魔法科高校の劣等生 25

 ネタバレあり。
 前巻の最後にベゾブラゾフの襲撃を達也たちは防いだ。独立魔装大隊の上官である佐伯はその襲撃を気付いていたのに、達也に何も伝えずに観察していた。独立魔装大隊の風間が現地で密かに見ていたことも達也たちに発見される。今では縁遠くなっていたが、かつて味方だった独立魔装大隊との親密な関係の終わりを象徴するようなエピソードだ。
 倒れた水波の魔法演算領域は傷ついたままで、体調回復後もいつ倒れるかわからない。そのため普通の魔法師としては活動を続けられるかもしれないが、ガーディアンのように激しい戦闘が予想される仕事は難しい。
 そんな水波の状態に、彼女に好意を抱いている九島光宣は本人が魔法師であるのに魔法師として活躍できないことに苦しんでいたことや、水波が魔法を使わなくても調整体の血を引いていて『自分で魔法を使おうとしなくても、魔法演算領域が暴走して肉体の許容範囲を超えるという事態は十分にあり得』(P116)るということもあって、なんとしても治さなければという強く思う。
 『真夜にフリズキャルヴの端末が渡ったのは、実をいえばクラークが四葉家の情報を収集する為だった。』(P142)そのような思惑で真夜に渡ったのだが、クラークの思うようには上手くいかず達也や他の分家魔法師の能力を詳しく知ることができなかった。そのような理由があって真夜がフリズキャルヴの端末をもっていたのね。
 その頃USNAでは七賢人レイモンド・クラークは、何名ものスターズのメンバーや自らの身体をパラサイトに差し出して、達也を屈服させようとしていた。達也がレイモンドの魔法で宇宙を征服するというロマンを解さず、真正面からそれを断った。それだけでそこまでするかと呆れる。
 光宣はパラサイトとの融合で自分も彼女も治せることがわかり、まず自分自身がパラサイトと融合する。その後、水波でもパラサイトと融合することで魔法演算領域を暴走しないようにすることを提案する。水波をパラサイトと融合させる治療(?)に反対する達也と光宣は対立し、戦闘となるが決着がつかずに終わる。
 その後、九島光宣のことは十師族で会議する案件となって、光宣をどうするか話し合う。そして水波のところに来るか九島家に帰ってくるところを捕らえる方針となる。あとがきに『この『エスケープ編』でラスボスに昇格を果たした光宣』(P275)とあるので、彼がラスボスになるようだ。能力的には申し分ないけど、十師族との共同の捕り物の後に味方化するのかなと思っていたからちょっと意外。
 いっぽうUSNAでは再びスターズのメンバーがパラサイトの犠牲者になったことを発端とするスターズ内部のごたごたで総隊長リーナが襲撃され、日本への一時的逃亡を余儀なくされる。精鋭部隊にあるまじき内紛の結果、そうしたことになる。
 その後、再び達也暗殺をしかけてきたベゾブラゾフに対して、達也は今度は魔法を発生させずにベゾブラゾフ専用の貨物車両型CADを完全破壊することに成功。
 そしてラストで達也と深雪は、日本に逃れてきたリーナの口からUSNAで再びパラサイトが出現したことを聞くことになる。