本好きの下剋上 貴族院外伝 一年生

 ネタバレあり。色々なキャラの視点で貴族院の話を見ることができていいね。それに全18編中10編が書き下ろしと書き下ろしが多いのも嬉しいところ。
 「ローデリヒ視点 貴族院のとある一日」ローデリヒはローゼマインを尊敬し慕っているが、旧ヴェローニカ派の家出身だから近づくことができない。そのようにローゼマインに信用され、近づきたいと思いつつもそれが叶わないことで抱えている思いについて書かれる。
 「ヴィルフリート視点 女のお茶会」ヴィルフリートはお茶会をローゼマインの側近に手伝ってもらうのに、配慮不足でローゼマインの側近たちに不満を持たれた。そのことは第四部3の巻末短編でも書かれていたが、そもそもヴィルフリート主従が配慮すべきことを分かっていなかったことがわかる。ヴィルフリートの側近オズヴァルトは前巻冒頭の婚約話でも差し出口をしたり、この短編もしかるべき手続きを踏まずにローゼマイン側近に手伝わせるという配慮不足なことを主ヴィルフリートに「助言」した。そのようにヴィルフリートのサポートやフォローをすべき人間がそもそも配慮不足なことを言っている。ヴィルフリートは定期的に株を下げているが、それもしっかりとした助言をしたり叱ってくれる側近がいないことに原因があるのかなと思うようになった。
 「アンゲリカ視点 神殿の護衛騎士」護衛騎士としてローゼマインの役に立てていないと思って凹むアンゲリカは、夜にこっそりとローゼマインの神殿での側仕えたちに悩みごとを相談する。そうして相談をのってもらったことで悩みは解消され、またアンゲリカが神殿に来る新しい護衛騎士でよかったといわれたことで嬉しくなる。アンゲリカとローゼマインの神殿の側仕えたちとの交流に心が和む。
 「トラウゴット視点 予想以上にひどい罰」トラウゴットはローゼマインの護衛騎士をあっさりと辞めたが、その後彼の叔父であるユストクスの厳しい対応と言葉で自分がどれほど考えが足りなかったかということに気づかされる。
 「オルトヴィーン視点 ドレヴァンヒェルの姉弟」オルトヴィーンの同母姉であるアドルフィーネの婚約。ジギスヴァルト王子とエグランティーヌが結ばれた裏で、そんなことになっていたのね。
 巻末の「ソランジュ視点 閉架書庫と古い日誌」ソランジュは政変以前の昔の司書日誌を見て、かつてのことを思い出す。政変以後の図書館の状況を思えば、ローゼマインがやってきてシュヴァルツとヴァイスを再起動させたりしたことはソランジュにとってとても大きな出来事だったのだなと思う。そしてソランジュがシュヴァルツとヴァイスが再び動き出してそばにいることを心から喜んでいることが伝わってきていいね。