ベン・トー 11 サバの味噌煮弁当【極み】290円


内容(「BOOK」データベースより)
半額弁当バトルに青春を賭ける佐藤洋は魔導士に拒絶され、涙する槍水を見て以来、HP同好会の部室へ向かう足が遠のいていた。そしてその夜を境に佐藤、槍水共に弁当の奪取率が急激に落ち込んでしまう。この状況を変えるために、白粉は一人魔導士へ戦いを挑むのだが…。そして悩める佐藤が狼として、男として槍水に告げた決意とは…?「最強」の称号と“極み”と名付けられた弁当を手にするため、今、狼たちが集結する!半額弁当をめぐる青春シリアスギャグ・アクション、史上最大の特盛りで贈るクライマックス!!

 まさかこの巻で本編最終章だとは全く思わなかった!そして次が最終巻か。もっと続くものだと思っていたのに急に終わりが近くに見えたからショックだ。
 恋愛方面でも大きな動きがあるし、ところどころでコメディ要素がはさまれていくが、物語の基調はシリアスなので、キャラクターたちはひたすら真剣だ、青春しているねえ。しかしエロス要素はぶっとんでいるけど、恋愛感情の描写は丁寧だねえ。
 冒頭、白粉がギクシャクしている二人に何かしたい、変な自分に普通に接してくれる槍水と「様々なインスピレーションを与えてくれる佐藤洋」に何か返してあげたい、と思っているが佐藤はインスピレーションの礼に何かをされても喜ばないと思う(笑)。大真面目にインスピレーションを与えてくれる佐藤と思っているのには笑った。
 佐藤、失恋の痛みを感じている描写があり、それが区切られて直ぐに塀に「チンコ」と書かれた落書きの前にあれこれと思弁していたら、志向が変な咆哮へ行き、それを見ながら邪教の儀式よろしく踊っているのは前とのギャップがあまりにもありすぎる(笑)。そしてそんな不振な行為をしている彼の前に白梅が現れ、寮の人間がやったのではないのだがなぜか掃除しなければならなくなった事情「など」を説明すると、見かねてその家の人を説得したが佐藤が一度引き受けたからには掃除するといったので手伝ってくれたが、彼女が「チンコ」という文字を消しているのを見て、その前で踊って一体化していたのだから僕の生殖器といっても過言ではない云々と理屈をつけて興奮をしているのはプレイが高度すぎてついていけないわあ。
 ウィザードは手強い相手が居ないから満足できないと感じているは流石に最強、芯から狼だ。
 そしてHP部が崩壊した理由がついに明かされたが、別に誰も悪くなかったようなので良かったわ。
 悲しいすれ違いと早合点で佐藤がHP部から足が遠のいたので、白粉はもう自分は傍観者にならない、この部を元に戻すため、2人のためにウィザードを打倒すると宣言して限界以上の能力を発揮して最強の打倒に限りなく近づいたのは素晴らしい。こういった自分に対して自信がなく、人間関係に踏み込むことを恐れる人が、こんな非常のときにこうやって力強く踏み込んで、2人の中を修復しようと最善を尽くしたと言うのは、自分もそんな人間であるから、そういう行動をとった彼女はまぶしいほどだし、すごく格好いい。
 そしてウィザード、白粉戦で得た弁当は久しぶりに感動するほど美味かったといっているのをみて、それだけ白粉が強敵だったということだから、彼女がそれほど彼に肉薄したというのが彼の言葉から分かるので少し嬉しい。
 石岡君の「クラミジア」発言、ひどいひどい。笑うけど、たまらなく痛々しい。
 まさかのパッドフット再登場、ウィザードをスーパー外で襲撃した下種だが、今回の佐藤と彼の会話を見ているとあれ、案外悪い人じゃないなと思った。まあ、ヤンキーと雨の日の捨て犬効果だけど。そんな彼に最強対策を考えた狼たちの共通点を考えた佐藤がふとひらめいて「その今時流行らないダサいロングコートってまさか……!?」と言ったのに対して、「これはッ――ファッションだッ!!」と言ったのはリアルに噴き出した。
 ウィザードが最強の地位を獲得したまっちゃん(女帝)との対戦で、対戦後に彼は公演に行く気力すらなく路上で弁当を食ったが、負けた彼女は惣菜とビールを買って帰ったほど余裕だったと言うのは真剣なシーンだけど、笑いが堪えることができない。
 佐藤とウィザードの対話シーンを見てから、今まで一貫して高かったウィザード株が一気に急落してしまったな。ラスボスの株が最後に落ちたのはちょっとなあ。
 アブラ神が初代最強のアーサーだったのか、意外に身近に居たのね。
 企業戦士サラリーマン・レッド、人生楽しそうでいいな。でも、最後くらいは彼の行為が報われて欲しかったよ。毎度毎度警察のお世話になっているのはかわいそうでならないよ。
 ウィザード絶食によって腹の虫をピークまで持っていったというのは、目がいっちゃってるイラストを含めて、ラストバトルでラスボス登場なのに笑わせるし、なんかかえってそんな描写を積まれることで弱そうに感じてきてしまう。
 佐藤が失恋したあとでどんな展開でもいいから最後には著莪と結ばれてくれ、だから槍水先輩は金城先輩とくっついてくれと読みながら祈っていたのだが、佐藤とウィザードの対話シーンがあって、これでヒロインが槍水先輩にほとんど決まったことが見えたけど、それでも著莪と最後に結ばれて欲しい、そうでなければ最後までヒロインを決めずあいまいにした終わりにして欲しいと願っていたのだが、結局最後は槍水先輩と結ばれたので脱力感というか喪失感があった。著莪はあんなにヒロインしてたエピソードが一杯あったのに初期設定のヒロインには結局勝てなかったのか……。
 エピローグで石岡君も狼となっていたことを知るが、彼の二つ名が<変質者>ってなんだか、……うん、佐藤と根本的に同類なのね。
 佐藤と槍水先輩がくっつくというハッピーエンドだけど、やっぱり著莪と結ばれて欲しかったなあ……。