「心理戦」で絶対に負けない本

内容(「BOOK」データベースより)

心理戦を行ううえで圧倒的に有利になる3つの説得テクニックや、他人の心を読み解くプロファイリングなど、心理学をベースにした実用テクニック、満載。


 こういう日常の心理についての実践的な本、ハウツー本というのは読んだことがなかったが興味はあった。しかしどんな本が良い本なのかよくわからないので、ひとまず手軽な文庫本で、レビュー数が多いこの本をとりあえず読了。
 心理学の本は、以前に「図解雑学 心理学入門」を読んだけど、それは情報量が多かったが、実験結果とそこから推察される人間の心理について、そうした心理の動きをするのだと感心するだけで終わって、紹介されている実験が多い分、どういう方法が実際に能動的に使えるものなのかについて取捨選択ができなかったので、こうした本をそれから読んでみたいと思っていた。
 この本で扱われているようないくつかの用いやすく、用いられやすい人間の心理を利用したテクニックの日常での応用についてみたいなのは、実際に実践できるかはともかく、日常でありそうな例をあげてどういう風にそのテクニックを用いるか、あるいは商売で用いられているテクニック、詐欺師が用いているテクニックへの対処法としてどうした方がいいのかについて書かれてあるので、なかなか面白かった。
 イメージを売るというのは聞いたことあるけど、具体的な例として、ドラマなどの暖かい家庭的なイメージから、沖縄は冬でも暖かく実用的ではない気候だが90%の家庭にこたつが普及しているというような実例を見ると、イメージの効用が思ったよりもずっと大きいことを感じるな。
 「図解雑学 心理学入門」で知っていたテクニックが多いけど、あちらでは見開き2Pで一項目をまとめていたので、この本はテクニックをどのように使うか使われているかといういくつもの具体的な例や丁寧な説明がされているから、より深く知れたし、使うにもそうしたテクニックを警戒するにもそうした具体例の知識は必要だと思うのでよかった。
 説得の三大テクニック「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」「ロー・ボール・テクニック」。
 例えば街頭で被災者の署名をお願いされて承諾して書名を書いたら、募金をお願いされるなどの手法は知らなかったが、募金をしてもらうためには有効そうなテクニックだ。ただ、文字面だけを見ると、だまし討ち感があるからいまいち好かないけど。
 定員やセールスマンなどこちらに何かを買わせることが明らかな場合は、小さな要請の後は必ず大きな養成が待っていることを肝に命じることが、余計な買い物や契約をしないコツ。いつでも好きな時に断れる、最終的に断ればいい、と自分の力を過信するのはいけない。そんな風に最初に心を決めていても、こうした法則を知っていても断りにくくなる、心理の動きは変わらないのだから。
 人間は、それが法外な要求であっても「断る」と罪悪感を抱くのは理屈ではない自然な作用。ただ、あまりに法外な要求だとかえって敵意を抱かせて、次の小さな要求も通らなくなるので、敵意を抱かれない範囲の大きな要求を最初にして、次に小さな要求をする。そんな風に、そうした自然の心の作用に付け込む人(詐欺師に限らず普通のセールスマンも)もいるので、不要な罪悪感を感じないことに注意。
 「ロー・ボール・テクニック」が使われる実用的な例として、最初に残業30分「だけ」をお願いされて、了承したら、「たぶん」三十分「ぐらい」で終わるからと言って、もうちょっと長く残業をさせられるなど、こうした非常に卑近な例をあげられるとわかりやすいし、そうしたテクニックが身近なものに感じる。
 恐怖アピールは、弱ければ弱いほど効果的。恐怖が強ければ反発を生んで、説得される・受け入れられる可能性が低くなる。
 約束を破られたときは、直接的に非難するよりも、「不安になった」などといって、そういう気分になったのはなんでかという含みだけ相手に伝えたほうが、相手に受け入れられやすい。
 「第四章 「裏」の心理学」では実際の「詐欺」や「だまし」で使われているいくつもの手口に、どういった心理的な効果を持つテクニックが用いられているかについて解説してあって、そうしたものは以前からちょっと読みたいと思っていたので面白かった。
 『頭を後方へそらす動作は、「侮蔑」「軽蔑」「憎悪」をあらわす』(P231)
 『女性が嘘をつく時は、相手を凝視し、男性は視線をそらそうとする』(P237)『「私のうそはばれなかったのだろうか?」。この不安は女性のほうが男性より強く感じるようである、そのため、女性は相手の表情を見て、嘘がばれたかどうかを確認しようとする。その点、男性は、嘘を付いたことに罪悪感を感じるので、相手の顔を直視できなくなるという違いがある。』(P237)表情での確認、なるほどね。