異世界食堂 3

内容(「BOOK」データベースより)

七日に一度現れる、遠い異世界へとつながる、魔法の扉。その扉の先には、不思議な料理屋がある。洋食のねこや。窓一つ無いのに不思議と明るい部屋の中には見たこともないような内装。出てくる料理は不思議な、されど美味しい料理。どの料理が一番旨いか。時折話題には上るが結論が出たことはない。彼らは料理を食べて語らい、時に新しい発見をする。そんな『異世界食堂』に、気配を消して働く、新たな給仕が加わった。チリンチリン―そしてまた、土曜日が来るたびに鈴が鳴る。

 久しぶりだとは感じたけど、前巻から1年以上間が空いていたのか。
 今巻は「クリームシチュー」「ポークチャップ」「とん汁再び」と先代の時代の異世界食堂が舞台のエピソードが多め。
 「カレーライス再び」以前の巻の「ビーフシチュー」で登場した赤の女王は、知り合いの『黒』がねこやにいるのを見て、貨幣のない場所で過ごしている『黒』にねこや働くことを提案する。そのことで自分は夜まで訪れることのないこの場所を彼女に守ってもらおうともしている。
 「モンブラン」死んだメイド頭は秋になるとどこからかモンブランという菓子を持ってきてくれた。それを朱家の領主一家も好きだし、賓客にだしていた。それが評判となって秋を狙ってこの街に来る人々も増えた。メイド頭が死んで、その出所がわからなくなったことでモンブラン探しを依頼された冒険者トーマス。宝探し的に、モンブランを探しているのが面白い。
 領主のメイド頭が定期的に街でモンブラン仕入れていたならば誰かが気づくはずだし、また菓子職人でもないし第一それを自作していたならば料理人なりが気づくだろう。だから屋敷の中で手に入れたのではないかと奇妙な結論と思いながらもあたりをつけて、メイド頭がしばしば訪れていた今では使う者がいない部屋に日参して、ねこやにつながる扉を見つける。そうやって、ちゃんと謎解きをしているのもいいね。
 「秋刀魚の塩焼き」今ねこやの店員をしているアレッタの時も思ったけど、営業時間が終わった後深夜でも(また営業時間前でも)普通に異世界から人が店に入ってくることができるって危ないよな。
 「肉まん」店主の過去に何かがあったことがほのめかされる過去に中華料理店でバイトしていたといったが、そこの娘と結婚して中華料理店のほうを継ぐはずだった。しかし「あんなこと」という何か大事があったことで、そうならなかったようだ。いずれ語られるのだろうけど、どんな事情なのだろうか。
 「マカロニグラタン」客層の幅広さから、異世界だと実感する。客は全部同じ世界(地球から見た異世界)の人々だけど、その広さから違う世界だと納得されるというのはちょっと面白い。
 「バースデーケーキ」月に一度の楽しみとして異世界食堂に来る「ハムカツ」に登場してきた一家の話。『子供たちの祝福』という妹の9歳の祝い、死亡することの多い時期を抜けて一人前の子供となった。その祝いにバースデーケーキを注文して、普段は頼まないパーティー料理を注文してその豪勢に喜びながら、幸せそうに食事をしているのはいいね。この家族の話は好きだ。
 「ウィンナーポテト」夜勤明けの二人の兵隊がウィンナーポテトとビールとサイダーで腹いっぱいになるまで飲み食いしているのがいいね。元いた世界でも食べられるものだが、質が良いし安いからここでもそれを毎回食べている。彼らはおそらく変わったなじみのない食べものは好まない性質で、異世界食堂をたまに開く安くてうまい店という感覚で使っているのだろうな。異世界食堂はそうした人からも好まれているというのがいいね。
 「ティラミス」店主の料理を気に行った白の子が連れ去ろうとしたら、例の赤の竜が現れて白の子を放りだしたという過去話が語られる。色々と危険と思っていたが、店主はそうした危険な目に過去にあっていて良く続ける気になるなあ。
 「とん汁再び」嵐で足止めされて食料が尽きた船。食料を探しに出た男がねこやに入り、先代店主の厚意もあって食糧(とん汁)を持って帰る。それまで空腹でちょっとピリピリした空気を醸し出していた船員たちが喜びながら食事を取っている姿を描かれているのがいいね。
 「特別編三 カレーパン」上記のエピソードの際に、赤は店主の危険を察知して撃退しにきたことが語られる。そうして危機があると彼女がそれを感知して、相手を排除できるようにはなっているのね。それならばちょっと安心。だけど、閉店後に来て朝までいる人物なども時にはいるのだから、それには対処できないのだからやっぱり心配は心配だけど。