若草物語

若草物語 (角川文庫)

若草物語 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

時は十九世紀半ば、アメリカの片田舎に、戦地に赴いた父の不在を預かる優しい母と、四姉妹の一家があった。美しく聡明な長女メグ、奔放で空想好きな次女ジョー、内気で優しい三女ベス、愛らしく夢見がちな四女エイミー。貧しいけれど仲睦まじく幸せに暮らすこの四姉妹が、様々な困難にあいながらも、個性を輝かせ、大人の女性に成長してゆくさまを、美しい絵巻のように描き出した、オルコット女史の自伝的傑作小説。


 kindleで読了。有名な小説ではあるけど、読んだのは今回が初めて。
 マーチ家の四姉妹(メグ、ジョー、ベス、エイミー)の物語。
 父が南北戦争で、布教師として従軍していた。父のいないクリスマスの少し前から翌年のクリスマスまでの約一年の物語。その間に今まで付き合いのなかった近所の寂しげな少年ローリーとの交流が始まって、彼との交流と家族の話が書かれる。
 仲睦まじい姉妹の会話がいいね。この家族の優しく善意に満ちた、お金持ちではなくとも幸福な家庭の雰囲気に癒される。
 長女マーガレット(16)は、父マーチ氏は不幸な友人を救おうとして財産を失う前の生活を覚えているマーガレットは贅沢な物事が好きで、今の貧乏を辛く感じている。
 栗色の長い髪を持つ次女ジョゼフィン(15)はボーイッシュな性格の少女で、ジョーというあだ名で呼ばれている。
 三女のエリザベス(13)は人見知りの引っ込み思案だが、惜しみなく他者へ献身できる性質で、そうしていても特別に苦労しているように見せない善人。
 四女エイミー(12)は絵が好きな気どり屋。そうはいっても子供っぽく微笑ましいもので、令嬢のように行儀や所作に気をつけたり、そして難しい言い回しをしようとするためにしばしば単語を変に間違えるくらい。
 括弧内の年齢は最初に登場した時の年齢。

 少なくともこの巻ではジョーとローリーの関係がメインで描かれているから、やっぱり四姉妹のうちジョーが一番印象に残るな。

 戦争中で父もいないので、クリスマスに贈り物するのを止めようと母から言われて、そのことを寂しく思っている。それでも四姉妹は愛する母に小さなものをそれぞれプレゼントしようという思いつきを楽しそうに語る。プレゼントもらえずともプレゼントを愛する母に送れることに幸福を抱いているのは微笑ましい。冒頭のそれだけの描写で、善い家庭であり、彼女らが善い人たちだとわかる。
 従軍している父からの手紙で、彼女たちはより善くあろう、そう努力しようと心に決める。
 そうした彼女らの決意もあって、クリスマスには母から小さな聖書が姉妹にプレゼントされた。
 クリスマスの朝、近所のとても貧乏な家に自分たちの朝食をあげることを母から提案される。空腹なので流石に即座に答えられなかったが、誰も異議を唱えずに、そうしてあげた。そしてその行為で感謝されて非常に満足する。それくらい彼女たちは善良な人々。
 それを伝え聞いたローレンス家の隠居から(実はジョーが察していた通り、その家の男の子ローリーからの提案だと後にわかる)、クリスマスプレゼントに御馳走のプレゼントを貰う。こうした善意の循環はいいね。
 小さな舞踏会に呼ばれたメグとジョー。そこでジョーはシオドア・ローレンス(ローリー)と会い、そこで親しく話す機会を持った。そしてちょっと困ったことになっている姉妹を助ける紳士的な振る舞いをする。
 そんなこともあり、以前から彼に関心があったジョーは、その後彼と交流を持つようになる。

 大伯母はジョーに普段は教訓的な本を読ませて聞いていた。しかしジョーがその伯母が昼寝している間に面白い小説を読んで笑ったら、伯母はそれを読んでみなさいといって、読み聞かせたら伯母も気にいったらしく、その本をジョーのいない間に秘かに読んでいたというエピソードはちょっといいね。

 子供ではあるが紳士な少年ローリーは家庭教師に勉強を教えてもらったり、家にいることが多く隣家の楽しそうな四姉妹の姿を見て、友人になりたいと前々から思っていた。
 そんなローリーは、疲れやすい体質なので同年輩の少年としょっちゅう遊ぶこともできず、寂しさを覚えながらも一人で過ごすことの多かった。
 しかしジョーが彼と親しくなって、そこから四姉妹たちと友人となる。そうして彼はジョーやその姉妹たちと遊ぶことが増える。
 そしてローリーの祖父のローレンス氏も外見は厳めしさがあるけど、優しい人で、ローリーが彼女らと友達になることを歓迎する。そして家族ぐるみの親しい付き合いが始まる。
 そしてローレンス氏は、引っ込み思案だが音楽好きのベスに小さなピアノをプレゼントする。この二人の関係は互いに感情表現にちょっと不器用さがあるけど、心の底から相手に優しい気持ちをもっていることが伝わってくるから、いいね。

 ジョーは自分が書いた大事な小説が燃やされて怒り心頭で、それをしたエイミーを無視していた。それで、スケートをした時にしかるべき忠告を行わなかったことで、大事な妹エイミーを危険にさらしてしまうことになった。それで自身のその怒りの感情にとらわれる癖を母に嘆くと、母自身も実行している感情的な悪い行動を抑える術について聞く。
 メグ、裕福なアニー・モファットにお呼ばれして二週間贅沢な生活を過ごす。それが思いのほか面白くなかったことで、普段の生活の良さを実感することになる。そんな風に姉妹はいろんなことがきっかけとなって、自身の心の悪い癖に気付き、それを直したいと思うようになる。

 メグとジョーが同時期にしばらくの休みを得たので、ただ楽しく過ごそうと決める。普段の家の仕事も放棄しているとなんだか落ち着かない気分になり、そして姉妹が休んでいる間に全ての日常の雑事をしていた母は一日休む。そうして家の仕事の大変さに気付かせた。そうしたことと何もすることのない退屈さもあって、姉妹たちは何もせず楽しもうという計画を止めにして、自分たちの受け持ちの日常の雑事をやることを再開する。
 そしてジョーは新聞に自分の小説が載ったことを喜ぶ。
 父の病が重くなったという知らせを受けて、母が父のもとに向かうことになる。そして母がいないときにベスが病にかかり、その症状が重くなる。それで姉たちも引っ込み思案のベスが、いろんな人からいかに深く愛されているかを知る。
 エイミーはその間、病気が映るといけないから大伯母に預けられていた。エリザベスの病気についてとか、そこでの少し不自由な生活などもあって、エイミーはそこでの生活で精神的に色々と得るものがあった。
 そしてベスの体調が良くなったと同時に母も帰ってきて、不吉な影は去る。
 そのあとローリーの家庭教師ブルック氏がメグに懸想していることを知っていたローリーがちょっと悪質ないたずらをしたことで、マーチ家の面々に叱られて大いに反省することになる。しかしそれでメグはブルックを意識するようになる。
 そしてやってきたクリスマスに父がサプライズで帰ってきて、家族は喜びに包まれる。そして父の口から、姉妹が一年で成長したことがらが語られて、そのことで娘たちをほめる。
 本書の最後で、メグはブルックの告白を受けることになる。ただちに結婚とかいう話ではないが、婚約者となる。ハッピーエンドなのがいいね。