本好きの下剋上 第四部貴族院の図書委員6

 ネタバレあり。
 ローゼマインにとって二年目となる貴族院の授業が始まる。フラウレルムが一発合格させまいとしての昔の講義内容を試験として出すという嫌がらせをしたが、エーレンフェストでは以前の授業も勉強の範囲に入れていたので無事その試験も一発で終える。
 ローゼマインは、ルーフェン先生の授業でシュタープを武器防具に変える時に見なれた神具の形にしたり、試験で盾で防御する際にフェルディナンドからもらったお守りが作用したり、見なれない水鉄砲という武器を作るなど色々と目立つ。水鉄砲はこの時点では単なる玩具の威力しか出なかったが、授業後に矢のイメージで魔力を撃ちだすと実際に矢となって武器としても使えるようになった。
 ローデリヒがローゼマインに仕えたいという思いを切々と述べたことで、それを聞いたローゼマインは『名を受けてほしいと願うローデリヒは、側近として召し上げていなくても、とっくにわたしの臣下だった。』(P130)と感じて、今まで名を受けることを躊躇していたが名を受けることを決心する。
 今年も早々に授業を片付けて図書館に行くと、誰もいないと思って図書館に来た第三王子ヒルデブラントと会う。
 エーレンフェストの寮監ヒルシュールがアーレンスバッハの学生で中級文官見習いのライムントを弟子にしていると知って、ピリつくローゼマインの側近たち。彼自身はヒルシュールと同じく学者肌で政局には興味もない人間であるようだが、ヒルシュールや彼を通じてアーレンスバッハに情報が漏れることを恐れる。そのため領地に早速そのことを報告して返事を待つ。するとフェルディナンドが自身の作成した魔術具の処分のことでヒルシュールに会いに行くという名目で貴族院に来る。ライムントはフェルディナンドに教わりたいと思っているため、フェルディナンドは彼を弟子にして逆に彼から情報を得ることにしたようだ。
 図書館でシュバルツとヴァイスの着替えをしていると、再びヒルデブランド王子が図書館にやってくる。その時の会話の結果、ヒルデブランドもシュヴァルツとヴァイスの供給の協力者として登録することになる。そして図書館でのお茶会に王子も招待することになった。
 ターニスベファレンという特殊な魔獣がエーレンフェストの採集場所に出現して、エーレンフェストの学生たちでその魔獣を打倒する。ローゼマインが戦いの後に荒れた採集場所に癒しを与えると、採集場所の魔法陣が思いがけず作動して完全に元通りに再生完了。
 図書館でのお茶会ではローゼマインが興奮しすぎで倒れて、そしてローゼマインは今年も早々に領地に帰還する。
 エピローグでは今年も貴族院で色々なことが起きたので、それに頭を痛めるエーレンフェストのローゼマインの保護者組の話が書かれているのがいいね。

今川史研究の最前線 ここまでわかった「東海の大大名」の実像

今川氏研究の最前線 (歴史新書y)

今川氏研究の最前線 (歴史新書y)

 「駿河今川氏の「天下一名字」は史実か」『『今川記』によれば、永享の乱鎌倉公方足利持氏が幕府にそむいた事件。一四三八年)での功績により、第六代将軍の足利義教(一三九四~一四四一)から駿河今川氏の当主一人のみが、「今川」と称すことを許されたとする。これは「天下一名字」としてよく知られている。』(P27)その話は事実か否か。
 『永享の乱において、今川氏全体で幕府方として活躍が確認できるものは、実はこの持貞ただ一人なのである(足利将軍御内書并奉書留)。』(P36)そして持貞は仲秋系の遠江今川氏で、駿河今川氏とは別。永享の乱以降の幕府番帳(奉公衆の名簿)でも、駿河今川氏以外の一門が今川○○と書かれている。そして小鹿氏(駿河今川氏の分家)、堀越氏(了俊系の遠江今川氏)は16世紀に入っても今川と呼ばれていた。
 『つまり、永享の乱駿河今川氏が将軍家から栄典を賜ったということも、その後の今川一門が「今川」の名字を否定されたことも、事実に反するといえる。以上により、駿河今川氏が将軍家から栄誉として授けられたとする「天下一名字」は創作であり、その事実関係は明確に否定される。
 しかし、その一方で十六世紀に入り、一門が「今川」を称さなくなり、駿河今川氏の「今川の独占化」がなされたことも事実である、だがこれも将軍家の意向ではなく、駿河今川氏自体が他家を「今川と称せなくさせた」と考えられる。
 駿河今川氏は一門の今川名字を否定し、自らの「一名字」を推進したのである。要するに、駿河今川氏は一門との別格化を図り、これに成功したのである。』(P47-8)
 「織田氏との対立、松平氏の離叛はなぜ起きたのか」家康が人質となった経緯。『天文十五年(一五四六)には、駿河今川氏・尾張織田氏・牧田氏・松平反勢力(信孝や酒井忠尚)と松平広忠・田原戸田氏との対立構図が展開するに至るのである。』(P155)そして駿河今川氏は田原氏を攻撃するも失敗に終わり、尾張織田氏織田信秀)は松平を攻めて降伏させた。『通説として、江戸時代に作成された諸書により、この年に広忠の嫡男竹千代(のちの徳川家康一五四三~一六一六)が駿河今川氏へ人質に出されたところ、姻戚関係にあった田原戸田氏に奪われ、信秀に渡されたという。しかし、近年の研究成果によると、同時代史料からはその事実はうかがえず、竹千代の信秀への人質は、この広忠の降伏の時になされたと考えられている(村岡:二〇一五、平野:二〇一六)』(P155)
 「「三河守任官」と尾張乱入は関係があるのか」桶狭間合戦直前の義元の三河守任官。公家や寺社が世話になった礼として朝廷に働き掛けて叙任を示す口宣案が出される場合もあり、その場合にはそうして得た正式な官位を使わずに、私称の官位を用い続ける場合もあった。近衛久前が関東で世話になった者への口宣案発給を申請し、太田資正には民部大輔、その子氏資には大膳大夫、由良成繁には信濃守に任官する口宣案が出た。『しかし資正、氏資ともに任じられた官位を用いることはなく、資正しは以後も師匠の美濃守を用い続け、氏資も源五郎のままであった。(中略)これは、民部大輔・大膳大夫が太田氏にとってゆかりが無い官途で、政治的に用いるメリットがないと判断して用いなかったのである。
 由良成繁も口宣案をもらって二年は従来の雅楽助を用いている。ただし成繁の場合は、信濃守が父祖代々用いた官途であるため、六年後の永禄十二年(一五六九)以降は信濃守を用いている。』(P177)織田信秀三河守任官も、信秀が伊勢外宮の造替に際して資金援助したことで外宮側が口宣案を調達したと思われるが、信秀は父祖伝来の弾正忠をそのまま用いた。
 『今川家において当主もしくは一族が三河守となったことは、文書・記録史料から分かる範囲で一度も無く、全国的にも三河守は「誰々にても任」(「大館常興書札抄」)、つまり誰でも用いるのに特に障害がない官途であった。
 今川家当主が良く用いた上総介や、義元の父氏親の修理大夫と比べると、武家社会ではかなり格下に位置付けられていた。』(P179)そのため『義元の三河守任官は、実は義元が企図したものではなかったと推測される。おそらく、駿河で今川父子に世話を受けた公家が、その御礼として自発的に手続きしたのであろう。』(P182)

トムは真夜中の庭で

 

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

 

 

 ネタバレあり。

 ある夏に主人公トムは兄弟のピーターがはしかにかかったため、しばらくおじさんの家に滞在することになる。そこでトムははしかがうつっているかもしれないから人が集まっているところも行くこともできず外に出られないので退屈さを持てあましていた。そのおじさんたちが暮らすアパートは大きな邸宅だったものをいくつかに区切ってアパートに変えたもので、ホールにある大時計は一時間ごとに何時かを告げる音を鳴らすがその時間を正確に打ったことはないという代物。

 トムはベッドに入っても一向に眠れず、真夜中にその大時計が13回音を鳴らしたのを聞く。トムはそのことが気になり、眠気も全然なかったので、そっと家を出てホールまで古時計を見に行く。その時に月明かりで時計の文字盤を見ようと裏口のドアを開けると立派な庭園が広がっていた。それで明日の昼にでも行こうと思い、翌日裏庭に行こが、そこには舗装された狭い空き地とゴミ箱と車しかなかった。そしてトムは大時計があの裏庭を見せているのではないかと思う。そしてその晩に再び大時計が十三時をうったのを聞いて裏口を開けると、昼には無かったあの庭園が広がっていた。

 そしてトムは翌日から毎晩こっそりと部屋を抜け出して庭園に行って遊んだ。バラバラな時間をうつ大時計のように毎晩トムが行く庭園も日ごとに季節や時刻もバラバラ。そしてその庭の時間の進み方も特殊で、しばらく探索した後に家に戻っても数分しか経っていなかった。またその庭園は過去の邸宅時代にあった庭園の姿のようで、庭園の中ではトムは物を動かすことができないし、他者からも見えていないようだった。

 しかし、その庭園にいる人々の中で従兄弟たちと遊んでもらえず一人でいることが多かったハティという少女にはトムのことが見えて話すこともできた。それでトムとハティは友達となり話したり遊んだりするようになる。そしてトムは庭園でハティと遊ぶことが楽しいので、まだ家に帰りたくないと思って滞在を伸ばす。

 トムは毎晩庭園に来ているのだけど、庭園の時間はとびとびなのでハティの体験的にはトムと会うのは数カ月に一度とかそんなもののようだ。そしてハティが大人へとなっていくにつれて、ハティの目からはトムの姿は徐々に透けて薄く見えるようになっていった。

 かつてのハティの部屋が現在のトムが滞在する部屋となっている。そのトムの部屋の一角にハティの秘密の場所があって、トムはスケートを使わないときはその場所に隠しておいてくれとと頼む。それで邸宅の中に帰って、その場所を調べると古びたスケート靴を発見する。物を介して過去と現在がしっかりつながっていて、ハティがかつてここで暮らしていたのだと確信できる証拠を手に入れるこのエピソードはなんか好き。トム本人的には次の機会にハティとスケートができるようにという思いのほうが強いのかもしれないけどね。

 その翌夜に庭園に出ると再び冬、記録的な寒い冬で多くの川が凍った年、ハティは少し遠くまで行ってスケートで川の上を進みながら邸宅まで帰るという冒険に繰り出し、トムはそのお供をすることになる。

 ハティは帰る途中で出会った知り合いのバーティ(バーソロミュー氏)の車に乗って邸宅に戻ることになるが、バーティと会話している間ハティはトムのことを気にせず、自分の手がトムの体を貫いても気づかない様子だった。トムは二人が大人の話をしてつまらないと思っているうちに寝入ってしまう。翌晩には再び子供時代のハティと会えるかもと思い、再び真夜中に裏口を開けるがそこには庭園がなくあるのは昼間と同じ小さな舗装された空き地とゴミ箱と車ばかり。スケートの冒険でハティの子供時代が完全に終わり、トムも庭園にいけなくなった。

 それでトムは悲しくて泣いてしまう。しかしその後まもなくアパートの大家のバーソロミューおばあさんがハティだということがわかって、あの庭でともに遊んだ二人は現代で再会して話をすることになる。そしてトムが家に帰る前にまた会うことを約束して少しかしこまった挨拶をした後に違うなと思ったのか、階段を駆け上りハティのもとにもどり抱擁を交わすという最後のシーンがいいね。

新装版 マムルーク

 

 

 

 イスラム社会の『奴隷軍人のマムルークは、九世紀以降、カリフやアミール(軍司令官)の私兵としてしだいにその勢力を伸張し、やがてカリフの改廃をも自由におこなうようになった。しかもマムルーク軍人の台頭はイラクやエジプトの地域だけに限られていたのではなく、北インド、トルコ、アンダルス(イベリア半島南部)などイスラム世界のほぼ全域にわたっていた。』(Pii

 ○マムルーク朝まで

 『マムルークを私的軍団として用いられることは既にウマイヤ朝時代からはじまっていた。』(P43)通説ではじめてマムルーク軍を組織的に編成したといわれるアッバース朝のカリフ・ムータスィム(在位833-842)の『政策の新しさは、トルコ人奴隷兵を前時代のカリフや有力者の場合よりはるかに大規模な形で採用したことにあったといえよう。』(P43-4)成立当初のアッバース朝のカリフ権を支えていたホラーサーン軍の忠誠心が薄れ始めていて、『忠誠心と勇敢さを知られていたマムルークの本格採用がにわかに注目され始めたのである。』(P46

 エジプト・シリアを支配したアイユーブ朝の第七代スルタンのサーリフ(在位1240-49)ははじめクルド人のカイマリーヤ族とフワーリズミーヤ族を厚遇していたが、やがて両集団の統制に苦慮することになる。そのため『トルコ人マムルークを次々と購入して政権の基盤とすることに努めた。』(P104)そしてマムルークの勢力が増大していった。サーリフの没後に新スルタンのトゥーランシャーがその『バフリー・マムルーク出身のアミールたちをつぎつぎと逮捕・投獄してその勢力の削減をはかった。』(P108)そのためマムルークはスルタンを暗殺し、サーリフの妻でシャジャル・アッドゥルをスルタンに推戴した。そうしてマムルーク朝1250-1517)がはじまる。しかし女性スルタンということによる反発が強く、バフリー・マムルーク出身の総司令官イッズ・アッディーン・アイバクと結婚しスルタン位を彼に渡す。それでも政情の不安定は続いたが、モンゴル軍との戦いであるアイン・ジャールートの戦いで『圧倒的な勝利を収めたマムルーク軍は、エジプトの新政権がイスラム共同体の真の守護者であることを内外に強く印象づけることができたのである。』(P111-2)しかし『マムルーク朝のスルタン権力は容易に安定しなかった。それは、王朝の全期間を通じてスルタンは選挙によって選ばれるのを原則としていたからである。』(P113

 ○エジプトのマムルーク朝マムルークたち

 『スルタンによって購入された青少年のマムルークは、カイロにある軍事学校(ティバーク)に入学した。主人(ウスターズ)であるスルタンへの謁見が終ると、出身地や人種ごとにクラス分けがおこなわれ、監督者となる宦官(タワーシー)の紹介がおこなわれた。』(P125-6)そうした『マムルークのための専門学校は、スルタン・バイバルスによってはじめて建設されたとみてよいであろう。』(P126)五代スルタン・バイバルス(在位1260-77)。

 軍事学校の『在位の期間が何年であったかは不明であるが、マムルークは教養と武芸の課程を終えると、スルタンから卒業と奴隷身分からの解放を示す証書(イターカ)を与えられ、さらに武具や馬にくわえて生活の基礎となるイクターを授与されてマムルーク軍団に編入された。(中略)卒業と同時に、奴隷身分から解放されて自由人となったにもかかわらず、かれらはその後も「スルタンのマムルーク(奴隷軍人)」とよばれ、もとの主人との強い絆を保ちつづけた。

 つまりマムルークは、購入者、教育者、奴隷身分からの解放者、さらにはイクターの授与者であるスルタンにたいして強い敬慕の念を抱き、絶対的な忠誠心を捧げたのである。また、マムルーク相互の関係についていえば、同期の卒業生は、「良き仲間」(フシュダーシュ)として強固な連帯意識をもち、終生の交わりをつづけてゆくことになる。スルタンへの忠誠心と相互の仲間意識、このふたつが精強なマムルーク軍を生み出したといってもよいであろう。』(P128-9

 ○オスマン朝のカプ・クル、イエニチェリ

 16世紀前半にマムルーク朝オスマン朝に敗れて、オスマン朝がシリア・エジプトを征服。

 オスマン朝ではスルタンの奴隷(カプ・クル)はデヴシルメ(徴用)によってキリスト教徒の子弟が集められ、彼らをイスラムに改宗した後に宮廷の小姓になる者とイエニチェリに入って軍人となる者にふり分けられた。『この当時のアラブ社会のマムルークは、イスラムの伝統にしたがって解放の手続きがとられたのにたいして、これらのカプ・クルは奴隷身分のままで奉仕を続けたことが特徴とされている。しかしこれには異論もあるので、いまの段階で、カプ・クルの解放問題について明確な結論を出すことはむずかしい。スレイマン(在位一五二〇-六六)の時代にはイエニチェリの数はおよそ三万人に達し、オスマン帝国の精鋭部隊としてアジアやヨーロッパの征服に活躍した。彼らは、いつでも戦闘に参加できるように、つねに兵舎にいて軍事訓練をおこなうことが義務付けられ、結婚して家庭をもつことは許されなかった。(中略)しかし一六世紀末になると、その地位を子孫に伝えることのできないイエニチェリの不満がしだいに高まり、この軍団の存在はスルタンにとって危険なものに変わりはじめていた。』(P178

ゴブリンスレイヤー 8

 

ゴブリンスレイヤー8 (GA文庫)
 

 

 ネタバレあり。

 2章でゴブリンスレイヤー達が海に出て大海蛇と戦っている。彼らがゴブリン以外と闘う依頼を受けるのは珍しいと思っていたら、元々は海ゴブリンに漁場が襲われているという依頼があったのできてみたら、海ゴブリンと言われているのは話の通じるインスマンス的な人々で、彼らから魚が減った原因は大海蛇にあると聞いて、大海蛇退治に乗り出すという流れで大海蛇と戦ったようだ。

 今回ゴブリンスレイヤーたちは剣の乙女の依頼で、都へ向かう街道にゴブリンが跋扈しているということで彼女の護衛として都へ赴くことになる。その道中で野営中に襲ってきたゴブリン集団と戦う。

 都へ到着。ゴブリンスレイヤーがこの頃ゴブリン退治に専念できていないが、楽しかったと言ったので鉱人道士や蜥蜴僧侶は驚くが、その後にゴブリンスレイヤーは『だが、そのたびにゴブリンの影がちらつく』(P128)とも言う。

 都市の大浴場にいった女神官と妖精弓手は、そこで兵士に変装して王宮から抜け出してきた王妹と出会う。そして王妹は女神官の服を失敬して、その服を着て冒険者の真似事をする。そして行商人とついて街の外に行こうとするもゴブリン集団に襲われて、王妹が連れ去られる事態になる。都へ戻った行商人の報告もあり、王たちは王妹が外に出てゴブリンに連れ去られたという事態を把握する。しかし事態が公になることも国に大きなダメージなので、信用のおける冒険者たちに依頼することになる。ゴブリン達の居場所は剣の乙女が受けた啓示もあって、死の迷宮というかつて魔神が地下十階の最奥にいた迷宮だということがわかる。王たちは別件で頼むことのある勇者一行に頼むわけにもいかないので、かつて魔神を討った冒険者の一人である剣の乙女に頼む流れとなる。それに剣の乙女が怯えていると女商人(かつての令嬢剣士)がゴブリンスレイヤーたちを秘かに呼んでいて、ゴブリンスレイヤー達のパーティーがそのゴブリン退治の依頼を受けることになる。ゴブリンスレイヤーたちを見て剣の乙女が安堵しているのがいいね。

 昔地図役(マッパー)であったという剣の乙女から死の迷宮の地図を渡されて、一行は馬に乗ってその迷宮へ向かう。そして途中で戦闘から遅れたゴブリンたちとの戦闘もあったが、死の迷宮に到着。

 現在はゴブリン達が巣食う迷宮に挑むゴブリンスレイヤーたち。その迷宮でゴブリンたちの首魁である小鬼の邪神官を倒し、そのゴブリンの邪神官が呼び出した魔神の手という強大な存在も満身創痍となりながら知恵を絞り倒すことができた。そして王妹を保護して帰還しようとするが、ゴブリンをすべて倒してはいなかったので帰り道に待ち伏せしていたゴブリンの大集団と対峙することになるという絶望的な状況に陥る。しかし剣の乙女が勇気を奮い起こし神殿勢力を率いて死の迷宮までやってきてくれたおかげで、ゴブリンスレイヤーたちは救われた。ゴブリンを恐れていた剣の乙女がゴブリンスレイヤーたちを助けるためにゴブリンが巣食う迷宮まで行った。その大きな一歩を踏み出した勇気に感じいる。

見てしまう人びと

 

見てしまう人びと 幻覚の脳科学

見てしまう人びと 幻覚の脳科学

 

 

 kindleで読む。

 『幻覚の原因はじつに多種多様であり、精神に全く異常がなくても起こりうる。そのような症例を数多く診てきたサックス医師は、幻覚はけっして狂気のしるしではないことをそれどころか脳の働きを洞察するための貴重な情報源であることを、広く世間に伝えたいという想いで、この本を書いている。』(N4625

 シャルル・ボネ症候群(CBS)。『目の見えない人や視覚に障害のある人が幻覚を見るのは珍しくはなく、その幻影は「精神病」ではなく、視覚を失ったことへの脳の反応』(N141)。

 『CBS患者の大半は、自分が幻覚を見ていることに(たいていは幻覚があまりに場ちがいなので)気づくが、(中略)もっともらしく状況に合っている幻覚もありえるので、そのような場合、少なくとも最初は現実ととらえられることもある。』(N229)その逆で19階の部屋の外に男性がいて手を振ってきたので幻覚だと思って無視したら、窓ふき作業員だったという場合もある。

 『フィッチェらは、通常の視覚的想像と実際の幻覚の明確な差異も観察した。たとえば、色つきの物体を想像しても視覚野のV4領域は活性化しなかったが、色つきの幻覚は活性化したのだ。このような発見は、主観的にだけでなく生理学的にも、幻覚は想像とはちがうもので、知覚にかなり近いことを裏付けている。ボネは一七六〇年に幻覚について、「心は幻と現実を区別できないだろう」と書いている。フィッチェらの研究は、脳も両者を区別していないことを示している。』(N396V4領域は色を識別する脳の部位。

 感覚遮断による幻覚。失明や半盲、視力の衰えなどによって幻覚を見ることもあるが、目隠しを続けるなどという視覚遮断でも同じように幻覚が生じる。アルバロ・パスカル=レオーネやメラベットらによる、96時間目隠しながら過ごすという実験の場合は『一三人のうち一〇人が幻覚を経験し、目隠しをして数時間以内に起こる場合もあったが、目を開けていると閉じているに関係なく、二日目には必ず起こった。(中略)被験者が報告する幻覚は、単純なもの(点滅する光、眼内閃光、幾何学模様)から複雑なもの(人影、顔、手、動物、建物、風景)まで幅広がった。(中略)大部分の幻覚はほとんど情緒的反応を誘発せず、「面白い」とされている。』(N683)他の感覚を使う活動をしているときは幻覚を経験する被験者はいなかった。『メラベットらは、被験者が報告する幻覚はシャルル・ボネ症候群(CBS)患者が経験するものとまったく同じであり、この実験結果は視覚遮断だけでも十分にCBSの原因になりえることを物語っていると感じた。』(N696

 『自由意思による視覚心像がトップダウンのプロセスであるのに対し、幻覚は、正常な感覚入力の欠如により以上に興奮しやすくなった腹側視覚路の領域が、直接ボトムアップで活性化した結果なのだ。』(N709

2018年に読んだ本のまとめ

年間まとめをすっかり忘れていたので今更ペタリ。

2018年の読書メーター
読んだ本の数:63
読んだページ数:19628
ナイス数:1302

異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)感想
中世パートでは農村の司祭ディートリヒ視点で宇宙船の故障で漂着して帰還できる見通しが立たないクレンク人たちとの交流、ディートリヒ司祭と科学力に優れるが宗教がないクレンク人との対話などが書かれる。現代パートはその交流の場となった村が突然消失して、その後長くその地に人が住むことがなかったという謎を解こうとする現代の統計歴史学者トムとそのパートナーである宇宙物理学者シャロンの視点で書かれる。
読了日:12月31日 著者:マイクル・フリン
ホワット・イフ?――野球のボールを光速で投げたらどうなるか (早川書房)ホワット・イフ?――野球のボールを光速で投げたらどうなるか (早川書房)
読了日:12月31日 著者:ランドール マンロー
東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない (PHP新書)東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない (PHP新書)
読了日:12月31日 著者:ときど
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員V」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員V」感想
ローゼマインは相変わらず事業や神殿関係の色んな仕事をした後に2年目の貴族院に向かう。ハルトムートとヴィルマがローゼマインの素晴らしさを話す仲間として親しくなったようなのは面白い。「城でのお留守番」フィリーネ視点の短編。色々あって城で暮らしているフィリーネの日常の他、直接ローゼマインと会えない旧ヴェローニカ派の子供達がフィリーネに手紙を渡して襲撃計画を伝えたことが書かれる。
読了日:12月29日 著者:香月美夜
男の民俗学1 職人編 (小学館文庫)男の民俗学1 職人編 (小学館文庫)感想
1980年代の色々な仕事についてイラストつきで各8ページほどで紹介されている。仕事風景や仕事道具のイラストがあるのがいいね。『ほとんどの職業が「後継者なし」、「最後の○○師」、「最後の一軒」(ベーゴマ職人)、「かつては二〇〇軒合った同業者もすべて消滅し、現在ではたった一件になった」(簀桁職人)、「職人が全国で三人」(万年筆職人)、「海鼠壁職人」などの記述で分かるように、絶滅しつつある仕事とそれに携わる人間だ。』(P316、解説)
読了日:12月29日 著者:遠藤ケイ
予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」感想
ごまかしに関する実験。ごまかしが不可能な場合の平均正答数よりも、ごまかしが可能だった場合は平均正答数の方が当然多い。しかし、ごまかしが可能な場合でも事前に十戒の内容を思い出して書き出してもらったり、「MIT無監督試験制度の倫理規定のもとに行われていることを承知しています」という文言に署名してもらった場合は(実際にはMITにはそうした規定はないにも関わらず)ごまかしのきかないグループと変わらない平均正答数となった。
読了日:12月22日 著者:ダン アリエリー
日本の民俗 暮らしと生業 (角川ソフィア文庫)日本の民俗 暮らしと生業 (角川ソフィア文庫)
読了日:12月22日 著者:芳賀 日出男
和菓子 WAGASHI ジャパノロジー・コレクション (角川ソフィア文庫)和菓子 WAGASHI ジャパノロジー・コレクション (角川ソフィア文庫)
読了日:11月30日 著者:藪 光生
花の命はノー・フューチャー ──DELUXE EDITION (ちくま文庫)花の命はノー・フューチャー ──DELUXE EDITION (ちくま文庫)
読了日:11月30日 著者:ブレイディみかこ
シルトの岸辺 (岩波文庫)シルトの岸辺 (岩波文庫)
読了日:11月30日 著者:ジュリアン・グラック
戦国大名と分国法 (岩波新書)戦国大名と分国法 (岩波新書)感想
扱われている5つの分国法の成立に関する話だったり、それらの分国法の条文や中世の慣習法についての解説などが書かれている。分国法を制定した戦国大名たちも『決して何もないところからルールを創出したわけではなかった。むしろ彼らは、中世以来の法慣習を積極的に取り込んで、それを公的に成文法に位置づけることで社会を秩序化しようとしていたのである。喧嘩両成敗や縁座・連座など、大名権力が創始したと思われがちな施策の多くも、じつはいずれも、それ以前の中世の民衆社会にルーツをもつものだったのである。』(P189)
読了日:11月23日 著者:清水 克行
聖家族(下) (新潮文庫)聖家族(下) (新潮文庫)
読了日:11月23日 著者:古川 日出男
浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち (新潮文庫)浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち (新潮文庫)感想
空襲で家や家族を失い上野の地下道で暮らていた子供たちの話や当時の上野の話が書かれる。元浮浪児たちが語る当時のさまざまなエピソードが印象に残る。
読了日:11月17日 著者:石井 光太
日本の民俗 祭りと芸能 (角川ソフィア文庫)日本の民俗 祭りと芸能 (角川ソフィア文庫)
読了日:11月17日 著者:芳賀 日出男
ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット3 (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット3 (電撃文庫)感想
今回で完結ということもあって、ナユタとクレーヴェルの関係は大きく進展する。「3章 七不思議・≪ガッコウ(仮)≫」菱川がついていた一つの嘘の話が印象深い。
読了日:10月31日 著者:渡瀬 草一郎
須賀敦子全集別巻 [対談・鼎談篇] (河出文庫 す)須賀敦子全集別巻 [対談・鼎談篇] (河出文庫 す)
読了日:10月31日 著者:須賀敦子
身代わり令嬢と堅物男爵の剣舞曲~貴族令嬢、 婚約破棄して駆け落ちした姉の後始末に奔走する~ (アイリスNEO)身代わり令嬢と堅物男爵の剣舞曲~貴族令嬢、 婚約破棄して駆け落ちした姉の後始末に奔走する~ (アイリスNEO)感想
姉の駆け落ちで急遽決まった主人公アイラとアドラスの縁談だったが、偶然出会ったダンジョンでの共闘やコネルが起こした騒動への対処などを通じて、二人は相手の人柄を知り、惹かれあうようになる。巻末の番外編は他のキャラの視点でアイラの格好良さ、凛々しさが書かれていていいね。
読了日:10月31日 著者:富士 伸太
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~貴族院外伝 一年生本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~貴族院外伝 一年生感想
今巻では色々なキャラの視点で貴族院での話を見ることができる。「アンゲリカ視点 神殿の護衛騎士」アンゲリカとローゼマインの神殿での側仕えたちとの交流に心が和む。「ソランジュ視点 閉架書庫と古い日誌」ソランジュがシュヴァルツとヴァイスが再び動き出してそばにいることを心から喜んでいることが伝わってきていいね。
読了日:10月27日 著者:香月美夜
監視国家―東ドイツ秘密警察(シュタージ)に引き裂かれた絆監視国家―東ドイツ秘密警察(シュタージ)に引き裂かれた絆感想
秘密警察シュタージに『情報提供者になれと言い寄られた時にそれを他の人に話したり、あるいはきっぱり断った場合、その人はどうなったのだろうかと訊いてみた。「どうもならなかったんですよ」と彼は言った。「そういうことだったのです。『非協力的人物』と判を押されてファイルがクローズされるだけだったのです。しかし当然、当時はどうにもならないと知り得る人などいませんでした。だからほとんどの場合、拒否できなかったのです」』(P354)
読了日:10月27日 著者:アナ ファンダー
魔法科高校の劣等生(25) エスケープ編<下> (電撃文庫)魔法科高校の劣等生(25) エスケープ編<下> (電撃文庫)感想
前巻末の襲撃を気づいていたのに達也に何も伝えなかったことが露見し、達也と独立魔装大隊との関係は悪化。周の亡霊を取り込んだ九島光宣は、さらにパラサイトと融合してラスボス化する。そしてスターズ内部のごたごたの結果リーナが再び日本に来ることになる。
読了日:10月20日 著者:佐島 勤
マールカラー文庫18  中世ヨーロッパの服装マールカラー文庫18 中世ヨーロッパの服装
読了日:10月20日 著者:A. ラシネ
恋するソマリア (集英社文庫)恋するソマリア (集英社文庫)感想
ソマリの家庭料理を習った時の話や帰国後に早稲田大学に留学していたソマリア人兄妹を家に招待し、習ったソマリ料理をふるまうと『「わあ、ソマリアの味そのままだ!」と二人は目を輝かせて喜んだ。』(P314)というエピソードが好き。
読了日:10月13日 著者:高野 秀行
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員IV」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員IV」感想
今巻はエーレンフェスト領内での話。ローゼマインの色々とやることが多い日常が書かれる。巻末短編「大改造を防ぐには」ギュンター視点の話。下町全体に効果が及んだ大規模な洗浄の魔法後の汚れの取れた綺麗な街並みを見た人々の反応がいいね。
読了日:10月13日 著者:香月美夜
トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))感想
親戚の家に数週間滞在することになったトム。彼は真夜中にそのアパートの裏口から出ると、過去にその場所にあった庭園に出れることを知って、毎晩家をそっと出てはその過去の庭で遊んでいた。そこでトムはハティという女の子と友達になる。その後トムは庭に行けなくなって悲しむ。しかしアパートの家主のバーソロミューおばあさんがハティだとわかり、トムとハティは現代で再会する。トムが家に帰る前にハティとまた会うことを約束して少しかしこまった挨拶をした後に違うなと思ったのか、ハティのもとに戻り抱擁を交わした最後のシーンが好き。
読了日:10月06日 著者:フィリパ・ピアス
魔法科高校の劣等生(24) エスケープ編<上> (電撃文庫)魔法科高校の劣等生(24) エスケープ編<上> (電撃文庫)感想
ディオーネー計画に参加するように圧力をかけられていた達也だったが、ESCAPES計画という別の開発計画を発表して、その計画を行うことを理由にしてディオーネー計画への参加を断る。その後ベゾブラゾフが達也の暗殺を試みる。その攻撃は防いだものの、攻撃を防いだ時に力を限界まで使った水波が倒れてしまった。
読了日:09月30日 著者:佐島 勤
奴隷制の記憶―サマセットへの里帰り奴隷制の記憶―サマセットへの里帰り感想
著者はアレックス・ヘイリーの「ルーツ」を娘と見たことをきっかけに自身の祖先について調べ始めた。最初に著者や母の知る家族の話が書かれる。それより以前のことを調べいくと奴隷だった先祖がサマセットプレイスというプランテーションにいたことがわかる。そしてサマセットプレイスの歴史、そのプランテーションを所有していた一家やサマセットプレイスの奴隷たちの話などが書かれる。その後著者はサマセットプレイス子孫の里帰りという企画を開催する。
読了日:09月30日 著者:ドロシー・スプルール レッドフォード
弥生時代の歴史 (講談社現代新書)弥生時代の歴史 (講談社現代新書)感想
『縄文のまつりの道具を少しでも使っているところでは、社会面に弥生化の兆しが見られないのだ。社会が質的に変化すると縄文のまつりは残ることができない、ということを意味しているのかもしれない。/小規模な集団に分かれ、土偶や石棒を使った祖先のまつりを行っていた中部高地や関東南部の人びとが、労働集約性の高い水田稲作を始めるためには、その前提として集団の統合を必要とした。統合されると、土偶や石棒のまつりは姿を消した。』(N1477)
読了日:09月30日 著者:藤尾慎一郎
労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~ (光文社新書)労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~ (光文社新書)感想
ブレグジットの背景にあるキャメロン政権の緊縮財政に対する不満。緊縮財政で『国立病院には閉鎖される病棟が出現し、公立学校の教員は目に見えて減り、福祉を切られて路頭に出るホームレスは増え、(中略)、地べたレベルでも国の風景が一変した。』(N451)そのように『戦後最大の歳出削減で、(中略)公共サービスを縮小し続けていたキャメロンとオズボーン元財相の政治は、労働者階級からは切実に忌み嫌われていた。その2人が残留派のリーダーとして前面に立ってキャンペーンを繰り広げていた』(N288)。
読了日:09月30日 著者:ブレイディ みかこ
辺境生物探訪記~生命の本質を求めて~ (光文社新書)辺境生物探訪記~生命の本質を求めて~ (光文社新書)感想
地下微生物は『鈍いから一見、何もしてないように見える。ただし長い時間を掛けてみた場合、非常に数が多いので、ゆっくりしたペースであっても、それなりの働きをしているはずだよね。(中略)ウランとか、そのほかいろいろな鉱物資源が鉱床をつくる、貯まってくる、集まってくるという現象が、どうも微生物によってなされる可能性が高いんだ。(中略)微生物は、非常にゆっくりした鈍いペースの化学反応を加速することができる。』(N3000)
読了日:09月23日 著者:長沼 毅,藤崎 慎吾
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVIII ―フォース・スクワッド・ジャム〈中〉― (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVIII ―フォース・スクワッド・ジャム〈中〉― (電撃文庫)感想
前半は主人公チーム以外の有力チームのこれまでの動向が書かれる。主人公チームはMMTMとぶつかるが両チームともトライク(三輪モーターサイクル)に乗っていたので、移動しながら撃ちあう戦闘になる。その後ライバルチームのSHINCと戦えそうだとわかって、レンは喜ぶ。そうしてSHINCとの戦いが始まるが、決着がつく前に無粋な横やりが入ったというところで下巻に続く。
読了日:09月15日 著者:時雨沢 恵一
図説 室町幕府図説 室町幕府感想
『長い室町幕府の歴史の中で、将軍の子として生まれ、将軍以外で俗人として活動したのは、義満の補佐役として幕閣の重鎮となった満詮、兄義持を差し置き、義満の後継者に目された義嗣、男子がなかなか生まれなかったため、一度は兄義政の後継者となった義視、堀越公方となった政知、堺公方と呼ばれた義維の五人だけである。』(P48)他の兄弟は有力寺院に入れられて僧侶となり、『将軍家に生まれた女性もほとんど尼門跡といわれる寺院に入って』(P49)いた。
読了日:09月15日 著者:丸山裕之
戦場から生きのびて (河出文庫)戦場から生きのびて (河出文庫)感想
著者は西アフリカの国シエラレオネ出身の元少年兵。内戦で故郷の村が反乱軍に攻撃されて、著者はそれからしばらくの間同年代の少年達と一緒に国内を放浪していた。その後政府軍の少年兵となることを余儀なくされる。少年兵として2年ほど過ごした後、所属する部隊にユニセフの人がやってきたことで少年兵のためのリハビリテーション・センターに入ることになる。そこでの生活やそこを出た後の伯父との生活で日常を取り戻しつつあった。しかしクーデターの勃発でその日常も壊れ、著者は国外に脱出する。
読了日:08月31日 著者:イシメール ベア
アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン (講談社文庫)アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン (講談社文庫)感想
ベトナムの妖怪的な存在『フイハイ&バンボの話にはよく米軍が出てくる。(中略)一般人にとって、「当局」(中略)はそれ自体がブラックボックスであり、巨大な妖怪なのではないだろうか。で、小さな妖怪が出現すると、それを巨大な妖怪が呑み込んでしまうのではないか。あるいは、小さな妖怪が話の終わりにどこかへ去らなければならないが、それは大きな妖怪の懐によって物語が収束するという構造があるのではないか。』(N479)
読了日:08月31日 著者:高野秀行
理想のヒモ生活 11 (ヒーロー文庫)理想のヒモ生活 11 (ヒーロー文庫)感想
今回は善治郎が北大陸に出発するまでの準備などが書かれる。善治郎の北大陸行きが決まって、フランチェスコ王子に長い船での航海を前に善治郎がいざという時に安全に退避するための魔道具や長い船上での生活を少しでも快適にするための魔道具を依頼する。そして善治郎たちが黄金の木の葉号に乗船して出航したところでこの巻は終わる。
読了日:08月31日 著者:渡辺 恒彦
ピラミッド: 最新科学で古代遺跡の謎を解く (新潮文庫)ピラミッド: 最新科学で古代遺跡の謎を解く (新潮文庫)感想
古代エジプトでは砂を研磨剤にして銅の刃が付いた筒状ドリルとのこぎりで固い花崗岩を切ったと考えられる。実験考古学の結果を踏まえると、クフ王の石棺を作成する際に『摩耗した銅の量は四三四キロ、研磨に使われた砂は三七トンに及んだと考えられる。』(P99)装飾のないクフ王の棺は質素な造りに見えるが『歴史的には、その棺は花崗岩が用いられた「初めて」の王の棺であり、(中略)恐ろしいほどの労力と時間を掛けて造られた、すさまじく手間のかかる創作物である。』(P156-7)
読了日:08月26日 著者:河江 肖剰
ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン (GA文庫)ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン (GA文庫)感想
ゴブリンスレイヤーの新人冒険者時代の話。彼の最初のゴブリン退治は洞窟に棲み付いたゴブリン集団が相手。ゴブリンスレイヤーが初陣で色々とミスがあったり、敵のゴブリン集団にホブゴブリンやゴブリンシャーマンがいたということもあって緊張感がある戦いとなっていて面白い。
読了日:08月19日 著者:蝸牛 くも
魔境アジアお宝探索記 骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)魔境アジアお宝探索記 骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)感想
「呂宋葉茶壺」平安末期から鎌倉時代に中国から伝わった葉茶壺が戦国時代に名物化していた。戦国時代の商人呂宋助左衛門は宋時代にフィリピンに渡った葉茶壺を買って大名に売りさばいて莫大な富を築いた。著者はそんな呂宋葉茶壺を入手するためにフィリピンのディーラーたちに声を掛けると多くの葉茶壺がでてきた。『壺は中国から茶を詰めて送られてきた容器である。それが我が国では将軍家や寺院が宝物として保存し大切にしていたが、フィリピンではシャーマンの薬入れとして用いられていたのであった。』(N754)
読了日:07月31日 著者:島津法樹
新装版 マムルーク: 異教の世界からきたイスラムの支配者たち (UPコレクション)新装版 マムルーク: 異教の世界からきたイスラムの支配者たち (UPコレクション)感想
マムルーク朝時代に存在したマムルークのための軍事学校。スルタンによって購入された青少年のマムルークはその軍事学校に入学した。そこで『教養と武芸の課程を終えると、スルタンから卒業と奴隷身分からの解放を示す証書(イターカ)を与えられ、さらに武具や馬にくわえて生活の基礎となるイクターを授与されてマムルーク軍団に編入された。(中略)卒業と同時に、奴隷身分から解放されて自由人となったにもかかわらず、かれらはその後も「スルタンのマムルーク(奴隷軍人)」とよばれ、もとの主人との強い絆を保ちつづけた。』(P128)
読了日:07月31日 著者:佐藤 次高
深海のパイロット~六五〇〇mの海底に何を見たか~ (光文社新書)深海のパイロット~六五〇〇mの海底に何を見たか~ (光文社新書)感想
『「6K」のパイロットの樋口さんが熱水を噴きだすチムニーを採集したとき、先端だけをつまんで取るつもりが根元からポキンと折れてしまった。それを持っていくとなると重すぎるので取り直そうと思ったが、研究者は目ざとく見ていて「それが欲しい、それが欲しい」という。仕方なくマニピュレータの下にあるサンプルバスケットに入れたが、いくら前後トリムを調節しても水平を保てない。結局、その時は前屈みでんつんのめりそうになりながら、ずっと操船していたそうである。』(N1133)このエピソードが微笑ましくて好き。
読了日:07月28日 著者:藤崎 慎吾,田代 省三,藤岡 換太郎
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVII ―フォース・スクワッド・ジャム〈上〉― (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVII ―フォース・スクワッド・ジャム〈上〉― (電撃文庫)感想
第四回スクワッド・ジャムが開幕。今回レンたちは自爆攻撃を仕掛けてくるチームをしのぎきり、今回の特殊ルールによって出現するモンスターの襲来も退ける。その後のマップスキャンで7チームが固まって結託チームとなっていることがわかる。その結託チームの中にはレンが特に意識するライバルチームであるSHINCの名もある。SHINCが結託チームに加わった理由はわからないが、大変な戦いになりそうだ。
読了日:07月21日 著者:時雨沢 恵一
牛を飼う球団牛を飼う球団感想
四国独立リーグ高知ファイティングドッグスは存亡が危ぶまれる状態だったが、2007年に北古味鈴太郎氏がオーナーとなってから行った色んな試みのかいがあって経営再建できた。「第3章 牛を飼う」高知球団で牛を飼っていた時にその世話係をしていた現日本ハムの通訳の人の話。「第4章 農業事業部」農業生産法人で働いていた人が高知球団で農業事業部長として仕事をしている。球団が農業専門の人を雇っているというのは他にはない特色で面白い。
読了日:07月21日 著者:喜瀬雅則
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員III」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員III」感想
今までローゼマインはルッツたちと神殿の隠し部屋でマイン時代のようなざっくばらんな話し合いを行っていて、その交流が心の支えとなっていた。しかし、そろそろ年齢的に彼らを隠し部屋に入れるのは良くないということで、隠し部屋で今までどおりの会話をするのは今回が最後となる。その最後の今までどおりの会話でローゼマインとルッツが新しい約束を交わしたシーンがいいね。
読了日:06月30日 著者:香月美夜
誰のために―石光真清の手記 4 (中公文庫 (い16-4))誰のために―石光真清の手記 4 (中公文庫 (い16-4))感想
郵便局の局長として日々を過ごしていた石光氏は、弟の提案もあって錦州に貿易会社を設立して再び中国に渡る。商売は順調だったが、ロシア革命が発生したことで軍からの依頼を受けて再びロシアへ行くことになる。そこで石光氏はロシア側と日本側の間に立って苦悩する。無力感を覚えて職を辞して会社に戻った石光氏だったが、その間に会社の経営状態が酷い状態になっていた。そのため無力感に覆われる暇もなく、一度日本に帰って家族に会った後に会社をどうにかするために再度大陸に戻る。どれもがままならずに終わるのが物悲しい。
読了日:06月24日 著者:石光 真清
ソードアート・オンライン プログレッシブ6 (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ6 (電撃文庫)感想
6層のダークエルフの拠点でキリトやアスナと同じくエルフ戦争キャンペーン・クエストを進めているパーティーであるキューザックと出会う。そして彼らからはじまりの街の中にもお使いや探し物系のクエストなど安全に稼げるクエストがあって、そうしたクエストで経験点を稼いでレベルを上げてから街の外にでたといった話を聞く。そのような攻略集団以外のプレイヤーの話も面白い。
読了日:06月16日 著者:川原 礫
オーバーロード13 聖王国の聖騎士 下オーバーロード13 聖王国の聖騎士 下感想
都市防衛戦でのネイアの奮戦が描かれているのがいいね。それから今まで出番が少なかったシズの出番が多いのもよかった。またルーンを宣伝するために敵方を務めるヤルダバオトデミウルゴスが召還した憤怒の魔将LV84)やその側近悪魔などがネイアが持つアインズから借りたルーンの入った武器を讃えているが、ことごとくスルーされて目的を果たせていないのも面白い。

読了日:05月31日 著者:丸山 くがね
植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)感想
植物が生産した防御物質が薬として利用されている。その化学成分には捕食者を寄せ付けなかったり病原微生物を生育させないために強い生物活性(生物に作用して生体反応を起こさせること)がある。『この強い生物活性という性質は、よく効く優れた薬が持つべき重要な性質の一つなのです。』(N983)例えば『ベルベリンは、病原菌のリボ核酸やタンパク質合成を阻害して強い抗菌作用を示し、病原菌の感染から植物自身を守っていると考えられます。/ベルベリンは、この抗菌作用を利用し、下痢を止める整腸薬として用いられています。』(N998)
読了日:05月31日 著者:斉藤和季
パタゴニア (河出文庫)パタゴニア (河出文庫)感想
アルゼンチンとチリにまたがる地域であるパタゴニアなどを旅した記録やさまざまなルーツを持つパタゴニアに暮らす人々の話、土地にまつわる様々な物語が書かれる。1860年にフランス人弁護士オレリー=アントワーヌが建国を主張した国であるアラウカニアおよびパタゴニア王国の話は面白い。また『ビーグル号に誘拐されてイギリスに行った先住民』(P379)ジェミー・バトンの話も興味深かった。
読了日:05月26日 著者:ブルース チャトウィン
ログ・ホライズン11 クラスティ、タイクーン・ロードログ・ホライズン11 クラスティ、タイクーン・ロード感想
久しぶりの新刊。クラスティは元居た場所から飛ばされて特殊な呪いによって記憶の一部を失い、サーバーを越えた移動やHPの回復ができない状況になっていた。だが、記憶を奪った黒幕の配下である典災との戦いの最中に自身の記憶を取り戻した。クラスティにかけられた呪いはまだ完全に解けたわけではないのだが、彼はその呪いを押し付けた敵を倒すという目標ができて楽しそうだ。
読了日:05月19日 著者:橙乃 ままれ
アイヌ学入門 (講談社現代新書)アイヌ学入門 (講談社現代新書)感想
アイヌのクマ祭り(イオマンテ)では、子グマを生け捕りにして集落で一年から数年飼育したのちに神の国へ送り返す。縄文時代にはイノシシを一定期間飼養して祭りに用いるというイオマンテと同じモチーフを持つ祭りが存在した。イノシシが生息しない伊豆諸島や『北海道の縄文人は本州からイノシシを移入し、本州で行われていたのと同じ祭りをおこなっていた。(中略)縄文社会におけるイノシシ祭りは、私たちが想像する以上に大きな意味と普遍性をもつものだったようなのです。』(N922)
読了日:04月28日 著者:瀬川拓郎
ゴブリンスレイヤー7 (GA文庫)ゴブリンスレイヤー7 (GA文庫)感想
今回ゴブリンスレイヤー達は、妖精弓手姉の結婚式があるということでエルフの森に行く。しかしエルフの街の近くでゴブリンが出現していることから、一行はゴブリン退治に向かう。今回ゴブリンが巣くう遺跡は広く、ゴブリンスレイヤー達は敵に気づかれないようにしつつ遭遇したゴブリン達を討ち取りながら進む。敵地で休息をとったり、崩れた階段を蜥蜴僧侶が壁を掴んで乗り越えたりという冒険感があって面白い。そして最後にはゴブリンスレイヤーらしい方法でゴブリンたちを一掃するのもいいね。
読了日:04月14日 著者:蝸牛 くも
死の舞踏: 恐怖についての10章 (ちくま文庫)死の舞踏: 恐怖についての10章 (ちくま文庫)感想
人知の及ばぬ悪、外から襲い掛かる運命としての恐怖を描く『"外なる悪"をテーマにするホラーのほうは、(中略)男の子の冒険物語の変形にしかならない傾向が強』(P155)い。『それでも、規模が大きくてすさまじいのは"外なる悪"の概念のほうだ。ラヴクラフトはそこを理解していた。彼の途方もなく巨大な悪の物語が強烈な印象を与えるのはそれゆえだ。(中略)『吸血鬼ドラキュラ』が驚くほどの成功をおさめたのは、"外なる悪"の概念を人間型にしたからではないかと思われる。』(P155-6)
読了日:03月31日 著者:スティーヴン キング
室町幕府将軍列伝室町幕府将軍列伝感想
『近年、『太平記』は、その成立に室町幕府が大きく関与していたことが指摘され、いわば室町幕府の準正史、「室町幕府創世記」としての性格をもつことが明らかにされている。』(P11)「太平記」の尊氏に関する記述は『おおむね室町幕府創業者としての尊氏を美化しようとする姿勢が明らかであり、やはりこの書物の誕生の背景に、種々の政治的な力が働いていたことを十分に想像させる。』(P22)そのため「太平記」では尊氏と行動を共にし、後に敵対した弟の直義が尊氏の事績のマイナス面を背負う役回りになった。
読了日:03月31日 著者:清水克行
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員II」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員II」感想
図書館にいる魔術具シュヴァルツとヴァイスの主の座をめぐってのダルケンフェルガーとの宝盗りディッター対決。ローゼマインは奇襲で早々に勝つこともできるだろうけど、先のことを考えて相手と実力差があることを自覚してほしいと思っているのは領主候補生らしくていいね。「主が不在の間に」ローゼマインの護衛騎士見習いのレオノーレ視点での、ローゼマインが一時帰還した時の貴族院での話。ヴィルフリートの配慮が足りないところが、ローゼマインの側近によくない印象をあたえていることが書かれる。
読了日:03月31日 著者:香月美夜
コリーニ事件 (創元推理文庫)コリーニ事件 (創元推理文庫)感想
犯人の動機不明のまま始まった裁判だったが、裁判も終わりに近づいた時に犯人の動機と過去の出来事が語られる。その事実を聞いて法廷の雰囲気は一変する。最終盤に法廷で語られる、その過去の出来事に関する法律の解釈や適用などの話が刺激的で面白い。
読了日:03月25日 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
図説 金枝篇(下) (講談社学術文庫)図説 金枝篇(下) (講談社学術文庫)感想
ローマのサトゥルナリア祭では、その期間中主人と奴隷の地位が逆転して主人が奴隷の給仕をした。伝説によると、ローマ兵は下モエシアのドゥロストルムで毎年祭りの三十日前にくじで仲間から一人を選びサトゥルヌス王の扮装をさせて、王の役の男は三十日の期間中好きなことすることができたが、祭りの日がくると『男は自ら扮する神の祭壇に立ち、わが喉をかき切って果てた』(P170)。バビロニアのサカイア祭では祭りの期間中だけ一人の罪人が専制君主を演じ、本物の王の愛妾たちを自由にし酒色にふけったが、最後には縛り首もしくは磔にされた。
読了日:03月24日 著者:ジェームズ.ジョージ・フレーザー
ソードアート・オンライン プログレッシブ5 (電撃文庫)ソードアート・オンライン プログレッシブ5 (電撃文庫)感想
六層はパズルをテーマにした階層。この階の最初の街スタキオンは宿の部屋に入るにもパズルを解く必要があるとは大変だ。キリトとアスナはこの階層最初の街の領主とパズルの呪いに関するクエストを攻略していく。そのクエストの途中でNPCに麻痺させられて、布袋に入れられ他のプレイヤーが近くにいるなか馬車に乗せられて移動するというイベントがある。そうして二人が麻痺しているところを狙って始末しにきた襲撃者たちと戦うことになる。
読了日:03月10日 著者:川原 礫
スペインレコンキスタ時代の王たち: 中世800年の国盗り物語スペインレコンキスタ時代の王たち: 中世800年の国盗り物語感想
8世紀前半にイベリア半島北部沿岸の山岳地帯を残すのみとなったイベリア半島でのカトリック勢力が勢力拡大していく様子や王家の相続や婚姻、それに関連した国の集合離散の大まかな流れを知ることができていいね。分割相続で複数の国に分かれたり、王家の婚姻などで複数の国がまとまったりなどの国の成り立ちの話が面白かった。
読了日:02月28日 著者:西川 和子
ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット2 (電撃文庫)ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット2 (電撃文庫)感想
「骨休 旅籠夜話」VRMMOアスカ・エンパイアに新しく実装される予定のリゾートの温泉宿のテストプレイの話。NPCが妖怪だから喋らなかったり不自然な挙動をしても自然に見えるから、NPCの挙動が自然だと好評などの開発側の工夫や裏事情の話も面白い。「鬼姫双紙」自ら失踪した真尋の父視点のシーンが悪い予想をさせる不穏なものだったけど、最終的にはハッピーエンドとなったのも良かった。
読了日:02月25日 著者:渡瀬 草一郎
開高 健 電子全集15 オーパ、オーパ!!2開高 健 電子全集15 オーパ、オーパ!!2感想
「モンゴル編」あまり魚を食べず、釣り人もほとんどいないモンゴルでは大きなイトウがまだ多く残っていると聞いて、共産主義体制のモンゴルへイトウ釣りへ行く。テレビ企画で86年と87年の二度行った。「付録1・担当写真家による回顧談他」では著者の旅に同行していた人によるモンゴル編の裏話や著者との思い出などが語られる。93年にウランバートル新聞は「モンゴル出自の開高ウブー」(ウブーは好々爺、おじさんといった意味)という特集記事を掲載し、モンゴルテレビは「開高ウブーの道」という番組を作ったという話も面白い。
読了日:02月17日 著者:開高健
未来国家ブータン (集英社文庫)未来国家ブータン (集英社文庫)感想
ブータンは九州よりも少し大きい面積に人口70万人弱の小さな国だが、環境立国として進んでいる。ブータンに近しいヒマラヤの国シッキムとチベットはそれぞれインドと中国に吸収された。ブータンの独自路線は『「独自の国なんですよ!」と常にアピールし続けないと生き残れないブータンの必死さの現れなんだとしみじみ思う。』(N2097)ブータンは『伝統文化と西欧文化が丹念にブレンドされた高度に人工的な国家だった。国民にいかにストレスを与えず、幸せな人生を享受してもらえるかが考え抜かれた』(N3253)国。
読了日:02月10日 著者:高野秀行
インカ帝国探検記 - ある文化の滅亡の歴史 (中公文庫)インカ帝国探検記 - ある文化の滅亡の歴史 (中公文庫)感想
征服前のインカ帝国の話やフランシスコ・ピサロのインカ征服の話、そして征服後のインカの話が書かれる。インカの歴史をほとんどしらなかったので面白かった。『征服後のインカは、首都のクスコ西北の低地森林地帯に移って、三五年間独立を守った。彼らはゲリラ戦によってスペイン人を悩ましたが、そのときどきの政治情勢に敏感に反応し、ときによってはスペイン人と巧みな外交交渉をおこなって、すこしでも自己の権益を増大し、なんとか生き延びようとした。』(P243)
読了日:01月31日 著者:増田 義郎
ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)感想
SF連作短編集。全ての短編で登場する歌姫と呼ばれる人型のロボットDX9は安価で頑丈なため色々な用途で使用される。「ハドラマウトの道化たち」ラストでの手負いのDXタヒルがアキトに商会のテントが下にあるから一人で落ちて逃げるように促したが、そのまま捨て置けないとタヒルを掴んで一緒に下に落ちて短編が終わる。このラストシーンは「解説」に書いてある、建物から『日本製のロボットが落下し続けるというのが、この連作の共通項』(N2901)を意識すると、良いシーンというだけではなくコミカルさもあって面白い。
読了日:01月31日 著者:宮内 悠介
「岩宿」の発見 (講談社文庫)「岩宿」の発見 (講談社文庫)感想
在野の研究者である著者は、岩宿で関東ローム層中に石器を発見したことで、それまでの関東ローム層の年代には人類は住んでいなかったという定説を覆した。主に子供時代から23歳での岩宿の発見までが書かれる。ついに関東ローム層の中から定形石器を発見した著者が、石器を洗うために近くの沼辺に行くとそこで遊んでいた子供達が集まって来る。その子供たちに石を見せて昔の人が使っていたものだと説明すると、子供たちは綺麗だといながらその石を手にとって見る。著者が子供たちのそんな姿を見ながら、発見の感激に浸っているというシーンが好き。
読了日:01月14日 著者:相沢忠洋

読書メーター

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