民法はおもしろい

民法はおもしろい (講談社現代新書)

民法はおもしろい (講談社現代新書)

内容(「BOOK」データベースより)

知らないと損をしてしまう「人生の必修科目」。変わりつつある現代社会の基本法を第一人者がわかりやすく解説。


 民法について具体的な事例についての説明は僅少で、もっとも基本的な法律である民法について、身近などんな場面で民法は使われているのかという説明や、民法の歴史とか、民法改正の現状についての説明だったり苦言など民法に関するさまざまなことが書かれている。けど、後半はかなり民法改正の話が多目。
 他の保障人がいるといわれて保証人となったが、実際には他の保証人が居なかったときでも、錯誤で無効とはならない。なぜなら動機の錯誤では錯誤にならず、動機が表示されていない限り、たとえば保障契約書に「他に保証人がいることを前提として」とかかれていない限り、錯誤は成立しない。
 運送会社の社員が仕事中に事故を起こしたら使用者責任で、社員と会社双方に損害賠償を請求できる。そして個人で運送業をやっていた人間Aが事故を起こした場合でも、『じつはAはBという運送会社から仕事を得ていたというケースであれば、AとB社のあいだに正式な雇用関係はなくても、実質的な使用・被用関係が認められるのであれば、民法七一五条の使用者責任という規定によって、被害者はAとB者の両方に損害賠償の請求ができる』(P56)社員でなくても、運送会社から仕事を得ていたというケースであればその会社にも損害賠償請求できるとは知らなかった。
 民法の構成は、日本はドイツ民法型のパンデクテン体系だが、他にもフランスのようにインスティトゥティオネス体系と呼ばれる体系もある。
 ボワソナードの旧民法は、穂積八束に「民法出でて忠孝滅ぶ」と批判された家族法の部分は日本人の起草委員が書いた。そして旧民法はドイツ法フランス法の影響はほぼ半々ずつ。
 家族法の部分は戦後すぐに改定されたので、2004年の財産法の現代語訳化の前に既に現代語となっていたとは知らなかった。民法の現代語訳化のときに一斉に文語体で、カタカナを用い、旧かなだったのを現代語にしたのかと思いきや、家族法の部分は戦後ずっと現代語だったのね。
 所有権の転移は、いつ移転するかは当事者で決めることができるが、契約で決めておかなかった場合は契約した時に所有権が移転する。なので、後払いとかでも、契約を既にしているのだから所有権は買ったほうに移転する。
 法学部で勉強する会社法では、企業の調達方法について、株や社債で資金調達すると勉強する。しかしそれは現実には大企業の場合にはそれができるが、中小企業の場合は信用力が弱いので、社債や株での資金調達が難しい。そのため多くの中小企業は資金調達を金融機関などからの借り入れに頼ることとなる。
 民法が導入された19世紀から20世紀末というごく最近まで法学教育の現場では、『法というものを現実の紛争解決のためのツールとして認識することはあまり意識されていなかった』(P165)というのはちょっと驚き。
 信頼関係破壊の法理は、第二次大戦後に需要供給の関係で部屋の需要が高かったときに大家が、小さなことで新しい住民を入れるために612条2項の条文を濫用して、現在の住民を追い出してが横行したため、そういうことは違法とした判例が作られ、なぜ違法かという理由として信頼関係破壊の法理(信頼関係を破壊するようなものでなければ、違法でない)が築き上げられた。
 民法改正作業も難航しているというか、単に言葉の入れ替えのような感じで一向にわかりやすくなっていなかったり、あるいは学術的な論議について話し合ったりしている反面であるべきなのにない規定についてあまり議論されていないらしい状況に苦言を呈しているのを見ると、民法改正本当に大丈夫なのかとちょっと不安になる。