの拠点を襲撃したところで終わるとは、前回が底だといっていたのだから、今回くらいいい気分で終わらせてくれてもという気がしなくもないなあ。次巻予告の広告に記されている台詞もなかなか不穏で、アラタが重傷を負いそうでちょっと不安だ。まあ、今回がこんな終わりをしたのが、逆に次回、最後の巻はハッピーエンドで終わるから、こういう襲撃を受けて終わりというし目方をしたのかなとも思えるから、広告で不穏な感じも受けつつも、次回はハッピーエンドで終わってくれるだろう、大活躍を見せてくれるだろうという相反する予測と期待がある。