図説 世界史を変えた50の植物

図説 世界史を変えた50の植物

図説 世界史を変えた50の植物

内容説明
植物の興味深い物語を美しい写真とともに紹介。
人類の発展に大きく貢献し、生活様式に多大な影響を与えた
植物と人間とのかかわりを幅広い視点からとらえる。
内容(「BOOK」データベースより)
サフラン、コショウ、ジャガイモ、トウモロコシ…文明の発展や生活様式に大きな影響をあたえてきた植物のなかでもよりすぐりの50種を、美しい図版とともに紹介。

 中世ファンタジーを読んでいるときに妄想で、何か他にあったら有用そうなものないかな、とか考えたりするから、そうしたことから、中世とかの技術とか植物の利用とかに興味を持った、という我ながら変な入り方で興味を持つ(笑)。まあ、そういう風にして興味を持ったので、図書館でこれを読む。手元において読み返せるようにしといたほうがいいのだろうけど、1冊3000円はきついわあ。イラストとかが多め(しかもカラーで)なのは有難いし、本の判型も大きいから高いのは仕方ないと言えば仕方ないことなのだろうけど。
 世界史を変えた、とあるけど世界史がメインに語られているわけではない。もちろん、植物の歴史とか、昔どう利用されていたかとかが書かれているから歴史に触れられることもあるが、人類が現在ないし昔に多く使用している植物についてを短いページで、その有用性の説明やさまざまなエピソードを交えて説明している。
 リュウゼツラン、とくにパシフィカ、の繊維は綿布にまさるとも劣らないものだった、というのは、そういった繊維で作ったものを見たことないから、知らなかった。しかし、現在ポピュラーでないのは、なんでだろ?手間がかかるからなのか、それとも何か他に理由があるのか。
 ニンニクもネギ科というのは少し驚いたが、臭いがきついところとか、あるいはにんにくの芽が生えているイラストを見ると、たしかにネギっぽい。
 『西暦1000年代にイブン・バッサールら著名なイスラムの庭師たちは、栄養価の低い干し草を与えた貧相な荷馬の糞より、トウモロコシで育てた種馬の糞を使うことを推奨している』(P15-16)という文章には混乱したが、トウモロコシはアメリカ産だからその時代にはいっているはずはないと思うから誤訳なのか、著者の間違いなのか、いったいなんなんだろう?
 キャベツ、根っこまでの全体像を見ると、結構変わっている形をしているのね。それと、野生のキャベツから派生した野菜はケール、キャベツ、コールラビ芽キャベツアブラナブロッコリー、カリフラワーがある、ということだが、ブロッコリーやカリフラワーは知っていたけど、そんなにも多くのものが野生のキャベツから派生したものだったとは意外だった。
 ココナッツジュースは無菌だから安心して飲むことができた、第二次大戦中には負傷兵に無菌点滴としても使われた(!)。
 コリアンダー(香菜〈シャンツァイ〉、パクチー)が地中海原産のものということは知らなかったので意外だった。
 『パピルスは軽くてしなやかな点が評価されていた』(P62)というのは、パピルスは昔の文書でパリパリになって今にも壊れそうなものというイメージがあったから、「しなやか」というイメージはまるで持っていなかったのでびっくりだ。
 ジギタリス、有毒植物だが水腫の治療に有効で、他にもジャガイモやトマトの貯蔵性を良くする効果がある。こうした毒だけど有用性がある植物って、なんか好きだな。
 ダイズの説明で遺伝子組み換えダイズと環境問題とかが出た後に、そうしたことへの問題意識が高まっているから、『日本の農民、福岡正信のライフワークへ眼差しを向ける者も出てきた。』(P87)とあるが、たしか「奇跡のリンゴ」で木村さんが無農薬リンゴを作ろうとチャレンジする切欠となった本を書いた人だよね、まさかこんなところでも名前を見ることになろうとはビックリだ。
 アメリカの『ホピ先住民は、その色鮮やかなボディ・ペイントや織物、陶器でよく知られるが、それは彼らがヒマワリから青、黒、紫そして赤の染料を抽出する方法を知っていたからだ』(P94)そうだが、その抽出できる色の多さには驚く。
 『すくなくとも2000種の植物がゴムに似たラテックスを分泌する。ソ連では科学者が代替品ソヴプレンを開発するまで、タンポポのラテックスが立派にゴムの原料となっていた。』(P100)タンポポからゴムを作ることができると言う事実には衝撃を受ける。
 『さらに穀物を食べるためには穀物をしっかり噛み砕ける歯の組み合わせが必要となるため、人間の顔の形も変わった。』(P105)というのは当然と言えば当然のことなのかもしれないが、食習慣が変わることで人間の顔の形が変わったと言うことを改めて聞かされると、ハッとする。
 リンゴ酒はリンゴ栽培の副産品と言うよりも、リンゴ栽培するそもそもの目的だった(少なくとも英国南部では何百年もの間)。
 サトウキビ栽培、『17世紀ヨーロッパの農法に索引用のウシと深耕技術を使えば、奴隷を使うのと同じくらいの効率的に農作業することはできた。』(P167)それに気づいていなかったのか、それともそこまで農民を連れてくるのが難しかったのか、その賃金すらケチったのかは知らないが、同じくらいの効率でできる方法が他にあったのに奴隷制をとってしまった。
 パスタとかを作る際に使うデュラム小麦、地中海とかでしか生育しないものだと今まで思っていたが、ロシアでも生産されていると書いてあったので、案外寒いところでもいけるのかね?